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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
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僕たちの縄張りでなにしてるズラ! 即刻立ち去るズラ!

 そう言うリトリィはちょっと楽しそうだ。駆にしてみれば当然の光景だが彼女にしてみれば新鮮なものだ。


 朝と昼、夜と回転していく人間の世界。それを特別だと思ったことはないがもし一つの時間に固定していたらそれはそれで退屈かもしれない。それに朝や夜という概念があるからこそ人々の生活に指向性が生まれうまく社会が回っている。もし朝や夜がなければ自分は活動しているのに相手は寝ているということもある。そうなると生活がバラバラだ。生産性が落ちる。


 一つの規則をもとにみながそれに倣って生活する。何気に大事なことだと思えた。


「マスターから見てここはどう見えるの?」


 顔つきを渋面にして考える。少なくとも愉快な場所には見えない。辺りは薄暗く赤い空が広がる世界というのは不気味以外のなにものでもない。


「まあ、人間にすれば楽しい場所には思えないかもね。実際悪魔同士の縄張り争いとかでピリピリしてる場所もあるし。でもでも、住めば都っていうじゃん? それにリンボでビビってたら魔界なんて腰抜かしちゃうわよ?」


 リトリィは駆の顔に近寄り挑発的な笑みを近づけてくる。


 駆は眉を曲げた。魔界? 聞いたことがない、初めて聞く場所だ。それにここよりも物騒なのか。


「そうよ、ここは人間界と魔界のいわば中間。一部が重なり合った次元なの。だから地形自体は人間界と変わらないでしょう?」


 なるほど。景色はまるで違うが学校は通い慣れた建物そのものだ。人間界と魔界が重なり合った場所。だから両方の特徴が表れているのか。


「魔界っていうのは悪魔が住むもともとの世界よ。ここよりもやばい悪魔がわんさかいるんだから。上級クラスから魔王クラスまでね。でもそうした連中がいる一方で下級悪魔じゃ生きるのも大変でね、それで魔界が嫌になった連中がリンボに移住するのよ」


 まるで内戦で故郷に住めなくなった難民のようだ。悪魔たちにもそうした事情があるのか。

 その話だとリンボにいるリトリィも逃げてきたということになるが。


 ジー。


「な、なによその目は! このリトリィ様が魔界から逃げてきたって言いたいの? 勘違いしないでよね、私はもともとこっちに用があって来たの。むしろ私が魔界にいたころなんてブイブイ言わせてたもんよ、そんな私にみんな恐れおののいてたんだから~」


 そうは見えない。


「なによその目は!」

「…………」

「ムキー!」


 リトリィは空中で地団駄を踏んでいる。が、申し訳ないがそうは見えない。


 駆は無表情で見つつリトリィは必死に抗議する。なんとも気の合ったやり取りだ。


「そこのお前たち!」


 その空気が凍り付いた。


 全身に緊張が走る。不安と緊張で固くなる体で振り返った。


 ここにいるのは悪魔しかいない。しかも最近危険な悪魔が住み着いた。そんな状況で声を掛けられた。


 やばい。そう思いながら振り返った先、校舎に挟まれた地面の上には五体もの小人が立っていた。


「…………」


 なんか、思っていたのと違う。


 これが危険な悪魔? とてもそうは見えない。


 駆は声をかけてきた小人たちを見つめる。 緊張が一気に緩んでいくのが分かった。


 身長は六十センチくらいだろうか。見た目は男の子で茶色い髪の上にはとんがりフードをかぶり鼻が異様にとがっている。緑色の服を着ておりリュックサックを背負っていた。他にも似たような服装をしているが年齢は様々でひげを生やしている年配者もいる。


 五人は駆たちを睨んでくるがぜんぜん怖くない。というかむしろ可愛らしいくらいだ。デフォルメされた姿はぬいぐるみにさえ見える。本人は怒鳴っているつもりかもしれないが声もまったく凄みがない。


「僕たちの縄張りでなにしてるズラ! 即刻立ち去るズラ!」


 そう言うのは真ん中にいる緑色の服をした男の子の悪魔だ。指を突きつけ駆たちに警告してくる。


 どうしたものか。相手はすでに敵意丸出しだ、駆としては穏便に済ませたいのだが。


「出たなコボルト~!」


 そんな駆の気も知らずリトリィがやる気満々で応じている。コボルトと呼んだ小人の悪魔に向かって指を突きつけている。


「ここで会ったが百年目! 今度こそあんたたちをぎゃふんと言わせてくれるわ!」


 どうやら知り合いのようだ。しかも敵同士の。


「あいつらはコボルトっていって、見てのとおりちびな連中よ」


 君のほうが小さいだろう、とは言えない駆だった。


「この学校はわたしたちピクシーの縄張りなのにずけずけと入り込んできたおじゃま虫よ」

「なにを~! さきに学校に住んでいたのはオイラたちズラ! いい加減なこと言うなズラ! それにどうしてお前は一人ズラ? いつもの仲間はどうしたズラ?」


 可愛らしい顔が小首をかしげる。それに合わせ大きな帽子も少しずれる。


「ふっふーん。やっぱりコボルトはバカね。見て分からないの? 私はニンゲンと契約したの。すごいでしょ~? 私優秀だからなー。契約されちゃうのも仕方がないかな~。まあ? コボルトなんて唯一道具作成っていう特技があるだけだし? それに比べていくつもの魔術が扱えちゃうリトリィちゃんの方がすごいに決まってるからね。コボルトなんて私にかかればちょちょいよ」

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