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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
295/496

当然だな、人間など見るのも初めてな悪魔がほとんどだ

 そう言うリトリィにみなも同意し指輪に入っていく。四つの光となって指輪に収まり駆は歩き出した。


 登場した丘から降りて平原を渡り町の入り口へと立つ。悪魔の町が駆を出迎える。


 そこは中世欧州の城下街のような場所だった。石垣の地面の上に一階立て、もしくは二階建ての建物が並んでいる。材質は木材か石材で建築されその通りを様々な悪魔が往来していた。ミノタウロスや半魚人、両腕が鳥の羽になっているハーピィなど人型が多いが中にはゼリー状の半透明の不定形な悪魔がナメクジのように進んでいる。


 そんな場所を人間があるけば当然注目される。町に入ったことで悪魔たちが駆を見て慌てるなり驚いている。無理もない、立場が逆なら人間も間違いなく注目する。


『みんな見てるね』

『当然だな、人間など見るのも初めてな悪魔がほとんどだ。リリンですら見かけることなどほとんどない。イヴンなどなおさらだ』

『それだけ珍しい存在ということだ』

『僕だって見る!』

『リリンって確か女性しかいないんだっけ?』

『なるほど、注目されるわけだ』

『マスターは人気者だズラ!』

『人気とはまた違った気がするがな』


 指輪からがやがやと話し声が聞こえてくる。姿が見えなくても愉快な仲間たちだ。


『とりあえず話を聞くなら悪魔が集まる場所に行くでしょ』

『というとなんだズラ?』

『そりゃあ酒場でしょ! 情報収集の鉄板よ!』


 ということらしいので駆は足を動かした。RPGの鉄板がここでも通じるとは。


『こっちこっち、いや違う、そこを右。その向こう二つ目!』


 うるさいナビに従い駆は店の前にたどり着く。扉越しでも中の喧噪が聞こえてくるあたり繁盛しているようだ。木製の店で看板がぶら下がっているが悪魔の文字らしく読み取ることは出来ない。


 それで入ろうとするのだがそこでふと思いとどまる。当然だが駆はまだ未成年だ。魔界の酒場どころか地上の居酒屋にだって入ったことがない。入って大丈夫なのだろうか。


『魔界じゃ誰でもお酒飲めるから入っちゃって大丈夫よ。人間は想定してないだろうけど』


 そういうものかと納得して止まっていた手を動かす。どの道このまま固まっていても始まらない。


 両開きの扉を開け中へと入る。店内では陽気な曲が流れ少ない照明の下では立ち飲み用のテーブル席でジョッキを片手に酒を飲むミノタウロスや緑色の肌をした小柄の人型であるゴブリンが盛り上がっている。壁際にある影になっているソファには赤い肌をした大男が両脇に半透明の女性を抱えている。二人は幽霊なのか実体はなく服の袖や体が若干浮いている。中央の赤肌のオーガは上機嫌で談笑し店の奥にはカウンターがあり蜘蛛の男が八本の足を使いカクテルを作っていた。まるでスター・ウォーズに出てくる酒場の悪魔バージョンだ。


 店内は活気で溢れている。地上で例えるなら居酒屋とバーを足して割ったような雰囲気だ。


 だが店内に溢れていた会話は駆が入ったことでぴたりと止まった。


 全員が駆を見つめている。あれほどあった会話が嘘だったように静まり返っていた。


 剣呑な空気が流れる。よくない、それが肌で分かる。


 すると店の奥で座っていたオーガ立ち上がり近づいてきた。


 大きい。ヲーよりもでかい。短パンに半袖のシャツを羽織り前は空いているため盛り上がった胸筋と割れた腹筋が見える。下顎からは牙が二本生えセミロングの黒髪からきつい双眸が駆を見下ろしている。


「人間がなぜここにいる?」


 開口一番友好的ではないと分かる。口調や態度からして会えて嬉しいですという解釈は無理がありそうだ。


「おい、なんとか言ったらどうだ?」


 顔を近づける。駆は顔を逸らすことなく見上げ続ける。


「ここは人間なんかが来る場所じゃねえんだよ。それとも襲いにでも来たか。いいぜ、上等じゃねえか。こい。かかってこいよおら」


 オーガが挑発してくる。それに合わせ周りの客も歓声を上げる。オーガも両腕を上げ観客に応えている。


 どう見てもアウェイだ。まともに情報収集できる状況じゃない。とはいえじっとしていても収拾がつくとも思えない。


 駆は内心で顔を横に振ると左手を持ち上げる。


 ここでリトリィを出しても場をいたずらに煽るだけだしポクでは迫力に欠けるか。とはいえガイウンでは恐喝に捉えかねない。


 駆は念じる。中指にある緑色の指輪が輝いた。


「そこまでにしていただきたい」


 ヲーが駆の横に立つ。気丈な態度でオーガを見つめる。高圧的ではないが物怖じもしない精悍な振る舞いは適任だ。


「あ? なんだお前は」


 当然現れたヲーにオーガが睨みを利かせる。


「てめえ、この人間と契約したな。人間なんかと手なんか組みやがって」

「事情があってしていることだ。あなたには関係ない」

「あ?」

「こちらに敵対する意図はない。聞きたいことがあって寄ったまでだ。用を済ませればすぐに去る。絡むのは止めてもらおうか」

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