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【WEB版】セブンスソード  作者: 奏 せいや
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では、これより会議を行う

 呆気に取られる。とはいえ城のことはなんとかなりそうだ。これも広義的には仲間のおかげ、ということになるだろう。駆の口元が少しだけ緩む。


 こんな惨状だけど味方はいる。そして自分はそんな彼らに支えられている。人間と悪魔に通じる絆。そんな現実離れした、けれど確かに目の前にあった繋がりによって前へと進んでいけるのだ。

 そんな彼らのためにも頑張りたい。駆は静かにそう思った。


「マスター」


 声をかけられ顔を向ける。そこにいたのはヲーだ。


「とりあえず事態の収拾につきましては目処が立ちましたので。あとは部下が動いてくれています。マスターもお疲れ様です。そして申し訳ありません。本来マスターの立場ですべきことではないのですが」


 ヲーの口調から仮面の下でも申し訳なさそうな表情をしているのが分かる。駆は顔を横に振った。


「ありがとうございます。マスターが救護活動に参加してくださったことはみなにも伝わっています。魔王直々に兵や民を救っていると。それを聞いて奮起した者も多くいます」


 なるほど、それはそうかもしれない。さきほどコロポックルたち他の悪魔が魔王城再建にやる気になっていたのはこれもあるかもしれない。


「本当に、助かりました」


 ヲーからの感謝の言葉。それは彼一人だけではない、ここにいるすべての悪魔の思いをかき集めたような重く、大きな響きがあった。


「それで早速で申し訳ないのですが」


 しかしそんな声色はすぐになくなる。代わりに現れるのは気迫のこもった口調だ。


「我々で会議を。今後の方針を決めたいと思います」


 駆は立ち上がった。まだ城内は惨劇の跡が大きいがここの主としてやるべきことがある。


 魔王本来としての仕事が。


 駆はヲーと共に会議室へと向かっていった。


 漆黒の大理石を思わせる床は光沢を放ち高い天井と縦長のテーブルには破損は見られない。聞けば外からの火炎攻撃は受けたが内部への侵攻はほとんどなかったとのこと。それで特に頑丈に作られていた城内中央部は無事だったようだ。とはいえあのまま燃えていれば全壊は免れなかっただろう。


 それでここ会議室は無事であり中にはすでにリトリィとポク、交渉相手のサラが座っていた。二人とも動き疲れたらしくぐったりとしている中サラは椅子の上で浮遊している。


「マスター!」


 扉が開く音で気づいたポクが勢いよく顔を上げる。


「手伝いありがとうだズラ。おかげで助かったズラ。マスターは大丈夫だズラ?」


 ポクからの心配に優しく頷きながら自分の席に座る。一つしかない上座に腰かけ正面を見る。サラは会釈しそれに応える。ヲーも自分の席へとついていった。みな会議ということで姿勢を正している。していないのはリトリィだけだ。テーブルに突っ伏し頬を押しつけている。


「リトリィ」

「つ~か~れ~た~」

「それはここにいるみなが同じだ」


 彼女を指摘するヲーだが駆は片手を上げそれを制した。もともと彼女はこんな感じた。それに堅苦しいと自分も困る。魔王とその配下という立場は忘れていつも通りにいきたい。


「まあ、マスターの意向ならば」

「あり~」


 とはいえだらけ過ぎだ。今日は特別だ。


「ガイグン殿が見られませんが彼は警護でしょうか」

「ああ、正面を見張ってもらっている。本人もそれでよいと言っていた」

「分かりました。そうでしょうね」


 ガイグンは番犬の代名詞と言えるケルベロスだ。いるべきは会議室よりは正門が合っている。


「では、これより会議を行う」


 ヲーのはっきりとした声が広がる。彼も疲労は溜まっているはずなのにその姿からは少しもそうとは思えない。


「今更ですが、わたくしは同席していてよろしかったのでしょうか?」

「構わない。むしろいてくれた方がいい。今後の予定を伝える手間も省けるのでね」

「分かりました」


 サラは本来会議に加わるような間柄ではないのだがこれも成り行きだ。

 会議が始まった。ヲーの発する雰囲気に緊張感が生まれる。とはいえだらけきった悪魔がまだ一名いるが。


「まず現状をみなで把握したい。リトリィ」

「えーとねえ」


 その一名が重そうに体を起こす。情報伝達は彼女の役割だ。その自覚はあるらしく振られた以上仕事はしっかりしている。


「城に残っていた警備兵の回収は完了。今は城の広場や使える部屋は全部使ってる。溢れた分は廊下や中庭で休んでもらってるけどね。働けるのは迷いの森に同行した分だけ。要は壊滅的ってこと」


 分かってはいたが改めて聞かされると胸が重くなる話だ。


「軍として機能するのはしばらくは無理そうだね、残念だけど。でも悪いことばかりじゃなくってさ、警備に志願する悪魔けっこういたんだよ? 中には逃げてきた悪魔もいたりしてさ。なんか涙ぐましかったよ」

「そうか。もともと難民としてやってきた者たちが戦うことを申し出るとは。心苦しいと共に感謝だな。軍を含め医療や城の復旧など役割の再編成は早急に行わなければならないな」

「ジジクル率いるコロポックル集団と一部の悪魔はすでに城の再建に取りかかってるみたいだよ。フンヌと連携して復旧させるってさ」

「ジジクルに任せておけば安心だズラ! あの悪魔は最高の職悪魔だズラ」

「では残りの悪魔で医療と警備を組むとしよう。悪魔手は依然として足りず厳しい状況には変わりないが、やるしかない。みなで協力して乗り越えよう」


 ヲーの台詞にポクと駆、リトリィも力強く頷いた。

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