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結界魔法で異世界旅  作者: 白紙
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3.ギルドとステータス

 ディーンさんの説明に従い歩いていると、左側に大きな建物が見えてきた。看板には剣と盾が交差した絵が描かれていて――きっとここが冒険者ギルドだろう。

 街の建物や人を観察したところ、木造の建物ばかりで日本のような高層ビルはないけど、人の往来は多い様に感じる。一際目を引くのが猫や兎といった、耳や尻尾の生えた人間―獣人―がいたことだ!生前は猫と暮らしていたから、あの耳や尻尾をもふもふしたい衝動にかられる…。獣人達の表情に悲壮感はみえないから、この国では人種差別が起きているわけではないように思える。

 ―閑話休題―


 冒険者ギルドに足を踏み入れると、奥行きのある広い空間をしている。左側には酒場のような場所があり、人は少ないけどちらほら顔の赤い人がいる。昼間からお酒を飲んでいるのかと呆れてしまう。…もしかして夜通し飲み続けているのかも?

 右側には掲示板があり、おそらく冒険者への依頼リストが貼られていると思う。掲示板を一人またはパーティーで見ている人がいるけど、こちらも人が(まば)らに感じる。正面には日本でいう銀行の窓口みたいな受付が4つほど並んでいて、一番左の受付が空いていたからそこへ向かう。


「初めまして。身分証の発行で来たのだけど、手続きはここであってる?」

「こんにちは。こちらで大丈夫ですよ。私はホビックの冒険者ギルドで受付嬢をしているアンといいます。気軽にアンとお呼びください」


 異世界でもの挨拶も日本と同じで驚いた。

 受付嬢のアンはとても可愛いらしい人族の女性で、茶髪のポニーテールを肩付近で揺らしている。髪を結んでいない私と同じくらいの長さがある。座っているため全身は見えないけど、スタイルも良さそう。…ついつい女の私でも視線が下にいってしまう。どこにとは言わないよ…でも大きいとだけ言わせてもらう。やっぱり異世界でも、受付嬢は顔やスタイルのいい人が採用されやすいのかな?


「では手続きを行いますので、こちらの書類に記入をお願いします。もし読み書きができない場合は、私が代筆しますがどうされますか?あと手数料として、銀貨1枚のお支払いをお願いします」

「自分で書けるから大丈夫。手数料は今払うわ」


 先に手数料を支払う。アロエルがくれた転生特典のおかげで、読み書きは問題なく行える。記入項目は名前、性別、年齢のみですぐに書き終えた。


「ええと…お名前はユイさんで年齢は15歳ですか。もう少しおさな…コホン。いえ不備はないので大丈夫です」


 絶対今幼いって言おうとしたよね!誤魔化しきれてませんよ…。ここでツッコミをいれても言い逃れされそうなので、()()である私はスルーしてあげる。


「では、こちらの水晶板に血を一滴垂らしてください。それで、本人登録が完了してユイさんの身分証ができます」


 差し出された針を受け取り手続きを進める。怖がってできない人もいるけど、私は平気なので人差し指に針をさして水晶板に血を垂らす。その瞬間光輝いて、思わず後ずさった。


「ありがとうございます。これでユイさんの身分証ができました。ではこちらはお渡しします。もし無くされても再発行可能ですが、再び手数料の支払いが求められますので、無くさないようにしてください。また本人以外が身分証を使用としても一定時間が経過すると何も表示されない仕様になってます」

「ありがとう。へぇ、便利な機能ね」


 アンの説明によれば魔力は人によって異なり、血液を媒体として個人の魔力が登録されるらしい。日本でいう指紋みたいなものかな?身分証を確認してみると四角いカードでこう書かれていた。



名前:ユイ〈女〉

年齢:15歳

発行場所:ホビッグの冒険者ギルド



 何とも簡素なものだなぁ。でもこれで身分証が発行できたから無くさないようポーチの中にしまっておく。

 これからは冒険者としてお金を稼いでいくつもりなので、冒険者登録もお願いすることにする。定番は薬草採取とかかな?…今の実力できる依頼があればいいけど…。


「一緒に冒険者登録もお願いできる?」

「はい、15歳以上から登録が可能ですので問題ありません。冒険者の説明は必要ですか?」

「お願いします」

「では説明します。冒険者にはランクとよばれるものが存在します。一番下がFランク、順にE、Dと上がっていき最高ランクはSランクです。F~Cランクは銅、Bランクは銀、Aランクは金、Sランクは黒のプレートになっています」


 なるほど、ランクごとに色分けされているのか。


「ランクは依頼の達成数や達成率が一定規準を越えたら昇格します。ただしCランク以上からは昇格試験も行います。さらにBランクの昇格試験からは最低限の礼儀作法と言葉遣いも含まれてきます。理由としては、貴族様からの指名依頼が発生する事があるからです。貴族様は礼儀作法や言葉遣いに厳しい方が多く、要らぬトラブルを防ぐためとご理解ください。ここまでで何か質問はありますか?」

「ええと、指名依頼って断れる?」


 貴族からの指名依頼など面倒事しか思い浮かばない。


「それに関しては依頼の種類についてから説明します。依頼は主に通常依頼、指名依頼、緊急依頼の3つがあります。通常依頼はあちらの掲示板に貼ってあるものがそうです。指名依頼はギルドまたは貴族様から直接依頼されることをさします。基本的にはBランク以上から発生して、原則断ることは出来ません。緊急依頼は街や国に緊急事態が起きた時に発生します」

