逃げた令嬢は青年の隣にずっと居続ける
ネタ帳に置いていたのを加筆しました。
後半、少しだけラリマーと両親のその後があります。
ほんとに少しだけ。
もう二度と離さない――
強く握られた手が、抱き締められている体が、キスの雨を受けている顔が異様に熱い。
4ヶ月前の出来事が未だに鮮明に思い出せる。地獄のような場所でも懸命に築き上げてきた伯爵令嬢としての矜持も、友人も、故郷も、婚約者も、家族も、何もかもを捨てて王都よりも遠い街へ逃げた。辺境の地に近い其所は、余所者でも気軽に受け入れてくれる所で身形が訳有りなスカーレットにも深くは聞いてこなかった。ただ、一緒に付いて来てくれたアメシストや彼女の弟がいなかったらきっと生活は出来なかっただろう。貴族と平民の生活は大きく異なる。今まで当たり前だったことが当たり前ではなくなる。スカーレットに不満がなくても、伯爵令嬢として育った彼女にとって、平民の生活は最初はきついものがあった。家を出る際持ってきた質素なワンピースを着用しても周囲からはかなり浮いた。幼い頃からローズオーラの仕事兼研究を手伝っていたのもあり、協力費用としてそれなりの額の金銭を受け取っていた。始めは断ったものの、スカーレットの魔法がないと開花不可能だった花があったのも事実で。正当な報酬だとローズオーラから押し付けられる体で受け取っていた。
折角頂いた報酬をこんな形で使用してしまうとは……。
スカーレットも申し訳なさを抱いた。だが、逃げた自分には、公爵令嬢であり第2王子殿下の婚約者であるローズオーラと会う資格は、もうない。
「スカーレット……顔を上げて。俺に、スカーレットを見せて」
「アシェリート様……」
キスの雨を受けるのも4ヶ月で少し慣れただけなのでまだまだ恥ずかしい。真っ赤になったまま、愛しい人を見上げた。
スカーレットとアシェリート。2人が今いるのはヴァーミリオン侯爵邸。伯父夫婦の養女となったスカーレットの住まいは、当たり前な話伯爵家から侯爵家に変わった。荷物もとっくの昔に運び込まれていたみたいだった。運んだのは祖母。きっと、こうなる事を見越して先んじて動いたのだろう。勝手にいなくなったのに、再会した時瞳を濡らし、何度も無事で良かったと言われ、抱き締められた。6年前、祖父母に引き取られた際、あのまま家に戻されなかったら伯父夫婦の養女となって、今こうしてアシェリートとずっと一緒にいられた。
伯母の近くにいた伯父には、深く謝罪された。3年前の決定は間違っていた、と。
ずっとスカーレットは聞きたかった。どうしていきなり伯爵家に戻されたのかを。
伯父から聞かされた内容に怒りも悲しみもなかった。伯父も祖父も、有能な貴族と言えどやはり人の子。弟であり、息子である父の必死の願いに希望を抱いて自分を再び伯爵家へ戻した。家族を信じたいという2人の気持ちは分からないでもない。スカーレットもほんの少しだけ期待していた。両親もこれを機に少しは考えを改めてくれただろうか、と。幼い少女のまま大人になれば、苦労するのはラリマー。伯爵家を継ぐ彼女の為を思うなら、変わっている筈だと。
……結局、抱いた期待はすぐに砕け散り更なる地獄へと突き落とされただけだった。
「アシェリート、様」
「なんだ。離れてくれ、なんて言われても離してやれないが?」
「違いますっ、その……」
アシェリートの優しい口付けを受け、熱くなり過ぎて顔が溶けてしまいそうだ。ただ、キスをされたい場所があって、ついアシェリートを呼んだがいざ自分から言い出そうとなるととても恥ずかしかった。更に真っ赤にして口を揺らすスカーレットを、愛していると瞳を見るだけで分かってしまう程愛おしさで溢れた紫水晶を向けるアシェリートは唇にそっとキスをした。
