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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
294/496

悪魔召喚師の第一歩

 悪魔召喚師の第一歩。それは悪魔との出会いだった。地上と魔界の境界線、リンボ。それは駆にとって悪魔との出会いの場所だ。そこで多くの仲間を得た。


 そして悪魔召喚師としての次の一歩が始まる。舞台はリンボから悪魔の本場、魔界に入る。悪魔の本拠地にて秋和や千歌のいる場所だ。今まではいわば練習のようなもの。


 これから本番が始まるのだ。


 魔界の入り口を通った駆の視界が晴れていく。光は力を弱め別の景色が顔を出す。


 駆は細めていた目を大きく見開いた。


 リンボよりもなお赤味を増した空。眼下には町が確認できその向こうには森林が広がっている。森の中には動いている丘のようなものがありよく見るとそれは生き物なのだと気づく。かなり大きいものもいるようだ。さらに遠くには火山らしき山脈が並び今もマグマを吐き出している。


 駆は見晴らしのいい丘に立っている。初めて見る魔界の景色にしばし見入る。この光景をゆっくりと咀嚼するように飲み込むまで時間が掛かった。景色自体は現実でもやや見慣れたものだ。近くに見える町も一軒家が多く並び森も赤色をしているわけでもない緑色だ。明確に違うのは赤い空くらいでそれ以外は地上にもあてはまるものはある。


 色彩を変えた世界。そう表現するのがこの場では適切に思える。


 だが見る印象と肌で感じる印象は別だ。同じ路地裏でも大都市とスラム街では雰囲気が違う。ここはどこか空気が重く息苦しい、いるだけで気分が沈んでいくような雰囲気があった。


 ここが魔界。駆はようやく第一印象を飲み下す。とはいえいつまでも見ているわけにはいかずこれからのことを考えなければならない。


「へえー、ここが魔界かあ」

「ついに来れたズラ~」


 そう思う駆だが隣ではリトリィとポクがなにやら感動している。悪魔なのに魔界を知らないというのも不思議な感じだ。信者にとっての聖地みたいなものだろうか。


「空あっか! それにこのどんよりとした空気感!」

「いるだけで恐怖を感じるすごい場所だズラ!」


 そこに感動するとは、やはり悪魔とは感性が違うようだ。


「二人とも、初めての魔界に浮かれる気持ちは分かるが我々には目的がある」

「まったく、先が思いやられるな」

「まったく」

「観光ではないのだぞ!」

「わ、分かってるわよそんなこと! ちょっと喜んじゃっただけでしょ、最初だけよ最初だけ」

「なにをするにしてもまずは情報だな。幸い近くに町がある。そこで悪魔召喚師の動向や居場所を聞くのがいいだろう」


 ヲーの意見には賛成だ。駆はヲーに頷く。


「でもさでもさ、マスターは人間なわけじゃん? ただでさえ悪魔には人間嫌いが多いのに大丈夫?」


 そこでリトリィから懸念が飛ぶ。駆としてもそこは少々の不安があった。知らない国で情報収集するのも度胸がいるのにここは地球ですらないのだ。


「マスターはハイロンではない。リリンと同じ種族だ。とはいえ下に見る者が多いのは事実だがな」

「ケルベロスみたいに?」

「前の話だ」

「掘り返すな」

「今は違う!」

「はいはい」


 人間の自分が悪魔の町へ赴くこと。危険がないとは言えない。とはいえここで見学など時間の浪費だ。


 やるしかない。


 駆はみなに見えるよう、親指で自身を差し、次に人差し指を町に向ける。


「ま、ここでじっとしてても始まらないしね。その時はその時、出たとこ勝負でしょ」

「やれやれ、気楽なピクシーだ。とはいえ今回は正論だな。ガイグン、異論はあるか?」

「ふん、そういうことならそれでいくしかあるまい。危険がないとは言えないが、この俺を見てなお絡む輩がいるならの話だ」

「た、頼りになる発言だズラ~」

「ケロちゃんかっこいい~」

「誰がケロちゃんだ! せめて名前で呼べ!」

「いいじゃん、こっちの方がかわいいもん」

「かわいさなどいらん!」

「えー、いいと思ったんだけどな~」

「ケルベロスに軽口を吐くピクシー、か。愉快な仲間になってきたな」

「オイラは自分の居場所がなくなりそうでちょっと心配だズラ……」

「そんなことはない、ポクの援護は毎回頼りになる。次も頼んだぞ」

「がんばるズラ!」


 話はまとまった。まずは町で話を聞きに行こう。とはいえこのままではさすがに目立つか。駆はピンとこないが下級悪魔と中級悪魔、さらに上級悪魔の集まりなど魔界ではかなり異様なはずだ。


「とりあえず私たちは指輪で待機してようか。こうして出てるとマスターにも負担掛かるみたいだし。外の様子は中からでも分かるしね」

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