「緊急依頼…」


 指名依頼は断れないのか…。でもBランク以上なら今は気にしないことにして――それよりも緊急事態とは物騒な単語だね…。


「主にダンジョンでスタンピードが発生した場合に出されますが、滅多に起こりませんし、まして国からの依頼など今まで一度もありません。勘違いされる方が稀にいますが、冒険者ギルドは独立した組織なので、もし他国と戦争が起きても徴兵されることは決してありません」


 ――まぁスドモニス王国は平和ですけどねと説明された。緊急事態なんて頻繁に起きても困るので、記憶の片隅にでも留めておく。それよりもダンジョンがあるのなら行ってみたいな…。


「次にペナルティの説明です。依頼に失敗した場合は報酬の1割を支払う義務が発生します。しかしこちらの不手際ややむを得ない事情がある場合、上と協議して検討されます。冒険者プレートを紛失した場合は再発行可能ですがランクはFとなり、手数料として銀貨2枚が必要です。ですので大半の人は首からかけています。説明が長くなりましたが質問はありますか?」

「じゃあ、依頼を受ける時はどうすればいいの?」

「申し訳ありません、抜けていました。依頼を受ける際は貼ってある依頼書を剥がし、受付まで持ってきてください。しかし依頼にもランクがあります。ご自身のランクと同等、あるいは一つ上のランクまでしか受けられません。常時依頼と書かれている依頼書は持ってくる必要はありません」

「ありがとう。もし他にも知りたいことがあったら、その時に質問させてもらうわ」

「承知しました。最後に、冒険者ギルドは冒険者に対して不干渉の立場にあり、皆様の自由を制限することはありません」


 ――もっともギルドに不利益をもたらす場合はその限りではありませんとアンが笑ってそう付け足した。…うん、注意しておこう。


「トラブル事が多いと最悪ギルド除名処分になります。まぁそんなことは滅多にありませんけどね。

 では登録の手続きをいたします。こちらのプレートに血を一滴垂らすとユイさんのステータスが表示されます」


 とりあえず冒険者の説明をしてもらったけど、生前に読んでいたファンタジー小説と酷似していたのですんなり理解できた。

 冒険者プレートの再発行は手数料が高いから、私も首からかけておこう。

 渡された銅色のプレートは水晶板よりも小さかった。同じように血を垂らすと水晶板同様に光輝いたが、二度目は驚かなかった。


「これで冒険者登録も完了しました。こちらがユイさんのステータスです」



 名前:ユイ

 年齢:15歳

 職業:Fランク冒険者

 HP:E

 MP:C

 ATK:E

 DEF:E

 AGI:E

 LUK:B

 魔法適正:火・水・風・土・光・闇

 固有魔法:(結界魔法)



 ステータスはアロエルに見せてもらったものと異なっている。

 冒険者登録をしたせいか職業欄がFランク冒険者に変わっている。それから固有魔法の結界魔法が()で表示されている。これはどういう意味なのかな?


「ユイさんのステータスは成人と同等ですが、MPとLUKが高いですね…。LUKはCが大半なんですけど。それから全属性魔法の適正に固有魔法持ちとはすごいです!残念ながら固有魔法名は所持者にしか表示されないため不明ですが、ユイさんは貴族様のご息女でしょうか?」

「いやいやただの平民だよ!」


 ギルドでも勝手に固有魔法名まで確認することは出来ないのか。固有魔法は私の切り札なので、極力知られたくはない。異世界でも個人情報は保護されてるみたいで安心した。

 全属性魔法の適正も珍しく騒がれてしまったけど、周囲に人はいないしアンの声も大きくはなかったので聞かれてはいない…と思う。


「失礼しました。貴族様は魔法適正の高い人が多いのでそうじゃないかと思いましたが、そもそも貴族様が冒険者にならないですよね。…まぁたまに貴族としての身分を隠して登録する人もいますけどね」


 とりあえず誤解はとけたみたいでほっとした。身分証が無事発行できたので、後は宿屋を探せば今日の目的は達成する!


「これで手続きは完了しました。依頼を受ける際はご自身にあったものを選ぶようにして下さい。また一人では難しい依頼はパーティーを組むのがオススメです」

「当面はソロで頑張るつもり。それと話は変わるけど、女性でも安心して泊まれる宿屋ってどこか知ってる?」

「そうですね…ギルドの正面にある猫の帽子亭なんかどうですか?目の前にギルドがあるので暴れる人や騒ぐ人はほとんどいません。それに清潔で、各部屋にシャワーがあって値段もお手頃なので女性にも人気の宿屋です」

「近くて便利なのもいいね!じゃあそこに行ってみるね」


 パーティーを組むのもいいけど、まずはどれ程の能力があるのかを確かめないとね。宿屋はいい情報を教えてもらった。異世界にもシャワーがあるのは驚いた。中世ならないかもと思っていたから嬉しい誤算だ!手続きは意外と早く終わったので、この時間からいけばきっと部屋は空いているだろう。アンにお礼を告げ猫の帽子亭へと向かうことにした。


冒険者ギルドはギルド、冒険者プレートはプレートと略して使っています。毎回冒険者をつけると読みにくいためそうしてます。


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