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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
394/496

では、不死王との対決を?

 板挟みの最中、彼女の情熱は己をも焼きながら進み続ける。


「誰も死なない、誰もが理不尽に立ち向かえる強い世界に変わるなら!」


 それほどまでに、彼女に宿る炎は強いから。


「それ以外は、なにもいらない」


 彼女こそは炎の化身。死と新生を繰り返す、生命の強さ。


「私の思いは、いずれすべてを焼き尽くすんだと思う。その炎はいずれ私すら飲み込んで、本当に守りたかったものをすらその情熱は奪っていくんでしょう。だけど、焼けた大地から新たな芽が生まれ、育った土壌が次の命を育むならば。私は、喜んで新世界の礎になる」


 それが、彼女の覚悟。

 不死王の決意なのだ。


「付き合ってもらうわよ、君にもね」


 彼女が手のひらを向ける。炎が集中し、それを放った!


「!」


 すぐさに反射のマントで防御する。それで熱線は歪曲し逸れるものの今度は炎を広げてくる。駆は再度マントを展開するがそのせいで視界が塞がってしまう。


「うわああ! なにするかー!」

「!?」


 マントをどける。そこでは千歌に掴まれたリトリィが手の中で暴れていた。


「!」


 駆はすぐに指輪に念じリトリィを戻そうとする。


「無駄よ」

「!?」


 が、戻らない。胴体を鷲掴みにされたまま手足をジタバタさせている。


「私は悪魔召喚師よ? 掴んだ悪魔なら召喚を妨害することくらい出来るわ」

「ふざけるなー! 放せ人でなしー!」

「彼女は人質よ。助けたかったら私の城に来ることね。とりあえず待ってはあげるけど、長くはないわよ」


 このままでは浚われる。急いで走り出す。

 だがそれよりも早く千歌は炎の翼を広げ熱を噴射する。空中に浮かび駆の手から逃げる。


「マスター! 来ちゃダメだかんね! 絶対だからね!」

「それじゃあね、駆君」


 飛び立つ彼女に最後まで手を伸ばす。だが指先すら届くことなく千歌はリトリィを掴んだまま消えていった。


 空を切った手を戻す。取り戻すことの出来なかった手を悔しさと共に握り込む。


 今からではどうあっても間に合わない。ガイグンで追いかけようにも林の中では無理だ。


「マスター」


 背後からヲーがそっと話しかけてくる。


「まずは城に戻りましょう。今後の対応はそこで」

「…………」


 ここで立ち尽くしていても始まらない。ヲーの言うとおりだ。


 駆は振り返り頷く。ガイグンを残して指輪に戻し彼の背に乗る。心中では焦りが渦を巻き暴れている。リトリィを助け出さなければならない。けれどそれでは千歌と対決しなければならない。救出と敵対の思いが何度もぶつかる。


 その迷いは城に着いてからも変わらなかった。黒い内装の会議室。サラも交えた会議は重苦しい空気に包まれみな一様に目線が低い。普段明るく場を盛り上げてくれる彼女がいないからか、殊更に場の雰囲気は暗かった。


「リトリィさんがさらわれるなんて」


 サラも例外ではなくリトリィの一報を聞いてから心配そうな表情をしている。


「これは、罠だ」

「そうヅラねぇ」


 ヲーの台詞に反対意見はない。誰の目から見ても明らかだ。リトリィを餌にして駆を釣ろうとしている。


「ですが、それでは彼女の対処は?」


 サラから質問される。仲間である彼女をこのままにしておくのか。それは罠から回避できる代わりに彼女を見殺しにするということ。

 その質問にはヲーは答えず、視線を駆に向けた。


「…………」


 駆は、両肘を机に突き、額を両手の甲に乗せていた。顔を完全に伏せたその姿勢では顔色を伺うことは出来ない。


 心労が駆を追いつめていく。大切な人と大切な悪魔、それを天秤にかけ振り下ろさなければならない。


 こんなにも過酷な選択があるだろうか。どちら選んだとしてもどちらかを失ってしまうことになる。結局は救えない。


 これはどちらかを救うという選択であり、どちらを救わないかという選択だ。

 胸が、重い。


 それでも駆は顔を上げ、みなへ向いた。その後顔を横に振る。


 リトリィを見捨てることはしない。彼女は大切な仲間だ。それは力ない動作ではあったが確かに意思を示した。


「では、不死王との対決を?」


 そこにサラが確認する。


「…………」


 それに、駆はすぐに答えられなかった。


 ここで顔を縦に振ることが出来ない。

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