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元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!  作者: 楠ノ木雫


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12/30

◇12

「テトラちゃ~ん、大丈夫か~」



 ぽんぽんと布団の上から手で叩かれるが、大丈夫なわけがない。あのあと寝落ちして、朝起きたら裸の旦那様だなんて……耐えられるわけがない!!


 しかも昨日の記憶がフラッシュバックして、つい反対側にくるっと回って布団に潜った。そしてこれだ。



「……いや、無理です」


「体調は?」


「……元気です、けど、精神的に無理です……」


「はいはい、んじゃ思う存分入ってな」



 なんて言いつつまたぽんぽん叩いてきた。子供扱いか。でもそんな文句言えるほどの余裕なんてこれっぽっちもない。この恥ずかしさをなんとかしてくれ。



「今日の予定は午後からだから、まだ寝てていいぞ。まぁ寝坊助の間抜け顔をご披露したいのであれば、の話だけどな」


「……いじわる」


「いじわる呼ばわりするか。ならもっといじわるするけど?」



 そう言って、布団ごと抱きしめてきた。背中が密着して……肌が直接くっついて体温を感じる。マジで恥ずかしい……



「……起きます」


「よろしい。支度はゆっくりでいいぞ」



 なんて言いつつ頭を撫でて離れていった。ベッドから出たらしい。


 はぁ、とりあえず気にしない程を貫かないとなぁ。また何か言われるのは嫌だ。



「……はぁ、美味しい……♡」


「フレンチトーストで機嫌直るってどうなんだ?」


「甘いは正義ですよ」


「あっそ」



 本っっっっ当にここの料理は美味しい。美味しすぎる。


 今日着せてもらったのは、すごく着心地のいい洋服。今までこんなもの着たことがないってくらいお金かかってそう。この生地とか上等でしょ。こんなのを着ることになるとは思いもしなかった。


 けど、髪はそのままおろしている。これから何かするらしいから。でもエヴァンが触ってくるからだいぶお気に入りなんだろうなぁ。好みらしいし。でもじっと見るのはやめてほしいけど、聞かないんだよなぁ……


 まぁでも、これのおかげで贅沢させてもらってるんだから文句は言わない。むしろこっちが感謝だ。バックれなくてありがとうございます。



 そして午後、このお屋敷に来訪者がいた。その連絡を使用人からもらい、エヴァンに連れられて客間にたどり着いた。


 その来訪者は、大体40代くらいの男性。ほんわか系かな? 他にも若い男性や女性もいて、なんだか荷物が多い気がする。



「初めまして、ご夫人。お会いできて光栄です」


「は、じめまして……」


「挨拶はいい、さっさと作業に取り掛かれ」


「かしこまりました」



 うわぁ、そんな言い方するのか。エヴァンと一緒にソファーに座ってるけど……ちらり、と隣に視線を向けると、むすっとしているエヴァンが見えた。


 目の前にあるローテーブルに並べられたのは、宝石や、アクセサリー。完成品ではなさそうなものもある。



「こちらは試作品です」


「流石に早かったな。ブルーダイヤモンドか」



 これは……ヘアクリップ? 白いお花がいくつも縦に並べられていて、高級感があって上品だ。そしてところどころ小さな粒になった宝石がちりばめられている。さっき言ってたブルーダイヤモンドかな。これでまとめた髪を留めるらしい。


 こっちを向いてください、失礼しますよ。そう言われて目の前を向き頭を動かさないようにした。髪をまとめられて、クリップが留まったように感じる。



「さ、ご夫人。いかがでしょう」


「す、ごい……!」



 目の前に大きな鏡が広げられた。そして後ろにも。うわぁ、すっごく綺麗で上品。私の長い髪が綺麗にまとまってる。


 けれど、隣に座っているエヴァンは難しい顔で私の髪を観察している。何か問題があるのかな。



「宝石をブルートパーズに変更」


「はい」


「中心の花はもう少し大きく」


「はい」



 うわぁ、仕事姿のエヴァンはいつもの姿と全然違う。だいぶギャップがあるな。普段があんなだから余計か。



「もう一つは」


「こちらに」



 と、ヘアクリップを交換された。それからもいくつか試されては変更点などを話し合い、ようやく終わりを告げた。いやぁ、仕事モードのエヴァンは新鮮だった。


 私はただその場にいただけだったけれど、楽しかった。素敵なアクセサリーをいくつも見る事が出来たし、仕事のお手伝いが出来たし、新鮮なエヴァンも見られた。なんだか嬉しいな。この後、完成したものをまた私の髪で試すみたいだから、その時が楽しみだ。


 ……けど。



「あの、このままでも別にいいですけど」


「さっきのでうねってるだろ。せっかくの綺麗な髪なんだから、例え外部の者と会わなくてもこれくらいはしてろ」



 今度は違うヘアクリップを付けられてしまった。エヴァンによって。髪を梳かされ、まとめられてクリップを付けられた。


 いつも髪は簡単にまとめていた。農作業とかお掃除とかしてたから。でもこんなに綺麗にまとめるなんてしたことないから慣れないな。



「今日はずっとこれにしてろ」


「……はーい」



 これに慣れろ、って事か。はい、そうします。


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