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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
325/496

頼む。なにかあればマスターの指輪で戻す

「頼む、見逃してくれ。俺からも謝る、すまなかった!」


 このままでは目の前で兄は駆にさんざん弄ばれた後に殺される。それこそ腕を一本ずつむしり取られ、次に足を抜かれ、最後に頭を取られ、胴体だけの骸にされる。それは処刑よりもひどい拷問だ。


「頼む旦那、この通りだ。お詫びってわけじゃないんだが酒を持ってきたんだ、ブルーインフェルノ。好きだっただろ? こいつをすぐ作ってやる、だから、な? 頼むよ!」


 必死に頼み込む。言い訳などではなく本当にこうするしか他にない。


 無理か、そう思いが過ぎる。だが駆はしぶしぶ引いてくれた。最後まで蜘蛛男を挑発的な目で見ながら階段へと戻っていく。


「お、おお」


 頼み込んでおいて変な話だが引いてくれたのは意外だった。


「旦那、本当に気に入ってくれてたんだな」


 床に倒れている蜘蛛男は他の仲間が城の外へと連れ出していった。駆の一方的な暴力に戦意を削がれ他の仲間たちも城から出て行く。


 駆は階段に座ると店主を鋭い目で見つめる。


「おお、酒だな! ちょっと待っててくれ道具を出してくる!」


 そう言って店主は一端この場からいなくなるとすぐに道具を持って戻ってきた。その場でカクテルを作りグラスに注ぐ。


「ほらよ、ブルーインフェルノ。再会と魔王就任を祝して」


 手渡されるグラスを受け取り駆はとりあえず一口。まるで喫煙者がようやく一服できたかのような開放感に表情を落ち着かせている。


 そんな駆の横にリトリィは浮遊する。


「ふーん。なんか変なの。でもいっか。ようやくマスターも魔界に馴染んできたって感じ?」


 駆の変化をおかしく思うもすぐにどうでもいいやと気にしていないようだ。にやついた笑みで聞くが駆は酒を飲んで返事をしない。


「無口は相変わらずか。いいわよ、その分私が喋るから」


 つまらないなと両手を上げやれやれと顔を振る。


 とりあえず一波乱あったが事態は収まった。ヲーは部下に振り返る。


「話が途切れたな。本題に戻そう」


 それからここにいる全員に聞こえるよう声を張り上げた。


「ここを支配していた魔王アスタロトは私たち、いや、我らがマスター駆によって討伐された。魔王という立場でありながらこの国を放置してきた前魔王に取って変わりこれからは駆が魔王となってこの国を治める! 新たな魔王の誕生だ!」


 ヲーが宣言する。この場にいるみなは声を上げ魔王就任を歓迎した。リトリィやポクも。そんな様をヲーとガイグンは静観の眼差しで心からエールを送る。


 その歓声を耳に駆は優雅に酒の入ったグラスを遊ばせていた。


「それで今後の方針だが、まずはこの国の防衛システムの見直しだな。魔王になっても滅びては意味がない」

「はい。現状この国は無防備です。今までの防衛システムは使えませんし」

「まったくだ」


 現行のシステムは個人の特性に依存しておりそれがなければただのがらくただ。案山子にもならない。


「まずは国境付近に部隊をいくつか派遣してくれ。正式な取り決めは今後煮詰めていくとしてとりあえずの編成はリザード族が務めよう」

「了解です」


 村を守るから国を守るに変わっただけだ。対象は違えど内容は変わらない。


「次にここの守りも重要だ、さきほどのような輩が現れないとも限らん。ガイグン」

「承知している。本分だ」

「うむ」


 魔王城の守り、用は門番だ。となれば適任は一体しかいない。


「頼む。なにかあればマスターの指輪で戻す」

「了解だ」

「ゆっくり昼寝とはいきそうにないな」

「がんばるぞ!」


 そう言ってガイグンは小走りで出て行った。すぐに門の前で耳を立て目を光らせていることだろう。


「さて、こうしてこの国を治めることになったのはいいが、我らの目的は不死王チカ、そして未来王アキカズの阻止だ。これ以上の暴虐を見過ごすわけにはいかない。そのためにはそれなりの備えが必要だ。ポク、物資の調達や手配を頼めるか?」

「オイラがズラか!?」

「君は材料の制作に長けている。なにがどれだけ必要なのか、おそらくここにいる誰よりも詳しい」

「そう言われればそうズラけど。でも自信ないズラよ。それにオイラ、その、下級の悪魔だし」

「それは関係ないだろう。ここにいる全員階級で選ばれたわけじゃない。期待しているよ、備品管理大臣」

「ひいい、お、オイラが大臣……!」


 任される大役に顔面がひきつっている。


「ん、んん」


 そこでリトリィがなにやらのどを鳴らしている。次にネクタイを締めるジェスチャーまでしてご機嫌の表情だ。


「リトリィ」

「はい、ここに」


 意気揚々とヲーに近づく。期待感は上がりまくりでストップ高だ。

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