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【WEB版】セブンスソード  作者: 奏 せいや
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三刀流

 星都の速攻を見切った魔来名は鞘で払うとスパーダで斬りつけた。さらに沙城さんの攻撃を防ぐと蹴りで吹き飛ばし力也の攻撃をかわすとその隙に斬りかかっていた。


「ぐ!」

「く!」


 危ない。なんとか二人とも防いだが魔来名はただ防戦しているだけじゃない、一瞬の隙を突いてくる。

 星都と沙城さんは体勢が崩され、その中で力也が一人で攻める。大剣であるグランを打ちつけ魔来名が大きく下がった。二人の距離が離れる。力也はさらに攻撃しようと大きく振り被った。


「――――」


 そこへ、魔来名は天黒魔を投げつけた。


「があ!」


 天黒魔の黒い刀身が胴体に突き刺さった。


「力也ぁあ!」


 力也が倒れる。グランが、地面に落ちた。


「てめえええ!」

「駄目、星都君!」


 天黒魔を投げたことで魔来名は無防備だ、星都はエンデゥラスの速攻ですぐさま攻める。

 だが、魔来名は天黒魔を一旦消すと再び手元に出し、大振りとなっていた星都を返り討ちにした。

 スパーダを投擲してから手元に出す技、沙城さんが管理人と戦った時にしたのと同じだ。


「星都おお!」

「そんな」


 この一瞬で、状況が一変していた。


「ディンドラン!」


 すかさず沙城さんが起きあがり二人にディンドランを近づけた。


「そんな、どうして!?」


 なのに、二人の傷は一向に治らなかった。


「力也、星都!」


 二人に走る。力也はお腹を押さえているが星都はピクリとも動いていない。


「力也……? 力也、しっかりしろ! なんで回復しないんだ!?」


 叫ぶけれど一向に傷は治らない。そうしている間にも力也からは血が流れ落ちていっている。


「聖治君」


 力也の弱々しい目が俺を見た。


「ごめん、ねえ……」

「力也?」


 そう言って、力也から力が抜けていった。


「あ。ああ」


 一瞬だった。瞬く間にすべてが終わっていた。


「うわああああ!」


 膝を付き地面を殴る。

 ぬるりとした感触に自分の手を見てみる。手は血で真っ赤に染まっていた。

 しまった。しまったしまったしまった! 馬鹿か俺は!

 なぜ加勢しなかった? 二人の言葉に甘えてなんでなにもしなかった? 俺も戦っていれば守れたかもしれないのに! 

 そんな、俺のせいだ!


「お前えええ!」


 立ち上がった。こいつは絶対に許さない。よくも、俺の友達を!


「待って!」


 沙城さんも悔しそうに力也と星都を見つめている。だが、彼女も立ち上がった。


「沙城さん」

「聖治君はここにいて」

「いや、俺も戦う!」


 俺は見てるだけだった。そのせいでこんなことになってしまった。なにより、三人がかりでも勝てなかったのに一人で戦うなんて無謀だ!


「ううん」


 だが、彼女は言った。


「聖治君はいない方がいい」


 きっぱりと。そう言われてしまった。


「でも!」

「お願い」


 沙城さんは俺を見ていなかった。表情が見えない横顔が、俺を拒絶していた。


「今、聖治君が加勢しても死ぬだけだから」

「…………」


 その言葉に、言い返すことができない。

 悔しさに、涙が溢れた。拳を痛いほど握りしめる。友達が殺されたのに、俺は戦うことも出来ないのか?

 それが、悔しくて仕方がない。

 力が、力が欲しい。もっと、今よりももっと大きな力が。それさえあれば魔来名を倒せた。二人を死なせることもなかったのに。

 力が、欲しい!


「私が戦う。聖治君は下がってて」

「駄目だ。なら逃げるべきだ」


 俺は弱い。悔しいけど沙城さんの言う通りだ。俺が戦ったところで殺されるのが落ちだろう。でもそれは沙城さんだって同じはずだ。


「このままじゃ沙城さんまで。前はディンドランで治せたけど、あいつの怪我は治せなかった。きっとそれがあいつの能力なんだ、無茶だ!」


 沙城さんの能力は封じられたも同然だ。相性が悪すぎる!

