あの時はごめん。それと、ありがと
警備隊も懸命に押し戻そうとしているが彼らも必死だ。命辛々逃げてきて慣れない魔界だ、なりふり構わずにもなる。
そこに駆が現れたことで喧噪はさらに激しくなる。駆に向け助けを求める言葉が多く投げかけられ耳が痛いくらいだ。
「マスター」
「魔王様!」
ガイグンと警備隊が振り返る。駆は目礼で応え視線を彼らに向ける。
「見ての通りだ。不死王軍の侵攻によって住む場所を失った者たちが押し寄せている。他に場所がないためかなかなか退いてくれん」
「だが我らには関係ないことだ」
「でも可哀想だぞ!」
ガイグンの言うとおりだ。関係ないが見捨てることも出来ない。
どうしたものか。今も懇願と強要じみた要求が大合唱で向けられている。
そんな中リトリィは難民たちを見渡している。
「リトリィ!?」
そこへ声がかけられた。見れば紫の髪をしたピクシーが彼女を見つめている。
「メトルじゃん!」
彼女は駆も知っている。リンボでリトリィを仲間外れにしていたピクシーだ。
「よかった、無事だったんだ。リンボで襲撃受けたって聞いたから心配したじゃん」
「リトリィ~、みんなが、みんなが~」
「そんな」
リトリィは辺りを見渡す。メトル以外にピクシーは数体ほどしかいない。駆の記憶でももっといたはずだ。
「不死王軍ってやつらが突然やってきて、服従するか死ねって言ってきたんだよ? そんなのどっちも無理じゃん! だから嫌だっていったら連中……!」
「メトル……」
メトルは泣き出した。リトリィはそんな彼女を抱きしめる。
「ポク! ポクだオラ!」
「みんな!」
難民の中にはポクの知り合いであるコロポックルもおりポクに声を掛けている。背丈は小人だが白く長い髭をしたお年寄りのコロポックルだ。その背後には大勢のコロポックルが並んでいる。
「みんな無事だったズラか!?」
「なんとかオラ。だけど村はめちゃくちゃだオラ」
「それは辛いズラ……」
ポクの故郷も襲われたようだ。居場所を失い魔界に来るとは本当にひどい状況だったようだ。
「オマイはどうなんだ? というより、すでに魔王城にいるということは」
「そうだズラ! オイラのマスターは魔王だズラ」
「そうか、オマイ出世したんだオラ。オラたちの誇りオラ」
「そう言われると照れるズラけど」
ポクは照れ隠しに帽子で顔を隠しているが喜んでいる場合ではない。すぐに仲間たちを心配する。それはリトリィの仲間たちも同じでリトリィに頼み込んでいる。
「願いだよリトリィ。以前のことは謝るからさ、ほんっとにごめん! だからお城に入れてくれない? ここしか頼るところがないんだよ。お願い!」
「うーん」
リトリィは悩んでいる。自分を置いて逃げ出したピクシーたち。やろうと思えばここで以前の仕返しとばかりに追い返すこともできる。だが彼女はそんな顔はしていない。
「ねえマスター、なんとかしてくれない?」
リトリィは振り返り仲間の願いを伝えてくる。いろいろあったがリトリィからすれば彼女たちも仲間なんだ。
「ポク、お前からもなんとか頼んでくれくれんかオラ。村をなくしてここしかないんだオラ」
「マスター、オイラからも頼むズラ」
ポクも仲間たちのため頼み込む。
駆もこのままにはしておけない。二体に頷いた。それを見ていたヲーも頷く。
「どの道収拾をつけなくてはな。しかし全員を城に入れるのは無理がある。怪我をしている者を優先していれ他は近くの町に向かってもらおう。オートンに連絡を。その間に仮設テントを設け難民キャンプ地とする」
ヲーが近くの部下に指示を出す。とりあえずの方針として難民は受け入れる。だが問題はその方法だ。とりあえず今できることをしていくしかない。
「ですが町で一時預かるとしても準備や費用が」
「費用はこちらで持つ。マスター、よろしいか?」
駆は頷く。余裕があるとは言えない状況だが迷いはない。
それからは怪我をしている者は城へ、それ以外は警備兵を何体か付け町へ戻ってもらうことにする。
「あんた、あの時の人間だよね?」
すると駆の前にメトルがやってくる。それだけじゃない、他の悪魔たちも一緒だ。
「あの時はごめん。それと、ありがと」
駆は頷いた。今ではもう気にしていないしそう言ってくれるならそれでいい。
「魔王様、オイラたちコロポックル一同感謝するオラ」




