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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
第四章 人類の果て
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ハードライト激闘

 グランに念じ重力を上げる。光とて重力の影響は受ける、それでハードライトの動きを縛りつつ、さらにエンデュラスで加速、ミリオットで強化した身体で前に出た。その手に握るのは破滅の魔剣。赤いオーラが帯のように伸びていく。


 ハードライトは不死身だ、半端な攻撃では傷つかないし躱される。仮に傷つけることが出来てもすぐに復元されて終わりだ。ハードライトで構成された肉体はそれだけで破格の性能だ。


 だがそれも肉体面での話。どれだけハードウェアが頑丈でもその中身が壊れれば意味がない。


 カリギュラの持つ寿命を直接奪う異能。それだけでなく体力や魔力も減らしていくカリギュラはまさにこうした強敵への切り札だ。


 俺は四本すべてのスパーダの能力を解放し突き進んだ。そしてハードライトにカリギュラを突き出した。


 ハードライトも負けじと光の壁を展開する。剣先がぶつかり阻まれるもミリオットで強化した一撃だ、さらにカリギュラのオーラは光の壁をも弱体化させていく。

 衝突を耐える。しかし次の瞬間光の壁は壊れカリギュラがハードライト本体に突き刺さった。直接赤いオーラを叩き込む。破滅の攻撃、肉体ではなくその魂を焼き尽くす!


「ぬ!」


 自身の異変を感じたか、この魔剣の持つ恐ろしさをくらいハードライトは一瞬で後退していった。カリギュラの範囲外、相当これを警戒している証だ。

 腕を切り落とされた時ですら微塵も焦りを見せなかったハードライトだがその雰囲気には慎重さが感じ取れる。


「なるほど、選ばれるだけはある」


 ダメージは入っている。だが致命傷には程遠い。対して俺の怪我は蓄積していく一方だ。さらに一瞬の隙を見せればやられかねない。


 ハードライトが剣を持ち上げる。来る! 亜光速を誇る超スピードに俺もエンデュラスで対抗しようとするも魔力の消耗が激しくついていけない。

 ハードライトの剣が、眼前に迫る。


(しまっ――)


 それを赤い刃が防いだ。


「なに?」


 驚愕するのはハードライト。俺は無言でその光景を見つめていた。


 俺とハードライトの間、そこに黒衣を纏った人物が立っている。黒のフードを被った後ろ姿には赤い光で作った剣が二本握られていた。


 魔卿騎士団の管理人? いや違う。二人は殺された。それにハードライトの一撃を防ぐなんて。

 この人も、かなり強い!


「貴様ッ」


 ハードライトはこの人物を知っているのか珍しく感情的になっている。


「死してなお邪魔をするか」

「あなたこそそこまでにしてもらおうか、ハードライト卿。今の私でもあなた一人なら戦える」


 この喋り方! 記憶にあった声と同じ。なら、この人って。

 そう思いながら見つめていると背中越しに話しかけてきた。


「どうやら記憶を失っているようだ。私が誰か分からないだろう」


 いつ戦いが始まってもおかしくない空気。ハードライトも黒衣の男も一切気を逸らさない中俺に語りかけていく。


「けれどその使命は覚えているはずだ。ならばいい、そのまま進むがいい」


 こんな絶望の未来の中で、俺の背中を押してくれた。


「君ならやれる、幸運を」


 その言葉の後二人の戦いが始まった。二人の姿が消える、直後響くのは空間で何度も轟く衝撃音。凄まじい風圧が高速で発生していきこの場を破壊していく。それは透明な破壊の嵐だった。


 けれどこれで道は開いた。胸の内に宿る新たな疑念。問題は増えていく一方だ。

 だがそれは今考えることじゃない。俺がすべきなのは過去へと戻ること。そのためにも!


 俺は再び走った。みんなが命を懸けて繋いでくれた未来へ行くために。


 そのまま走り続け俺は湊高校にたどり着いていた。校舎自体はけっこうしっかり残っている。かなりぼろくなって窓ガラスは全部割れ廃墟になっているが形は残っているんだから御の字だろう。


 俺は教室に行くため昇降口、校舎へと入っていく。


 校舎の中は静かだ。外から聞こえる爆発じみた音も遠い。そのまま必死に廊下を走り教室へ向かっていく。


「ハア! ハア!」


 息が荒い。体が重くて喉が痛い。


 走れ、走れ、走れ! もう、二度と止まらない。みんなの思いが溶けて一つになる。


 世界を変える。人類を救う。それだけじゃない。


 香織。この世界に君はいない。絶対に君を救うんだ。


 絶対に、諦めたりしない!


 廊下を走りついに自分の教室が見えてきた。勢いよく扉を開け中へと入る。

 その光景に、気を取られた。


『未来へようこそ、聖治』


 この教室だけカーテンで閉められ、中はまるで誕生日パーティのように飾り付けがされていた。丸めた紙をつなぎ合わせた鎖が天井や壁に繋がって、黒板には大きな文字で歓迎の言葉が書かれている。さらに星都や力也、日向ちゃんや此方の似顔絵まで描かれていた。保育園かここは。


「は、はは……」


 その光景に、さっきまであんなにも燃えていた気持ちが拍子抜けしていった。


「ははは」


 まったく、なんだよこれ。どうせ星都の指示なんだろうが、なんだこれ。おかしいだろ。けっこう危ない時代なんだよな? こんなことして暇だったんじゃないだろうな?


 ほんと。本当に、本当に、お前等ってやつは。


「バカ野郎が……!」


 なにが未来へようこそだよ。こんなの用意してるなら、みんな生きて直接言ってくれよ。そっちの方がなん百倍も嬉しいに決まってるだろうがッ。

 俺は溢れてきた涙を拭き教室の中へと歩いていった。ぼろぼろの机たちは周囲に寄せられ、中央だけが空けられている。


 そこには毛布が掛けられたふくらみがあった。俺は近づき、その毛布をはぎ取る。


 黄色の剣。俺の魂から分かたれた半身である、俺のスパーダ。シンクロス。


 その柄を掴み、引き抜いた。


 これでスパーダは五本。シンクロスの能力が使える。過去に戻れる。

 この時代では悪魔に襲われ人類は敗北した。生きているだけで恐怖を味わう世界だ。


 そんな世界にしてはならない。


 なにより、みんなに会いたい。また一緒に過ごして、笑える世界にするんだ。

 そのために俺は過去に戻る。そしてセブンスソードを終わらせる。

 みんなとの約束を果たすために。


「発動しろ、シンクロス!」


 俺はシンクロスを持ち上げた。


 思いと共振するようにシンクロスが光を発する。世界がうねり、形を変える。時間が変わり空間も変わる。世界が、変わる。俺は再びセブンスソードに挑む。


 これからが本当の戦いだ。

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