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ディナー【一】

遅れて申し訳ない!

「なぁここ出るのってまた二日かけるのか?」


 チャンピオンが全員に尋ねてくる。そして俺がドヤ顔をかましながら答える。


「いや、ダンジョンを一つ攻略した俺から言わせてもらえば。ボス部屋の奥にはボスを倒すと転移門が出現する。ほらな出てきた」


 そう言ってチャンピオンはノアを肩車してジョウがセキウンを肩車する。そしてチャンピオンとジョウ達は転移門に入っていった。


「アモン行かないのか。だったら俺は先に行くけど」


「すぐ行くさ。だけど、もう少しだけここで待っててくれ」


 そう言われ俺は何も答えずにそこでアモンを眺めた。そんなアモンはヴァーナさんの居た場所に膝をつけ涙を流すでも手を合わせるでもなく。ただただ座り続けていた。


 きっと。アイツは俺がシムナをなくした時と同じような感覚だ。なんせアモンが一番ヴァーナさんにお世話になっていたし俺達の中で一番の子供好きだからだ。俺のとは少し違う状況だけど失うという形は一緒だ。これについて俺はアモンには何も言わないでおこう。


「よし!」


 そう言ってアモンは自分の頬っぺを両手でペシリと叩き立ち上がる。


「行こうぜタツ」


「黙れよ泣き虫」


 そう言うとアモンは口角を持ち上げ何も言わずにニヤリと小さく笑みを浮かべた。


 ---


「お前ら!毎回遅すぎな!泣き疲れてた子供達寝ちまったよ!ほれ!」


 そう言って背中で寝ているセキウンを見せつけてくる。アモンはそれを見てジョウの背中から引き離し。抱っこする。


「流石元ベビーシッター」


「こんなんベビーシッターじゃなくても知ってるぞ」


 そう言って次はジョウとアモンが前に行く。そしてチャンピオンが俺に話しかけゆっくりと前に進む。ノアちゃんはチャンピオンの大きな腕でスヤスヤと眠っていた。


「コイツらも可哀想なもんだな」


 そう言って寝てるノアちゃんの垂れた髪を耳にかける。


「そうだな」


「アモンはこのゲームの人間を機械だとは思っていない。それは俺達も同じだがアイツは俺達が思っている以上に思いが強かった。あのままじゃアイツは身が持たなくなる。それを俺達がカバーしてこの子達を守るんだ。これは約束だぞ」


 そう言って大きな拳を俺に向けてくる。俺はその拳に拳で答える。


「大丈夫。分かってるよ。それはアイツらの中でも一番強い俺とお前の約束だ」


 そう言われチャンピオンは照れながら大事そうに子供を抱き。走ってアモン立ちを追いかける。


「おーい!俺達を置いてくなー!」


「静かにしろ!子供が起きちまう!」


 そうだな。これは俺達にしか出来ないな。なぁ、チャンピオン。いや、格神WORLDランキング第五位【凶神ガイズ】。


 ---


 街に戻ってすぐ。俺達は宿に戻り子供をベッドに寝かせたがすぐに目を覚ましお腹をグーグーと鳴らしていた二人を見かねてアモンとジョウが計画した。その名も美味いもん食わしてやりたいの会。


 モデルであるアモンと一応ファッション誌に載っているチャンピオンの二人で子供達のコーデを決めに行き。俺とジョウで素材を売り金をめちゃくちゃ集めた後美味そうな高級店を探して走り回っていた。


「なぁ、タツヨ。アイツ。帰ってくるってよ」


「マジで?!全員揃って遊ぶのとか中三以来だろ!来るのか!」


「しかもアイツ?今年で留学が終わるからEIO実験オンライン学校来れるってよ」


 まじかよ!アイツ今どうなってるんかな?!最後に会った時はガリガリだったから細長くなってるかもな!いやー!楽しみだ!


「んじゃ、店も決まったし宿戻ってあいつらに買わせてきたスーツに着替えるか」


 おう!


 ---


「んー!ではでは!子供達も目を覚まし!森の中での素材もバカみたいに売れてぇ!億万長者になったので!高級レストランを!子供達にご馳走したいと思いまぁす!皆さん!言われた通りスーツできたかぁ?!あっ、ノアちゃんはドレスで大丈夫だよ」


 全員で数百万ガルドのスーツを全員で着て大貴族。王族がよく行くという。レストランへと入る。中に入っていくと俺達を見て大貴族達がクスクスと笑う。


 全員が席につき子供達がソワソワとしているのを見て緊張をほぐす。ドレスコードはアモンが宿で教えてたっぽいから大丈夫だろう。むしろ俺の方が心配なくらいだ。俺ちゃんと出来るかな?