 それでも、沙城さんは退かなかった。


「私は、この日のためにここに来た。そして、聖治君も守ってみせるッ」


 すると沙城さんはディンドランを消した。どうして、治せないからって消すことはないのに。

 星都と力也の体が発光している。二人の体から光の玉が浮かび上り沙城さんの体に吸い寄せられていく。それは彼女の体の中に入っていった。

 それを受けて沙城さんが両手を前に出す。


「来て」


 呼びかける。それにより現れた光は二つ。


「光帝剣エンデゥラス。鉄塊王グラン!」


 彼女の両手に星都と力也のスパーダが握られた。水色と緑の二刀流。それは本来沙城さんのものじゃない。

 そうか、これがスパーダを取り込むということなのか。さきほど星都と力也の光を吸収したから沙城さんは二人のスパーダが使えるようになった。

 沙城さんは二つのスパーダを構え魔来名を見つめる。


「いつでも攻め入られたはずなのに、待っててくれたんですか?」

「死を(いた)むくらい見逃してやる。どの道いつでも殺せる相手だ」

「そうッ」


 二人も殺しておいて、魔来名には興奮も悪びれた様子もない。挑発かもしれないけれど本気でいつでも殺せると思っているんだ。


「聖治君はここにいて」

「沙城さん!」


 彼女は走った。エンデゥラスにより加速した彼女の体が長髪を浮かばせ夜の街に伸びる。

 さらに、その速度のままグランを振るった。


「ッ」


 この一撃には魔来名も躱すことができず咄嗟に天黒魔の刀身で受け止めた。だがそれはさきほどまでのエンデゥラスの攻撃じゃない、重量のグランの攻撃だ。

 魔来名は足が地面から離れ大きく吹き飛ばされていった。地面に叩きつけられてからも何度も転がっていく。

 が、回転の途中で足を付き立ち上がった。ダメージはほとんどない。まるで回転することによってダメージを逃がしていたような感じだ。

 さらに沙城さんが追撃する。瞬時の間に光帝剣を何度も振るい、グランの重い一撃を放つ。その後すぐにエンデゥラスの攻撃に入る。

 連撃と重撃の波状攻撃、二つのスパーダによる二つの能力だからこそできる攻撃だ。

 魔来名はエンデゥラスの攻撃を刀身と鞘を以って防ぎ、グランを紙一重でかわしていく。剣風と爆風、破片と剣閃入り乱れるまさに爆心地の中にあって、魔来名は単純な剣術のみで対抗していた。

 強い。俺だったらこんなの耐えるまでもなく斬られるか吹き飛ばされているのに。それを刀と鞘だけで捌ききるなんて。

 エンデゥラスとグランだけでは押し切れないことに沙城さんの表情からも焦りが出始めている。

 沙城さんはエンデゥラスで魔来名に斬り込んだ。それを魔来名は刀身と鞘で受け止めた。エンデゥラスで牽制することによって天黒魔を封じている。その隙にグランを背中に回した。


「は!」


 が、魔来名の足蹴りによって体勢が崩さる!


「くっ」


 体が斜めに滑り倒れていく。その間、


「もらった」


 魔来名が天黒魔を振った。黒の刀身が走り、紫のオーラが塗りつぶしていく。


「沙城さん!」


 エンデゥラスは鞘によって封じられグランでは間に合わない。防ぐ手段がない! 駄目だ!


「ディンドラン!」


 そう思った時、彼女の正面を桃色のベールが覆った。


「ん!?」


 レンズ状の光の膜が盾となり迫る漆黒とぶつかった。天黒魔は弾かれ魔来名は後退、その間に沙城さんは体勢を元に戻した。


「今のは」


 突然現れた光の壁が、沙城さんを守った? 


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