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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
285/496

そうはいかん! 今の戦士長はカウだ、あなたではない!

 改めてビルの周辺を見てみるが抜け道のようなものはなさそうだ。警備の目を掻いくぐり侵入するのは難しそうだ。


「駆」


 そこでヲーが話しかけてきた。初めて名前で呼ばれた。


「隠れて入るのは不可能だろう。このまま正面から突破するしかない。もともとそうするつもりだった」

「でもそれじゃ見つかっちゃうよ?」

「数は多いが他のリザードに後れは取らん。他の悪魔たちも強制的にさせられている連中がほとんどだ。こちらから攻めなければ積極的に手出ししてはこないだろう」

「なるほどだズラ」


 なかなかの分析だ。


「さすが戦士長」

「元だがな」


 それでも心強い。これだけの相手を一人で戦えるだけの自信はありがたい。


 駆は頷いた。それで一斉に物陰から飛び出す。


 戦闘開始だ。


「侵入者だ!」


 彼らも駆たちに気づく。リザード達が駆けつけ槍を構えてきた。


「カウに会いに来た。道を開けてもらおうか」

「そうはいかん! 今の戦士長はカウだ、あなたではない!」

「では押し通るまで!」


 カウも槍を構える。交渉は不可能、行くしかない。


「マスター、受け取るズラ!」


 ポクから赤い液体が入った容器を受け取る。それを頭から被った。液体は揮発し赤いオーラとなって全身を包む。これは長くは続かない、すぐに終わらせる。


 駆は走った。ヲーと共に戦場を駆ける。


「どけどれお前ら、私たちのお通りじゃあ!」


 リトリィの大声が響き駆は前にいる悪魔を殴りつける。強化された駆の攻撃に鎧をつけたリザードが吹き飛んでいく。


「おのれ人間が!」


 それを見た他のリザードたちが奮起する。ポクの霊薬でバフが掛かっているとはいえ同時に槍を突かれればどうしようもない。


「デューク!」


 その攻撃をリトリィが妨害する。目隠しの魔法で視界を封じられたリザートたちが混乱している。その隙に駆は攻撃していく。


 駆をアタッカーとしてポクの補助とリトリィの妨害がうまく連携できている。数は多いがヲーの言った通り駆たちに立ち塞がってくるのはリザードだけでそれ以外は軽く攻撃しただけですぐに逃げ出していく。


 自分たちはなんとかなっている。それでヲーに振り返った。彼は大丈夫だろうか。


 リザードの警備兵は駆だけでなくヲーにも向かっている。何本もの槍がヲーに突き立てられる。明らかに不利だ。


 だが、ヲーはすべての突きを防いでいた。自身の槍で払い、もしくは回避していく。その巨体からは想像もできないような跳躍で宙を飛ぶと槍を振り回し敵をなぎ倒していく。槍で相手の足を払い転倒したところを叩き気絶させ、背後から攻めてきたリザードの攻撃を屈んでかわすと尻尾で相手の足を掴み宙づりにし胴体に槍を打ち付ける。その後前後左右から槍が突かれるのを頭上高く跳んで回避すると四本の槍の交わりに着地する。槍を回し四人を倒していた。


 強い。同じリザードでもその実力はまったく違う。戦士長に選ばれるだけのことはある。


「気を抜くな、警備は中にもいるぞ!」


 駆は頷く。外の警備を突破しビルの中へと入っていく。中は荒れ果てそこにもリザードたちが立ち塞がっている。だが今の駆にはポクの補助だけでなくヲーもそばにいる。


 駆はヲーと一緒にリザードを倒していく。廊下を走り階段を駆け上がる。駆とヲーが走った後にはリザード兵たちが倒れている。


 まさに無双。相手も武装している戦士であり弱くはないのだが二人の進撃を止められない。


 そうして一行は屋上にたどり着き扉を開けた。紅の空の下、ビル屋上にはリザード兵たちとその中央にカウがいた。他のリザートたちとは異なり黒いマントを付け豪奢な槍を携えている。


 屋上に現れた駆やヲーたちを前にしてリザートたちが槍を向ける。扇状に囲まれ駆とリトリィは警戒しポクは怯える中ヲーだけは真っ直ぐとカウだけを見つめている。


 カウが振り返る。黒いマントが揺れ彼の視線がヲーをはっきりと捉える。


「それほどまでに俺の邪魔をしようというのか」


 カウが見せる顔色は怒りとも悲しみとも言えない混濁としたものだ。かつての仲間、それが敵としてここに現れた。そのことに彼も感じ入るものがある。


「それだけでなく、よりにもよって人間と手を組むのか」


 静かな怒り。そうした表現がぴったりと来る。緑色の肌でも感情は変わらない。


「お前こそ、自分の行いが一族を危険に冒しているのが分からないか? 復讐では仲間は救えない」


 そう言ってヲーが前に出る。駆は止めようとするがヲーは構わず進んでいく。


「失ったものは戻ってこない」

「お前になにが分かる!?」


 カウも前に出る。両者は対峙し視線と視線をぶつけ合う。


「復讐なんかじゃない、正義だ! 奪われたものを取り戻すために俺たちは戦っているんだ! 故郷を、家族を、仲間を! やつらになにもせぬまま終われるものか!」

「だが私たちが戦ったところでやつらには勝てん」

「だから仲間を増やしているんだろう!」

「無理矢理か? それが仲間か!? お前がしているのは正義を言い訳にした復讐だ!」


 互いに激しく言葉を投げ交わす。しかし思いまでは伝わらない。


「どうあっても協力する気はないんだな」

「そうだな。……残念だ」

「ああ……残念だよ」

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