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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
431/496

リリン。永遠の命もここまでだ

「こっち見ろぉ!」


 そこへ日向ちゃんが突っ込む。ミリオットの光を携え強化された体と剣で打ち付ける。


 その力はさきほどのグランにも劣っていない。増幅を司るミリオットの力、小柄な体でも威力はある。


「これはこれは可愛らしいお嬢さん、私になにかご用ですか?」


 だが相手がジュノアではそれでも足りない。日向ちゃんが横から振ったミリオットを片手で掴む。びくともしない。表情にも危機感なんてまったくない。


 日向はミリオットを消す。それでジュノアはクエスチョンマークの表情になるが、すぐに出現させたミリオットをその間抜け面に向ける。


「バイバイオバサン!」


 ミリオットの光線が発射する。その光線は彼女の顔面を丸飲みにし白い光は夜空に向かって伸びていく。その破壊力と熱量。並の悪魔なら即蒸発の一発だ。


 光線が止まり目の前の蒸気が晴れる。


 そこには無傷のジュノアが微笑んでいた。


「げ!」

「バイバイ、お嬢さん」


 日向ちゃんのわき腹を蹴り飛ばす。それをもろに受け校庭の土手に激突した。


「日向ちゃん!」


 強化されている体とはいえジュノアの攻撃はまずい。ミリオットの一撃同様、並の人間なら即破裂の一撃だ。


「ディンドラン!」


 香織が手を伸ばす。蹴られた箇所がピンク色の光に包まれ痛みが引いていく。


 赤い剣が宙を走る。此方はカリギュラをジュノアに投げつけた。日向への追撃はさせない。


 ジュノアは顔面に迫るカリギュラを片手で掴み凝視する。


「ポリューション!」


 その行為に呪いをかける。


 精神汚染。見る者の心を壊し発狂させる異能。間近で見れば当然ただでは済まない。


「んん?」


 ジュノアの表情が怪訝に歪む。この剣から嫌なものを感じる。しかしそれがなんなのか分からないといった顔だ。


「汚らわしい」


 どの道いい気分になれる物じゃない。地面に投げ捨てる。


 此方はカリギュラを投げると同時に走り出しておりスパーダを手元に戻す。そのままジュノアに近づいていく。


「カリギュラァア!」


 刀身から赤いオーラがあふれ出す。破滅を引き連れ此方はカリギュラを振るう。


 当然ジュノアもただでは受けない。グランやミリオットと比べ軽すぎるそれを簡単に掴む。


 しかしそれは暴虐の中心地。それに触れることがどれほどの愚行か彼女は知らない。


「ん?」


 体力を奪う。魔力を吸う。それだけでなく大地は腐り空気は淀む。寿命すら削る魔の瘴気。


「ほう」


 初めてジュノアが関心を示した。力や速度ではない、直接命を削られる感覚。まったく別の攻撃アプローチだ。


 殴る蹴るが基本戦術のジュノアからすれば頭を内側から殴られたようなもの。


「こんなものまで作るとは、イヴンの創造力はやはり侮れませんね」


 その特異性に素直に驚いている。


 だが脅威にまでなっていない。そもそも寿命を削るカリギュラと永遠の命を持つリリンでは相性が悪い。


 それでもこの能力が危険なのはジュノアも理解している。この能力は今後多くの悪魔を殺す。


 そうはさせない。


 掴む手とは反対の手が拳を作る。目つきが変わる。絶対に逃がさない。


「下がれ此方!」


 斥力で体が引っ張られる。カリギュラを消したことでそのまま此方は後ろに飛んでいった。ジュノアの攻撃は空振りに終わり此方と力也が入れ替わる。


 グランの一撃。それを左腕で受ける。さらに振るわれる攻撃を後退してかわしていく。


「またあなたですか、構いませんがね」


 ジュノアはボクシングポーズを保ち一足で間合いに入る。


 今のところ力で自分に競り合えるのは彼だ。その彼がやる気だというのに拒む理由はない。


 戦いは一人では出来ない。楽しむためには相手がいる。


 ジュノアは有り難い遊び相手に右ストレートを放つ。


「ん?」


 が、拳が進まない。


(これは)


 押し返される。そこに透明な壁があり向こうからも押されているように。


 グランの斥力。それがジュノアの拳を阻んでいた。


 近寄れない。さらに力也の足場が沈んでいく。彼の両足が校庭の土を砕き段階的に亀裂が広がっていく。


 それは質量の増大。力の増幅だ。重くなる度力は増していく。


 怒りに満ちた瞳がジュノアをじっと見下ろす。


 力也は斥力と拮抗しているジュノアの拳を掴んだ。


 瞬間、ジュノアも感じ取る。


 これは人間じゃない。強大な怪物に掴まえられた、そんな感覚。


 力也の手がジュノアの腕を押していく。ジュノアの持つ力。それを上回った。


「!?」


 この時、ジュノアですらその表情から余裕が消える。


 押し負かされている。見上げるのは怪物。怒りに全身を燃やす破壊の獣。


 力也が見下ろしている。


「リリン。永遠の命もここまでだ」


 笑顔が消えた。


「サラマンローブ!」


 ジュノアの左手が炎を纏いそこから赤い籠手が現れる。それで力也を殴りつけた。


 それも力也の斥力に弾かれる。殴れていないが、しかし少しずつ進んでいる。


 サラマンローブの後方が炎を噴射する。それにより爆発的な推進力を得て、拳が前進する!


「チェス、トォオオ!」


 ジュノアの左は力也の胴体を殴りつけ後退していった。両足が地面をえぐり轍を作る。


「ぬう!」


 殴られた箇所を触る。痛みはあるが怪我はない。


 ジュノアは右手にもサラマンローブを装着し構えを取る。


「やはりあなたたちは面白い。セブンスソードが作り出したスパーダ。倒しがいがありますよ」


 強敵を目にして萎縮するのではく昂揚する。彼女の戦意に連動するようにサラマンローブがエンジンを吹かす。


 これからはさきほどまでとは違う。魔具を身につけた攻撃だ。


 今まではあくまで素手。これからが本当の勝負。


「いざ!」


 一歩を踏み出す。地面を砕き前へ出た。


「ディンドラン!」

「!?」


 その前方に現れる桃色の壁。それに阻まれジュノアの足が止まる。それはディンドランの能力だが香織は発動していない。


 みな背後に振り返る。ジュノアもその人物に目をやった。


「聖治君!」

「聖治?」

「聖治さんだ!」

「聖治、大丈夫なの?」

「……聖治」


 現れた彼に香織が笑顔を向ける。他のみなも彼を見た。


 剣島聖治。その手には七色のスパーダ、ホーリーカリスが握られピンクに発光している。ディンドランの壁を消し虹色に戻る。


「これはこれは。ついに団長候補の登場ですか」

「ジュノア、決着を付けるぞ」

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