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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
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それならすぐ行った方がいいズラ。彼ものすごい速いズラよ!

 それは彼らと同じリザードだった。ローブを着ておりその下には彼らと同じく鎧を着ている。緑の肌と尻尾から彼がリザードであるのは分かるが、彼らと違うのは槍の形状が違う点。彼の持つ槍は他とは違い装飾が凝っており特別な感じある。さらに彼は鉄製の仮面を付けており顔を隠していた。細長い穴から彼の両目だけが見える。


「貴様」


 マントの男がつぶやく。仮面の男も彼を見つめ返していた。


「止めろカウ。無闇に戦ってなんになる」

「知り合い?」


 状況が掴めずリトリィとポクは二人を交互に見つめる。


「無闇だと?」


 カウの表情にヒビが入る。対して仮面の男は表情は見えないが冷静な態度だ。


「お前には見えないのか? お前の後ろにいるのは人間だぞ! なぜそんなやつを庇う!?」

「確かに彼は人間だ。だが私たちが倒すべき人間ではない」

「人間はすべて敵だ!」

「それは飛躍だカウ。冷静さを忘れるな。お前のしていることはいたずらに一族を傷つけるだけだ」

「なんだと? ふざけるな! 俺は一族のために戦っているんだ、逃げ回っているお前とは違う! お前が! 俺を非難することは許さんぞヲー!」


 カウが怒りをぶつける。激しい怒りだがそれでも対峙するリザードは態度を崩さない。


 カウは一端怒気を鎮め槍を収める。


「考え直せヲー。やつら人間どもから我らの故郷を取り戻すんだ。そのためには力がいる。お前の力が必要なんだ!」

「…………」

「内輪もめしている場合か?」


 カウからの勧誘。ヲーと呼ばれる仮面のリザードはしばらく口を閉ざしていたが彼に答える。


「カウ。気持ちは分かるが私たちがすべきことは故郷の奪還ではない。リザードの誇りと戦士の使命に賭けて、一族が新たに暮らせる場所を作り出すことだ。争って戦えば全滅するだけだぞ」

「黙れ臆病者! お前の戯れ言にはうんざりだ。俺たちがすべきことは奪われた故郷をこの手に取り戻し、あの憎い人間を血祭りに上げることだ。その手先もだ! すべて殺してやる!」


 カウは握り締めた拳を持ち上げる。敵意と怒気、敵はすべて亡き者にするという殺意。彼を形作るのは憎しみだ。黒い炎が内で燃え上がっている。


 その炎をこの時だけは抑え、カウは拳を下ろす。


「己を省みる機会くらい与えてやる。だが、次の邪魔は許さん。たとえお前でもな。お前らもだ。今回は見逃してやる。すぐにここから立ち去れ。さもなくば次こそ殺してやる」


 そう言うとカウは踵を返し去っていった。二メートルを越える巨躯でバッタのように跳んでいく。部下たちも消えていきここには駆たちとヲーと呼ばれるリザードだけとなっていた。


「えーと……助かった?」


 訳が分からないうちに終わったがなんとか九死に一生を得たようだ。それでこれからどうするかだが自然と目線は正面に立つリザードへ向かってしまう。いったいどういうことなのかいろいろ聞きたいことがある。


「それで聞きたいことがあるんだけど、って、どこに行くのよ!?」


 しかし彼は歩き始めてしまった。


「貴殿らには関係ないことだ。やつの言っていた通りここから去れ。それだけだ」

「ちょっとおおお!?」


 彼も驚くほどの跳躍力で行ってしまう。


「どうするマスター?」


 リトリィが聞く。どうしたものか。だがこのままではどの道新しい仲間を作るという目的は達成できない。せっかく見つけた悪魔をみすみす見逃す手はない。


 駆は彼が向かった先を見つめてからリトリィに頷いた。


「追いかけるんだね、了解!」

「それならすぐ行った方がいいズラ。彼ものすごい速いズラよ!」


 ポクの言うとおりだ。すでに彼の姿は街角を曲がり見えなくなっている。じっとしていれば本当に見失ってしまう。


 駆は急いで走り出す。ヲーが去っていった街角を曲がりその先の通りを見るがすでに彼の姿はいなかった。


「もーう! 完全見失ってるじゃん!」


 見た目に反して俊敏だ。リトリィが頭を抱えて悔しがっている。せっかくの手がかりだったのだが。


「待ってくれズラ。それならちょうどいいのがあるズラ」


 そう言うとポクが道具を取り出した。なにやら準備をするつもりだ。


「なによ、気を紛らわせる小粋なジョークなら私がするからいらないわよ」

「そんなの用意してないズラ」


 ポクはビーカーに液体を混ぜ合わせていく。


「今魔力に反応する薬品を作ってるズラ。魔力といってもそれぞれ特徴があるからあいつの魔力にも反応するよう……」


 目分量で液体の量を計りつつ薬品を作り上げていく。


「できたズラ! これで周囲に漂ってる魔力に反応するはずズラ」


 そう言ってポクがビーカーを持ち上げると黒い煙がもくもくと立ち上がってきた。それは三つに分かれ駆、リトリィ、ポクの体にくっついた。次に四つ目の煙が立ち上がると黄色となって宙を走り始める。まるで目に見えない足跡を辿るように進んでいく。


「これを追っていけばいいってこと?」

「この先にさっきのリザードがいるはずズラ」

「やるじゃーん。ま、これくらい役に立ってもらわないとね」

「なんでお前が偉そうなんだズラ!」

「じゃあマスター?」

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