77
分かり合っているのだ。そして納得している。結果は願ったものとは違っても恨めるはずがない。
「俺たちは家族だ。そうだろう、一花?」
家族だからと。当然のように言い切った。
「……そうね」
その答えに一花は目を瞑り俯いた。その後ゆっくりと体が傾いていき地面に倒れる。
表情は、笑っていた。
「誰よりも、大切な……」
声には哀愁を漂わせて。
そこへ足音が響く。駆け足の音がここに近づいてきた。
そして現れる。
彼ら、最後の仲間が。
「駆?」
「駆君?」
二人が振り返る。その後、ゆっくりと一花も振り返る。
「駆……来たの……?」
そこに駆はいた。ここまで全力で走ってきたのだろう。大きく息を吐き、目を大きくして一花を見つめている。
駆は一花の束縛が解けるなり走り回っていた。それで校舎から一花たちを見つけるなり急いでここまで走って来た。
なぜなら、二人は戦っていた。
早く止めねばならない。こんなこと。早くしなければどちらかが死んでしまうかもしれない。必死な思いで駆は体を動かしここに到着する。
だが、視界に飛び込んできたのは二人の姿と、血だらけの一花だった。
「……!? ……!」
止まっていた足を動かし駆は一花に駆け寄る。倒れる一花の体を支え顔をのぞき込む。
「! !」
必死な表情で一花を見つめる。その後自分の手の平に付いた血に気が付いた。見ればひどい傷だ。翼はもがれ、尻尾は斬れ、なによりも胸からの出血がひどい。
死んでしまう。いや、助からない。説明されなくても分かる。分かってしまう。
駆は必死に一花を見つめた。片手を頭の後ろに回し、反対の手を肩に置く。
瞳には、涙が浮かんでいた。
「泣いてるの?」
そんな駆を一花は見上げる。
「ばか……。こんなの、自業自得じゃない……」
そこに最近までの彼を拒絶する姿勢は見られない。むしろその声は別れを惜しむように寂しそうだ。
「あんたが、泣くことないのに……」
今にも泣きそうな声と顔で、駆を見上げていた。
駆は静かに涙を零す。一花が、大切な人が死にかけている。
次に駆は二人を見上げた。いや、睨み上げた。
どういうことだ!? 何故こんなことをした!?
壮絶な目つきが二人に向けられる。しかし、二人はなにも答えなかった。
そこへ、さらなる足音が加わった。
「どうやら進んでいるようですね」
どこか優雅な足取りで。その声にみなが振り返る。
「お前……」
「…………」
「?」
意外な人物の登場に秋和は口を開き千歌は無言で警戒の眼差しを送る。
唐突にここへ現れた彼女へ、秋和は鋭い視線を向ける。
「ジュノア、なぜここにいる?」
四人の前に現れた人物。
二十代中ごろの外国人で金髪のショートカットに白い肌、グレーの下地に黒のストライプ柄のスーツを着ている女性だ。その容姿は整っており切れ長の瞳に通った鼻筋は美人だ。妖艶な笑みを浮かべジュノアと呼ばれた女性が近づいてくる。彼女は秋和の質問には答えず一花を見つめていた。
「デビルズ・ワンが始まりさっそく脱落者が出ました。でも、それがあなただというのは少々意外ですねえ、一花さん」
「ジュノア……!」
現れた女性を一花は見上げる。ジュノアは笑みを浮かべデビルズ・ワンが進行していることが嬉しそうだ。
「あなたにはそこそこ期待していたのですけれど、残念です。でもそう、彼が噂の少年ですか」
ジュノアが駆を見る。駆は二人がなんの話をしているのか、そもそも彼女が何者なのかも分からず唖然とする。
「今、自分がどういう状況にいるか分かっていないという顔ですね。無理もありません。なぜなら、あなたは日曜日の記憶がないのでは?」
「!?」