 流石に身のこなしでバレるか。全員笑って....笑ってないな。アソコの金髪少年は一人で来てるのか?のになぜ笑われない?子供がいるからか


「ご注文はどうなさいますか?」


「ほーらちゃんと教えた通りにだぞぉ....」


 アモンがセキウンとノアにそう言うと周りの笑い声は大きくなりウェイターも少し笑う。


「「えーっと....ここからここ!ぜんぶください!」」


 二人がそう言うと周りの嘲笑は困惑へと変わりザワつく。ウェイターは顔を引き攣り営業スマイルが保てなくなっていた。


「え、えーと?お聞き間違いでしょうか?」


「は?何?アンタはウチの子がここの店をからかってるとでも?はー....もうなんだか周りの客層もレベル低いし。店ごと買っちゃう?」


「「「それでいいと思う」」」


 俺達はアモンに言われた通りにアモンが何か同意を求める時は「それでいいと思う」と答えた。


 ひぇー....。怖いな。プレイヤー居たら顔バレするの嫌だし。戦争の時の幻影魔法で顔隠しておこう。あの姿は子供達には怖がられるだろうから。幻影範囲から出そう。アモン達も出すか。魔力消費なんて街中だし気にせず行こう


 そしてウェイターは涙目になりながら注文を伝えにキッチンまで行った。と思っていた。ウェイターは奥から用心棒の様な大男を連れてきた。


「こ、この方達が私をクビにさせようかとお、脅してきたんです!どうにかしてください!」


 そう言われた用心棒の大男は久々の仕事なのか凄く笑顔でこちらに来た。


「ちょっとお客さ〜ん?それは本当ですか〜?」


 そう言って用心棒の大男が俺達を見渡す。が用心棒の大男は俺達を見ているとだんだんと顔が引き攣っていき。俺と目が合ったところで完全に止まった。大男が俺を凄く見ている。そして俺もずっと見ている。


そして思い出した。


 あー!こいつ!あの戦争の時味方軍として俺達の部隊の増援として来ていた下っ端Bだ!俺がユニークボスとして戦った時は威圧で小便漏らして気絶してたから覚えてるぞ!俺があの時のボスだって知ってるのって極小数だけだよな?大丈夫だよな?


「ヒサシブリダナ」


 本当に嬉しくて久しぶりと声をかけた。


「ひ、ひぃっ!?お、おい!ウェイター!話が違うぞ!このお方達の所になぜ連れてきた?!」


「こ、こんな子連れの弱そうな人達!サパーさんでどうにか出来るでしょう!」


「アホかぁ!このお方達は先の聖国と旧新王国の戦争での英雄の方達だぞ!右から!勇者アモン様!闘神チャンピオン様!まぁ、この人は分からないが。最後に!敵軍に二つ名をつけられるほど恐れられた殲滅のバルト様だぞ!」


 そう聞いてウェイターは俺達を二度見する。そして周りのざわつきは俺達を称える声に変わる。『じゃあ、あの子供達は勇者様達に助けられ保護された子供?!』『アモン様ってかっこいいわぁ....』


 チッ。胸糞悪ぃ。さっきまで散々バカにしてた癖に途端にこれかよ。あーイライラする。それも全部このウェイターのせいだ。


 そう思っていると威圧が発動してしまいウェイターが泡を吹いて気絶する。


 あっ、やっちまった。


「スマナイナ。少しイライラしちまった」


「も、申し訳ありませんでした!料理長に伝え早急に注文の品を持ってきます!」


 あっ、いやそうゆうことでは無かったけども。まぁいいか。値段はいくら位なんだろ?


「で、値段はいくらだ?」


「そ、それはもう!ウェイターが失礼を働き英雄様達を待たせてしまったので!料理長の親父に頼んで全品当店から全て無料とさせていただきます!」


 えっ?!マジで?!そんな俺気にしてねぇのにぃ!優しいじゃんか!これでも別にいいのか?!アモンの台本通りじゃねぇけど!


 そう思ってアモンの方を見るといい笑顔でグッジョブサインを出てきた。そして子供達のお腹が大きく鳴り。チャンピオンが子供達に言う。


「今からめちゃくちゃ美味しいもの来るから。楽しみにしておけよ!」


 そう言うと二人は申し訳なさそうにコクリと頷き。すぐさま一品目が来て楽しいディナー会が始まった。


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