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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
348/496

それはまさに殺戮王の象徴にして本質

 場違いな拍手にヲーが睨みを利かせた声を掛ける。


 拍手を送る者。それはシュリーゼだった。灰が僅かに漂う道路に立ち静かに拍手を送っている。駆は俯いていた顔をなんとか持ち上げる。頬には涙が通った跡がある。


「デスザル。それはまさに殺戮王の象徴にして本質。よってそれを使えば使うほどあなたは殺戮王として完成していきます。より殺戮王へと近づいていくのです。具体的には魂の性質がこちら側へと変化していくのですよ」


 魂の性質の変化。


「魔人融合。四体の悪魔のクイック・サモン。そして即死技の使用。それだけでかなり魂の容量を悪魔に持っていかれているはず。自身の精神的な変化、心当たりがあるのでは?」


 心当たりなら、ある。アスタロト戦直後の自分は間違いなく殺戮王寄りだった。もしかしたら戻ってこれなかったかもしれない。それほど反動が大きかった。


「それでもこうして人間性を残していることは驚愕に値しますが、それでこその殺戮王の器なのでしょう。ですがそれもここまで。あなたは新生する。本当の自分を解放し真の殺戮王になるのです。そのためにも、さらなる殺しを。そうすることであなたは殺戮王へとなれる」


 駆はシュリーゼを睨みながら立ち上がる。命を、ただ楽しいという理由だけで殺す。そんな自分には決してならない。彼女の思い通りにはならない。敵意をむき出しに彼女の誘いを拒絶する。


「そうですか。ですが本能と理性は別のもの。あなたがどう思おうがいつまでも偽ることは出来ません。その時は必ずきます」


 駆は否定するが彼女も退かない。殺戮王になると断言してくる。


「あなたは殺戮王になるべくして生まれた。いえ、生まれた時からそうだったのです。それが白鳥をアヒルとして育てられその違いに苦しんでいる。ではこうしましょう」


 彼女も駆も退く気はない。どうしようというのか。


「あなたの考えは分かりました。それが必要なことだとしても意思と異なることをしろというのは難しい話。ならば取引としましょう。あなたが狩った悪魔や人間の魂、それと引き換えにあなたの指輪を強化して差し上げます」


 指輪とはもちろんクイック・サモンの契約の証でもある左手にはめられた指輪だ。リュシーゼも自身の左手を指で叩く。


「あなたが使用しているクイック・サモン。現状契約している悪魔を瞬時に召喚、帰還させることしか出来ません。その機能を拡張しましょう。あなたの戦いに大いに役に立つはずです」


 駆の戦いはまだ終わっていない。クイック・サモンの強化は確かに有益だ。


 だが戦力アップのためだとしてもそれで誰かを殺すなど、殺戮王に近づくと分かっているのにデスザルを使うのでは意味がない。そんなことを止めるために戦うのに自身がしてどうするのか。


「迷っているようですね」


 駆の心を見透かしたようなシュリーゼの声。


「いいでしょう。あなたは現在二回デスザルを使用しています。それで散っていった者の魂、それを初回の分といたしましょう。知らなければ無視も出来るでしょうが使い勝手を知れば気に入るはずです」


 シュリーゼが近づき駆の正面で立ち止まる。


 こうして対峙してみると彼女は背が高い。駆の目線が若干上を向く。


「手を」


 彼女が手を差し出す。ここに手を重ねろということだが駆は出さない。なにをされるのか分からないしデスザルを使ったことを報酬としてもらうことにも抵抗がある。


「マスター。この女の言うとおりにするのは癪かもしれませんが今後のこともあります。拾えるものがあるなら拾っておいた方が」


 戦いはまだ終わったわけではない。今は少しでも力が欲しい時だ。


 ヲーの助言に突き動かされて駆はしぶしぶ手を出す。


 シュリーゼは両手で駆の手を挟むように置く。すると光が駆の左手全体を包んでいった。光は消えシュリーゼが手を引く。


 駆は左手を見回すが変わったところは見られない。


「あなたの指輪は悪魔の召喚と帰還しか出来ませんでした。そこへ改良したのがシャッフルです」


 シュリーゼの説明に向き直る。


「シャッフルでは仲間同士の位置を入れ替えることができます。実際にしてみるのがいいでしょう。そう念じればできるはずです」


 駆は今一度自分の指輪を見つめたあと左右に立っているヲーとポクに目配せする。


「オイラは大丈夫だズラ」

「私も」


 二体とも協力してくれる。駆は頷いた。


 位置を入れ替えるよう念じてみる。すると二人の姿が消え瞬時に入れ替わった。


「おお!」

「ん」


 距離自体はそんなに移動したわけではないが二体が僅かに驚いている。


「びっくりしたズラ」

「いきなり立っている場所が変わるというのは、慣れがいるな」

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