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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
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これで勝った気なの?

「ぐうう!」


 その熱量に歯をかみしめる。ファイならばいくら受けても焦げることのなかった体毛が黒く変色している。


 それでも負けず千歌を追いかける、だが彼女は後退していき地上では部下たちが迫ってくる。

 ついに本隊と激突する。まるで濁流に飲み込まれる岩だ。迫る悪魔たちに周りを囲まれながらも退かず戦い続ける。上空では千歌とリトリィの空中戦だ。互いに飛び回りリトリィが千歌を攪乱している。千歌もリトリィのデュークが嫌そうだが熱線は広範囲攻撃ができずリトリィは必死に避けながらアイやデュークで対抗している。だが千歌も飛び回っているためデュークの狙いが付けられない。


 ポクは空間から発火性の液体が入った瓶を次々取り出しては投げつけていく。駆はヲーと背中合わせで立った。ポクからもらった力の霊薬で全身を赤くしながら迫り来る悪魔を殴り倒し、時にはマントで吹き飛ばしていく。ヲーも槍を回し切り倒していく。


「ちょっと~、こっち早くしてよ~!」


 リトリィが助けを求めている。千歌を相手にいつまでも一体で引きつけるのは無理だ。


 駆は上空を見る。前方では千歌とリトリィが熾烈な追いかけっこをしている。


 駆はガイグンを見上げた。指を千歌のいる方向に向ける。一つの頭が駆に頷く。


 駆はヲーに目配せしヲーも意図を察して頷いた。


 駆はガイグンに飛び乗る。駆を背に乗せたガイグンは馬のように前足を浮かせたあと敵の波に突撃していく。自身よりも小さな悪魔たちを踏み倒しながら前進していく。当然敵からの攻撃もあるが気にしない。そしてガイグンはリトリィと千歌の下を通り過ぎていった。


「リトリィ!」


 ヲーが声を掛ける。それが合図、リトリィはヲーにエアの付与を与える。突風がヲーの全身を覆い千歌めがけ飛び立った!


「馬鹿が!」


 正面からの特攻。だがそんな単純な突撃が通用するはずがなく千歌の熱線がヲーを捕らえる。


 瞬間、駆はクイック・サモンを発動した!


「なに?」


 ヲーの姿が消える。次に現れたのは駆のいる位置、すなわち千歌の背後だ。


「もらった!」


 ヲーが再度飛ぶ。上空を浮かぶ炎の女王へ向かい、槍を突きつけた。


 千歌が振り返る。咄嗟に顔をズラすが矛先は頬を切り裂いた。


「キ、さま」


 千歌の片手がヲーの顔面を鷲掴みにした。熱が集中していきヲーの頭を溶かそうとする。


 すかさず駆のクイック・サモンが光る。緊急回避で千歌の手から逃れると隣に再召喚する。


 ガイグンは不死王軍の集団を走り抜け振り返った。駆はリトリィとポクもクイック・サモンで自分の位置に戻す。


 千歌は地面に降り立ち頬に手を当てていた。そこには血が流れる傷が確かにありヲーの攻撃が命中したことを物語っている。


 決まった。体を瞬時に治す再生力があっても解毒能力まではない。


「ふ、ふふふ」


 そんな中、千歌は笑っていた。


「うそよね?」


 不気味な笑いにリトリィの表情が引きつる。


「分からないわね」


 千歌が駆に振り返る。不敵な笑みを浮かべる千歌は毒が聞いているのか意図的なのかそのままの表情で駆を見る。


 本来ならピンチなはずなのにその余裕。嫌な予感が走る。


 さきほどは腕だった。だから取っても生きれるがさすがに頭を取れば死ぬ。死んでしまえば再生もできない。


 しかし千歌に不安はない。あるのは死をどこか遠くに置き去りにした微笑のみ。


「これで勝った気なの?」


 そう言うとおもむろに両手を持ち上げ頭を掴んだ。


「まさか」


 力を入れる。千歌は自分で頭を引きちぎったのだ。


「げえええ!」


 頭が右手の上に置かれている。それは炎となって消えていき首からは勢いよく炎が吹き上げる。火の柱が立ち上がり、その中から千歌の新たな頭が生まれる。勢いはなくなると上昇していた彼女の黒い髪がばさりと下がった。


「ふっ」


 そこには新生した不死王千歌の姿。無敵の笑みが駆たちを見つめていた。


「化け物が」


 そのあまりの不死身っぷりにヲーがつぶやく。


「悪魔からそう言われるとは面白いわね。私もくるところまできたのかしら」


 普通悪魔の方が化け物だがその悪魔から言われるのだから皮肉だ。それか人は悪魔以上の悪魔になれるものなのか。


 ヲーからの評価は気にしていない。それとは別になにかを思い出す。


「そういえば、駆君にはお礼を言い忘れていたわ。魔王アスタロトは君が倒してくれたんでしょう? 実は私も一度だけ戦ったことがあるんだけどね、相性が悪くて逃げ出した経緯があるのよ。防壁は飛び越えられたけど城の中はそうもいかないし」


 そんなことがあったのか。なかなかに衝撃的な話だ。あの悪臭は不死身を貫通するのか。思い返せば改めてすごい悪魔だったのだと痛感する。


「でもそのアスタロトももういない」

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