無論、スカーレットは驚く。彼を見上げるともう恥ずかしさもなくなった。正面から溢れんばかりの愛情を与えてくれるアシェリートに応えようと、細い両腕を背中に回した。身を乗り出すようにしてスカーレットからキスをした。すると、抱き締めていた手が後頭部に回った。炎に燃えるような赤い髪を撫でられながらゆっくりと後ろへ押し倒された。
「駄目……っ」
「分かってる。こうするだけでいい」
「ん……」
触れるだけなのに、多量の熱を持った口付けにスカーレットは夢中になった。
時刻は夜。本来なら、婚約者と言えど未婚の男女が一緒の部屋にいるのは宜しくない。絶対に先走った行動は取らないと侯爵夫妻を説得して掴み取った、スカーレットと添い寝をする権利。4ヶ月前見つけて、戻ったのは1ヶ月後。
遠い街で十分な教養を得られない子供達に言葉や文字を教えているという貴族令嬢らしい赤い髪の少女の話を、オルグレン公爵家が贔屓にしている大商人が漏らした。4ヶ月前はある程度居場所に目星をつけていた頃。その話を聞き、両親にも姉にも告げず1人その街へ向かったアシェリートはすぐにスカーレットを見つけた。街人に赤い髪の少女の居場所を聞いたらすぐに教えてくれた。
「侯爵達には、絶対に手を出さないと言ったが……困ったな、俺がもちそうにない」
「か、からかわないでくださいっ」
「からかってなんかいない。スカーレットと今すぐにでも結婚して夫婦になりたい」
「アシェリート様……私もです。早く、貴方の妻になりたい」
ずっと、互いの事だけを想い、愛していた。
長い間の擦れ違い。まだ心の何処かでアシェリートが片割れを愛しているのではないか? という、そんな気持ちはスカーレットにはもうない。
あの時、子供達に必要な知識を与えている時に彼は現れた。最後に会った時と比べると些か痩せたように見えた。
事情を知っている人達は、皆スカーレットはアシェリートの説得に応じて戻ったと思っている。
……だが、実際は違う。
アシェリートは説得していない。ただ、今のスカーレットの事を聞いただけ。距離感やぎこちなさはあったものの、周囲に気を遣わず2人だけでいるのは随分と久し振りだった。
平民としての生活は大変だが、とても生き生きとした表情で語るスカーレットを見つめるアシェリートは何処か変だった。擦れ違っていても、相手の微かな変化に気付けるのはそれだけ相手を見ていた証。スカーレットが幸せに暮らしていて良かったと安堵した、その時のアシェリートをもう忘れられない。
「アシェリート様」
「どうした」
「その……我儘を言っても、いいですか?」
「あぁ……どんな我儘でも言ってくれ。全部、俺が叶えてやる」
「明日、ローズオーラ様が管理する植物園へ一緒に行ってくれませんか」
「いいよ。行こう。スカーレットが望むなら、何処へだって連れて行ってやる」
アシェリートに強く抱き締められる。伝わる温もり、鼓動が、息遣い、この全てがアシェリートが生きているのだと証拠付けてくれる。
あの時、話を聞き終えたアシェリートはこう告げた。
『そうか。お前が幸せで良かった。……お前の幸せが今の俺の、たった一つの幸福だから』
何故だろう。その時のスカーレットは、幸せになれ、と告げて背を向けて歩き出したアシェリートを呼び止めた。このまま彼を行かせたら、駄目な気がして。
だが、アシェリートは呼び止められた事を怪訝に感じたのだろう。疑問符をつけてスカーレットを呼んだ。スカーレットも直感で感じただけで明確な理由を持っているのではない。けど、アシェリートを行かせたくなかった。
そこからは必死だった。空は既に夕焼けに染まり、道が険しい為夜の馬車はない。街の何処で宿を取っているのか、取っていないのなら一晩泊まっていってほしい、と必死にアシェリートを街に留めようとした。
