勿忘草
会社から草臥れながら足早に改札を通る私。
また電話応対でやらかしてしまった。これで何度目だろう、数えられないほど失敗したのは確かだ。第一、私が出来ない事を知っていながら命令してくる上司が悪いのじゃないか、と私は思うのである。
そんな愚痴を帰り道、独りボヤいてみて不意に空を見上げてみる。「あぁ今日は15夜か、」今気づいた
子供の頃は小さい事にもよく気づけていたような
気がする。これも成長の一つの代償なんだろうか。
そんなこんなで、私は駅に電車が到着すると、会社
から逃げるように電車へ乗り込んだ。この頃ずっと
こんな毎日だ。他人に不干渉になるようにイヤホンを耳につけ、スマホという名の自分だけの世界に塞ぎこむのだ。
乗車中、イヤホン越しにこんな会話が聞こえてきた。「お祖母ちゃん、椅子に座ってて」と。私は
元来、婆ちゃん子で母を早くに亡くした私には母のような存在だった。だからその孫を見たとき、私の子供の頃がフラッシュバックしてきたのだ。大切な人、別れ、夢や希望、忘れかけていたこと全てを。
私は一駅前で降り、急いで子供の頃に遊んでいた
となり町の空き地へと向かった。
昔とまったく変わらない、
変わっていたのは自分だけだったんだ。