俺の歴史を、歩んできたこの道を受け入れて進むんだ! そこにあった思いと共に!
聖治はスパーダを手に取る。ベールはなくなりそれは桃色から七色に変わり虹色の輝きを放つ。
「魔卿騎士団、団長候補」
聖治の登場に律も驚き警戒している。勝利を確信した瞬間、そこへ最強の敵が現れたのだ。
「お前が剣島聖治だな」
「そうだな」
聖治は彼とシルヴァニアスと対峙している。シルヴァニアスという強大な敵を前にしていても聖治は気丈だ。
「聖治君、大丈夫なの?」
だが聖治は悪魔の存在を恐れていた。襲われる恐怖に日夜苛まれ怯えていたはず。
なのに聖治は来てくれた。
「心配? よく分からんな。その男はお前等よりも強いんだろ? 心配する必要がどこにある」
「それは」
聖治の事情を知らない律から聞かれるが答えに困る。確かにその通りだ、団長候補である聖治が他の仲間に心配されるなど筋が通らない。
香織は答えに詰まるが、代わりに聖治が口を開いた。
「それはな、俺が弱いからだ」
「なに?」
「聖治君?」
聖治は律を見つめている。シルヴァニアスの威圧と眼光を前にしても真っ直ぐとしている。
普通なら恐怖で声すら挙げられない。もしくは恐慌して悲鳴を挙げるかのどちらかだ。
だけど聖治はどちらでもない。それどころか表情は穏やかですらある。
「俺は強くなんてない。だけど分かったんだ」
一歩前に出る。距離が近づき律の目つきもきつくなる。
「俺は強くないけれど、弱くてもいいんだと。そんな俺を支えてくれる仲間がいるから!」
聖治はスパーダを構える。七色に輝く神剣。セブンスソードの絆であるホーリーカリスを。
「仲間がいるから、俺は戦える!」
絆を手に聖治は立つ。真っ直ぐと敵を見つめ対峙する。
「だから俺は恐れない。過去から逃げたりしない。お前には俺の全力を見せてやる」
「全力だと?」
聖治が持つスパーダは七色の剣。それは七つの能力を持っていることに他ならない。
それを出していながらなお全力とはどういうことなのか。
聖治は敵を真っ直ぐと見つめる。
ここに来るまで、今まで様々な葛藤があった。いつ襲われるか分からない恐怖。そんな不安に怯える自分に嫌悪して、仲間をも避けてきた。
だけど分かった。香織に言われて受け入れることが出来た。
今の自分でもいいのだと。たとえ自分が仲間に迷惑を掛けたとしてもこの仲間たちは受け入れてくれる。そんな自分を認めてくれると。
自分の仲間は、なにより強いのだと。
だから進める。恐れず歩める。
「俺の歴史を、歩んできたこの道を受け入れて進むんだ! そこにあった思いと共に!」
今までのことを否定しない。自分を否定したりしない。
過去も現在も受け入れて、聖治は今ここにいる!
「来い! エンデュラス! グラン! カリギュラ! ミリオット!」
聖治は大声で呼びかけた。それは四つのスパーダ。
直後、聖治の背後、まるで翼を広げるように四本のスパーダが現れた。
右からエンデュラス、グラン。左にカリギュラ、ミリオット。そして片手
にホーリーカリスを握り、聖治は五本のスパーダを扱っていた。
「スパーダが五本だと!?」
律が驚いている。スパーダが持つ剣は一人一本が原則。また驚いているのは律だけではない、香織や此方、日向も突然現れた四本のスパーダに驚いている。
「かつて、俺は五本のスパーダを譲り受け、一人で戦っていた」
この場に漂う疑問。その中で聖治は話していく。
「もう一人の自分。俺はそいつと一つになることでそこにあった思いを取り込んだ。同時に、そいつが持っていたスパーダも引き継いだんだ」
「そうか」
聖治の説明を聞いて香織が納得する。
聖治は2062年の自分を取り込んだ。それによりその時代にあった四本のスパーダも手に入れたことになる。
ここにあるのはその時のもの。現代ではなく、未来のスパーダたちだ。
だがそれを扱うことは聖治にとって簡単なことではない。辛い記憶を思い出すことになる。
だけど聖治は分かったのだ。自分が多くの仲間に支えられていること。守ってもらえていることを。
もう、一人じゃないと。