「こうやってスカーレットといられるだけで幸せだよ」
「私も……です。アシェリート様が傍にいてくれるだけでとても幸せです」
擦れ違っていた心は漸く一つになって、今まで与えたかった愛情を、想いを、溢れんばかりに注いでいる。
絶対に離さないとばかりにスカーレットを抱き締めるアシェリートは、赤い髪にそっとキスをした。
……そして、スカーレットの頭に頬を乗せ、顔が見えないのをいいことに紫水晶の瞳から一切の感情を無くした。
遠い街でのやり取りを思い出す。
スカーレットを見つけても彼女を説得して連れて戻る気は最初からなかった。だって、彼女が言ったのだ。
“私も愛するものと一緒になれるのですから”――と。
その愛している相手と一緒になれて彼女は幸せなのだ。現に話の中でも平民としての生活に慣れないスカーレットの為に世話を焼いてくれるのが申し訳ないと感じると同時にとても有り難いと語っていた。
……今更連れ戻した所でスカーレットは幸せにならない。
屋敷を出る際に、父の手伝いとして公爵家の当主にしか入れない部屋に侵入してある物を持ち出した。貴族の当主が管理する《永遠の実》は、表には出せなくなった者を意図的に病死させる毒薬。飲んだ者は苦しみもなく、穏やかな死を迎えられる。絶対に触ってはいけないよと語っていた父の姿が目に浮かんだ。今頃、勝手に屋敷を飛び出した上に《永遠の実》まで持ち出してしまったから大騒動になっているだろう。
……それでも良いと思えるのは、もう未練もなかったから。スカーレットが幸せならそれでいい。アシェリートは最後にスカーレットの久し振りの心からの笑顔を見られて……それだけで幸せになれた。他の相手と笑うスカーレットを見たくない、スカーレット以外の相手と一緒になるのも嫌。公爵家を継ぐ者として相応しくない思考。幸いにも、オルグレン家にはローズオーラがいる。仮にアシェリートが死んでもローズオーラが跡を継げばいい。彼女も非常に優秀な人物で婚約者の第2王子も(中々に困った性格をしているが)狙えば王太子の地位を奪える程の逸材。2人がいるのなら公爵家は一先ず安心と言えた。
スカーレットの笑顔を脳裏に焼き付けるように見つめ、後は誰にも見つからない場所で《永遠の実》を食べて死ぬつもりだった。必死に引き留めるスカーレットにやんわりと抵抗しても頑なにアシェリートを離そうとしなかった。
今こうやってスカーレットの傍にいられるのが、実は夢でした。なんていう、面白味もない三流小説のような終わりでもいい。
結局、根負けしたのはアシェリート。スカーレットに連れられるように住んでいる基本的な平民の家より少し裕福な部類に入る家に案内され驚いた。
同時に納得し、自分の思っていた事が誤解だと認識した。
「明日に着ていくドレスだが、俺が選んでもいいか? 髪飾りも俺が選んだ物にしてほしい」
「ふふ、それだとアメシストがドレスを着せてくれて、髪を梳くのはアシェリート様になってしまいますね」
「なんなら、ドレスも俺が着せてやろうか?」
「まあ、ふふ、アシェリート様ったら」
からかっているように見えて、本気で言っているから嬉しい。結婚まで後半年もない。だが、まだ夫婦ではないので勿論そんな行為もしていない。……いつもギリギリでアシェリートが理性を保っているので。いざその時になったら、キスをされる以上に恥ずかしいだろうがアシェリートに何かをされるのが嬉しくてスカーレットはつい笑ってしまった。
一緒に違う街まで付いて来てくれたアメシストや彼女の弟も今は侯爵家にいて、侍女と執事見習いとして働いてくれている。スカーレットが伯父夫婦に弁解し、懇願した。2人を自分付きの使用人として雇ってほしいと。勝手な願いだとスカーレットも理解していたがこれだけは譲れなかった。
