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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
第四章 人類の果て
28/89

正体

「逃げたぞ!」


 後ろから声が聞こえる。気づかれたか。


「まさかバレたのか?」

「くそ、どうしてバレた」


 隊員たちの声が聞こえる。すぐに俺を追ってくる。


 俺は建物から出た。荒れ果てた町を走る。悪魔の目なんか気にしていられない。とりあえずここから逃げないと。


 バン!


「があ!」


 足に痛みが走る。前のめりに倒れ足からは血が出ている。


「手こずらせやがって」


 建物から五人が出てきた。そこには俺を守ると言ってくれた時の真剣な表情はなく敵意に満ちた顔つきが並んでいた。


「どうして俺たちが味方じゃないと分かった?」

「教えたら逃がしてくれるのか?」

「いいぞ、逃がしてやる」

「絶対嘘じゃねえか」

「ああ、嘘だからな」


 男は俺に近づくと腹を蹴り上げた。


「うう!」

「乱暴な真似はするつもりなかったんだがな、勝手にどっか行くからだ」

「ぐうう」


 痛い。痛みに体がしびれて動けない。


「バレてるならもういいだろ。足でも切り落とせ」

「怖いこと言うなよ、撃ち抜くだけでいいだろ」


 そう言うと男が拳銃を向けてきた。


 くそ。けっきょくこうなのか? 俺はなにもできず、こんなやつらが生き残って好き勝手している。それは変えられないって? 俺は、なんて無力なんだッ。

 俺の思いは届くことなく、銃声が鳴った。


「がああ!」


 俺と隊員の間を突風が通る。俺の悲鳴じゃないぞ。撃たれてない!


「なんだ!?」


 男たちも慌てる。一体なにが起きた。風が通り抜けた先を見る。

 そこには男が立っていた。銀色の髪。銃弾を手の上で遊ばせ白いロングコートを着た男はゆっくりと振り返る。男は、まるでいたずら好きな笑みを浮かべていた。


「よう。間一髪だったな、聖治」


 その手には、エンデュラスが握られていた。


「お前、まさか星都か?」


 特徴的な銀髪にエンデュラスを持っている。でも俺が知っている星都とは少し違う。背が俺よりも高い気がするし表情も大人っぽくなっている。

 こいつ、本当に星都か?


「言いたいことは分かるぜ。命の恩人、俺にキスをしてだろ?」

「違うわ」


 間違いない、こいつ星都だわ。


「分かってるよ。話したいことはいろいろあるがちょっと待ってろ。ゴミが散らかってるからな、話は片づけてからだ」


 星都は銃弾を空き缶みたいに放り捨て片手に持ったエンデュラスを男たちに向ける。


「てめえ」


 男たちも星都に銃口を向ける。すさまじい殺気とともに今にも発砲しそうだ。


「司令官がのこのこ出てきやがって。お前を倒せば褒美が出る。死ねぇ!」

「まだ分からないのか? お前らが受け取る褒美はこの世にねえよ」


 男たちは一斉に銃を撃ち出した。アサルトライフルからいくつもの弾丸が連続して放たれる。それが五つだ。人ひとりなんて蜂の巣にされ瞬く間に絶命してしまう。

 そんな銃弾の中で、星都は無傷のままだった。


 まるで星都の前にバリアでもあるかのようにすべての銃弾が弾かれていく。いや、切り落とされているんだ。すさまじい金属音。破裂するかのような音がいくつも重なり爆音になって響く。


 星都が見逃すよりも早くに男たちの銃弾が底を突いた。いくら引き金を引いてももう弾は出ない。なんてやつだ、いったい何発斬ったんだ。


 男たちは急いで弾倉を変えようとするが遅い。特に星都の前でそれは致命的だ。

 直後、この場を突風が駆け抜けた。星都は男たちの背後に立ち全員が斬られている。


「ぎゃああ!」


 悲鳴が五つほぼ同時に上がる。男たちは倒れ起き上がることはなかった。


「あの世にもねえけどな、大切なモンはお前らが捨てちまったよ」


 俺は見ているだけだった。それしかできないし、する必要もなかった。気づけば星都が助けてくれていた。


 星都がゆっくりと歩いてくる。俺が知っている風貌とはちょっとだけ違うその顔が、知ってる通りの笑顔を見せ手を伸ばしてくる。


「よく起きてくれたな。お前を待ってたぜ、聖治」



 それから駆けつけてきてくれた星都の仲間たちと合流し俺は今度こそ星都たちの本拠地へと向かっていた。


 弾は掠っただけで深い傷じゃない、手当をしてもらい今は大丈夫だ。


 俺たちは進み廃墟と化したビルに入っていくと思ったら地下へと潜りそこからいくつもの道を通っていく。


「地下にあるんだな」

「地上はもうやつらの勢力下だからな、ここくらいしか居場所がないのさ」


 通路を歩き続けていくと鉄の扉が見えてきた。部下だろうか、丸い取っ手を回しその後で扉がゆっくりと開けられる。扉の先にはさらに一本道が続いていた。


「長いな」

「防衛上仕方がないんだよ」

「なるほど」


 それからもしばらく歩き進め今度は普通の扉が現れる。


「ここだ」


 扉をノックする。するとのぞき扉が開かれ星都たちであるのを確認してから扉が開かれた。


「へえ」


 中に入って驚いた。そこはコンクリートで囲まれた巨大な部屋という感じで広さだけなら体育館よりも大きい。いくつもの柱が立ち天井を支えていた。そんな味気のない空間にいくつもブルーシートが敷かれ大勢の人が座り込んでいる。このシートが各自のスペースなんだろう。


「地下に設置された貯水用のダムを利用してる。不便は多いが広さだけならある」

「天井が高いのはそのためか」

「こっちに来てくれ、ここじゃ話も出来ないだろう」


 星都に連れられ一つの部屋に通される。どうやらここが司令室のようだ。とはいえ映画に出てくるような立派なものじゃない。無線機などの機器や会議用のテーブルとホワイトボード、地図などはあるがそれくらい。どちらかというとレジスタンスの基地って感じだ。悪魔に敗北したのだから実際その通りなんだが。中には数人の人たちが通信でやり取りしていたり段取りなどを話していた。


「聖治、ちょっとそこで待っててくれるか」

「え? おお」


 言われた通り俺は部屋の隅にあったイスに座り込む。なにも分からないのでなすがままだ。初めて来た友人の家みたいにただぼうと部屋の様子を眺める。


 見れば星都に何人かが話しかけている。星都が司令官だというのは本当らしく部下からいろいろ聞かれたりその度に指示をしている。俺の中の星都といえばおちゃらけていて司令官ってキャラじゃなかったんだがこうして見ているとなかなか様になっているな。


 いったん区切りがついたらしく部下が離れ星都がこっちにやって来た。


「待たせたな。いろいろ聞きたいことがあるだろう」

「まあな。分からないことばかりでなにから聞けばいいのかも分からない有様さ」

「心配すんな、それが普通だよ」


 星都は俺の対面にあるイスに座っている。改めて見てみるが、やはり星都は俺が知っているよりも背が高い。大人だ。俺の反応に星都がふっと笑う。


「不思議なもんだよ、あの時と同じままのお前がこうしているんだからな」

「反対に俺は浦島太郎さ」


 俺と星都では過ごした時間が違う。それは世界や星都を見ても明らかだ。

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