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【WEB版】セブンスソード  作者: 奏 せいや
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 それもそうだったな。互いの秘密を知ってどこか距離が近くなった気がする。


「正直に言うとな、ちょっと不安だったんだ。駆全然話さないだろ? だから避けられてるのかなって」


 駆は苦笑する。顔を小さく振った。喋れないからなかなか話しかけづらいところはあるけどさ。でも俺としては気兼ねなく話しかけて欲しい。


「それでな、駆に伝えたいことがあったんだ」


 改めて言う俺の台詞になんだろうかと駆は待っている。


 駆の昔のことを知った。一花のこと。他の二人の友人のこと。四人の間に強い絆があることを知っている。だからこそ駆は苦しんでいる。そして一人でいることを。


 そんな駆にこんなことを言っても意味のないことかもしれない。


 それでも言っておきたい。話すことが出来ないからこそ、自分の思いを言葉にして伝えておきたい。


「俺は、駆のことを友達だと思ってるからな」


 俺の言葉に少しだけ表情が崩れている。きっと、面と向かってこんなことを言われたのは初めてだろう。そうそう言われることじゃない。


 だけど、言いたかったんだ。


「いいか? 伝えといたぞ?」


 恥ずかしそうに笑っている。それも終わると俺を見つめ頷いた。


「うん」


 俺も頷く。


 今日、駆とまた一つ分かり合えた。認め合える。理解し合える。そうした結びつきが絆に繋がる。一花たちとの絆に比べればそれは弱い結びつきかもしれないけど、俺は駆との友情が素直に嬉しい。温かい気持ちが胸に広がっていく。


「いい気なものね」


 そこに、彼女の声が入るまでは。


「一花!?」

「!?」


 急いで振り返る。駆も慌てて振り向く。


 扉とは反対側。柵の前に一花が立っている。いつからそこにいたのか。どうやって入ってきたのかまるで分からない。しかし屋上の風にクルミ色の長髪を揺らし、間違いなく一花はそこにいた。


「聖治。あんたと決着を付けるわ」

「決着?」

「あんたは私と秋和の戦いを台無しにした。私たち、悪魔召喚師に手を出したの。その借りを返すわ」

「待てよ! あの時はお前がピンチだから助けてやったんだろ!」

「そんなこと頼んでない」

「お前なあ!」


 駆の友達だから助けてやったのにその言い草か。


「!」


 駆が前に出る。懸命な表情で一花を見つめる。その顔は止めるんだと訴えていた。そのまま一花に駆け寄ろうとする。


「駄目だ駆!」


 走りだそうとする駆を慌てて掴む。


 一花の雰囲気は一昨日とは違う。存在感が何重にも増して重々しい。


 なにが起こったのか。この前の彼女とはまるで別人だ。


「駆……」


 一花の鋭い瞳が駆を見る。必死な駆とは反対に冷徹な表情が浮かぶ。


「あんたは知らなくていいことよ」


 一花の言葉に駆は大きく顔を横に振る。そして俺の手から離れた。


「駆?」


 俺には見向きもせず、駆が歩き出す。


「駆!」


 ゆっくりと、しかししっかりと歩みを進めていく。


「来ないで」


 一花から冷たい命令が浴びせられるが駆は止まらない。


「来るな!」


 一花は駆に指を指すと、そこから黒い光弾が発射された。目にも止まらぬほどの速度で駆に迫る。


「!?」


 そこへ割り込む。俺はエンデュラスで打ち落とした。エンデュラスから伝わる手応えに舌打ちが出る。


 強烈だった。生身で当たっていれば気絶するほどの。俺ならいざ知らず駆では耐えられない。


 そんなものを、ためらいもなく発射したのか。


「なにするんだお前!」


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