伯父夫婦は責めもせず、寧ろ、無事に平民としての生活が送れていた理由である2人に感謝していた。既にヴァーミリオン伯爵家を辞めていたのでヴァーミリオン侯爵と雇用契約を結ぶのは簡単だった。
「明後日は何をする」
「まあ、まだ明日にもなっていませんのに」
「明後日だけじゃない。その次の日もスカーレットと何をするか、今から楽しみにしているんだ」
「ふふ。もし、子供が出来たらアシェリート様は毎日毎日そわそわしてそうですね」
「かもしれないな。何時生まれるのかとずっとスカーレットのお腹に耳を当てていそうだ。性別がどっちでも、スカーレットに似ていたらそれだけで甘やかしてしまうな」
「私もアシェリート様に似ていたらいいなと思います。きっと、素敵な子に成長するから」
「それは俺も一緒だよ。スカーレットの髪と瞳の色を受け継いでほしい。ずっと見ていたいこの色に」
アシェリートは初めて出会った時に惚れた炎に燃えるような赤い髪にそっと口付けると瞼にもキスをした。
スカーレットも、ずっと自分を魅了し続ける美しい紫水晶の瞳を見つめたまま、頬に口付けた。
――もう2人を邪魔する存在はいない。これからも離れていた分を取り戻すように愛し合っていく。
――世界中の者が夢の世界へ旅立つ時刻。
スカーレットを抱き締めたまま眠っていたアシェリートは目を覚ました。暗闇の中、美しい紫水晶が宝石の如き輝きを放っていた。暗闇を自由に歩けるように瞳に魔力を溜めているのだ。スカーレットを起こさないようそっと離れ、頬にそっと口付けをして部屋を出た。
屋敷の警備員と遭遇しないよう、細心の注意を払って邸内を歩き。ヴァーミリオン侯爵夫人お気に入りの庭園へと足を運んだ。
侯爵夫人の好きなラベンダーが一面に広がる庭園の中心に来た。
夜中、庭園に行く許可は貰っている。
何かをするつもりはない。ただ、ラベンダーの香りを味わいたいだけ。1人立っているだけでは怪しまれると予想し、事前に話を通して良かった。警備の者が来るが、侯爵夫妻から話がいっているので不審に思われる事はなく、寧ろ「眠れませんか?」と声を掛けられた。苦笑いをして頷くと「どうぞ、眠くなったらお戻りください」と一礼をしてまた巡回に戻った。
スカーレットに似合うのは赤い薔薇。他の赤い花を贈っても、そもそもどんな花を贈っても喜んでくれるのだが最も似合うのは赤い薔薇。スカーレットの為にあると高々と宣言してもいい。実際したら恥ずかしがって怒るのでしない。
ただ怒ったスカーレットも可愛いので少しだけ実行してみたい、という願望がある。スカーレットの事となるとこうも我慢出来なくなる。何度も口付けを交わして、一緒に眠るだけなのも半年経つまでの辛抱。結婚式を挙げて、正式な夫婦となればきっと……。
「……やめだやめだ」
考えるな。考えれば、眠っているスカーレットに何をしてしまうか自分自身怖い。
戻ったら強く抱き締めるのだけは許してほしい。
そういえば、とアシェリートは伯爵家の方を思い出した。
スカーレットが魔法学院に復帰してすぐ、彼女の双子の妹ラリマーは中退した。ラリマーの婚約者デルフィーノは周囲に――
『スカーレット様が戻られて緊張の糸が切れてしまったようで。ですが、これ以上の通学は難しく、残念ですが途中退場の形を取りました』と説明していた。
実際の事情を知っているアシェリートは彼の口の上手さに呆れた。同時に感心した。あそこまで自己愛の激しい相手と婚約し続ける彼に。伯爵の地位が欲しいのではないとデルフィーノは言っていた。
何が欲しいと訊ねると――
『当事者であるアシェリート様やスカーレット様にはきっと理解し難いでしょう。まあ、私は言うつもりはないのでアシェリート様のご想像にお任せです』
『まさかと思うがラリマーに惚れたか?』
『残念ながら惚れる要素が何処にもありません。あるとしたら見た目だけでしょう。ですが、見た目が良いだけなら下位貴族、平民にだっています』
『学院を卒業したら、そのままラリマーと結婚するのか?』
『いいえ。結婚はしません。公爵や侯爵、私の父からも許可は得ています。ただ、条件には必ず子を儲けろと組み込まれましたので子は産んでもらいます。2人出来たら、後は好きにさせます』
但し、病死はさせない。きっと、生きる方がラリマーには酷だろうから、と。
『彼女もある意味不幸な人です。本人の素質もありますが、本来であれば正しい道へ歩かせばならない両親の悪意のない優しさによって、貴族令嬢として生きていくのには困難な人格が形成された。元々の原因は伯爵夫妻。スカーレット様だけじゃない。ラリマーも伯爵夫妻から無理矢理引き離して生活させていれば、きっと別の道があったのでしょうに……』
デルフィーノがラリマーをどう思っているか、アシェリートには関係がない。スカーレットが隣に戻って来てくれた。これだけでもう十分なのだから。けれど、今のラリマーを知ったらスカーレットは悲しむ。極めて複雑な気持ちを抱いていも己が半身なのだから。
ラリマーは屋敷に閉じ込められている。毎晩、毎晩、薬を使って抱かれている。
難しい勉強も、貴族令嬢としての矜持も振る舞いも、何もしなくていい。ただ、そこにいて必要な事をすればいいだけの生活は、きっと彼女に向いている。
しかし、泣き喚いても、抵抗しても、助けを求めても、絶対的味方である両親は助けてくれない。一方的な恋情を向けていたアシェリートも来ない。ずっと自分を引き立たせる為に悪役に仕向け続けたスカーレットもいない。
1人の味方もいない場所で、今頃必要だからと無理矢理行為を強要されているだろうラリマーを想像してもアシェリートの心には何の感情も浮かばなかった。
伯爵夫妻の方は侯爵が後始末をつけると話していた。無論、この話もスカーレットの耳には入らないようにしている。領地へ押し込む予定が思いの外ラリマーの処遇に強い不満を抱いているらしい。本当なら、婚約破棄をして修道院へ行かせてもいいのに。デルフィーノ曰く、修道院へ行かせたら他所に迷惑が広がるだけ、自分が管理しますと名乗り出たのだとか。
アシェリートがスカーレットを見つけた後口にしようとしていた《永遠の実》を煽る予定だ。痛みも苦しみもない、眠るように死ねるのだから幸福だろう。
いっそのこと、とアシェリートは冷たい冷気を吐き出した。嘆きの川に浸らせて、今までの行いを逃れられない永遠の苦しみを与える事で思い知らせてやりたい。
「……俺にそんな資格は、ない」
スカーレットを長年苦しませてきたのはアシェリートも同じ。スカーレットを守る為にしてきた行動全てが悪い方へいくと知りながらも、そうせざるを得なかった。ラリマーが傷付けば、両親が駆け付け、何も悪くないスカーレットが悪者となって傷付けられていった。ラリマーに惚れられているアシェリートがスカーレットを庇えば庇う程悪循環となった。
「スカーレット……」
無性に愛しい女性に会いたくなった。肌に触れたくなった。
庭園から離れたアシェリートはしっかりとした足取りで部屋へ戻った。
ベッドの上には、規則正しい寝息を立てて眠るスカーレットがいて。そっと、ベッドに戻り、スカーレットを抱き締めた。
「愛しているスカーレット」
お休みと額にキスを落とし眠ったアシェリートは気付いていただろうか。
眠っている筈のスカーレットの手が、自分の服をきゅっと握り締めた事を……。
読んで頂きありがとうございます。