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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
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61

 駆は一花のことを友達だと言う。二人の絆は俺だって知っている。


 しかし、こんなことをする一花を許せるはずがない。


 本気で怒る。それでも一花は平然と立っていた。


「いい、駆? あんたには関係ないの。ほっといて」


 その声には拒絶が含まれている。


「私とあんたはもう他人。忘れて」


 一花の言葉にみるみると駆の表情が落ち込んでいくのが分かる。目は信じられないように見開いていく。


「そんな言い方ないだろう!」


 一花のひどい言い方にたまらず叫ぶ。二人がどんな関係でも聞き捨てできない。


「駆が、どれだけお前のことを心配していると思ってるんだ! それを」

「黙れッ」


 しかし、俺の怒声は一花の叫びによって消されてしまう。その叫びには強い意思を感じた。


「放課後、リンボを開くわ」

「リンボ?」


 聞き慣れない言葉に聞き返す。


「赤い空の結界よ。人界と魔界の境界。それがリンボ。そこなら邪魔は入らないわ。そこの校庭で、あんたとの決着を付ける」


 滅んだ世界。あれがこの世界と悪魔が住む世界の狭間。


 そこで俺と戦うつもりか。俺は悪魔召喚師たちによって行う儀式のイレギュラー。そこに並々ならぬ戦意を感じる。


「教えてくれ! どうしてこんなことをするんだ? なにが目的なんだ!?」


 核心をつく。一昨日、もしくはそれ以前から行われていた異端の争い。


 なにが行われているのか。


 なぜ一花は戦うのか。


 悪魔召喚師が行う戦いとはなんなのか。 


「デビルズ・ワン」


 それが、ついに判明した。


「デビルズ・ワン?」


 一花の口から聞いたことない言葉が出る。


「それが私たち、悪魔召喚師たちが行っている儀式よ」


 一花は険しい表情だが落ち着いた態度で話していく。


「リンボに浮かぶ赤い月」

「赤い月?」


 そういえば。学校が滅んだ世界で空に浮かぶ巨大な穴。黒い点に見えたあれは新月だったのか。


「あれに魂を生け贄として捧げ、それが満月になった時、そこから世界を新たに創造する悪魔が現れる。最も生け贄を捧げた者はその悪魔と契約し、願いを叶える。それがデビルズ・ワンよ」


 一花の説明は単純明快だ。


 デビルズ・ワン。これは悪魔召喚師による競争ゲーム。魂を捧げる容量は決まっている。誰よりも早くに一番多くの生け贄を捧げる。これは競い合い。それに勝った者だけが願いを叶えられる。


 それが一花たちの狙いか。


「新たな世界を創造する悪魔……。それがリング・オブ・オーダーの狙いか?」

「リング・オブ・オーダー? 知らないわね」

「知らない? ならどうやって悪魔召喚なんて知ったんだ?」

「そこまで話す気はないわ。言いたいのは、私は止まらないということ」


 一花は知らないようだ。だが悪魔を使役する以上リング・オブ・オーダーの関与はあるはず。


「願いを叶えるまで、私は戦う。絶対に止めたりしない。そのためにも」


 一花の双眸が戦意と共に突きつけられる!


「聖治、お前を生け贄として捧げる!」 


 強烈な視線だ。それだけで心を屈する暗示でもあるかのように、魔眼のごとき視線が俺を捉える。


「逃げないでよ。もし逃げたら」

「駆!?」

「!?」


 突如駆の足下から黒い影がわき出てくる。その影が駆を覆うと一花の前に駆が現れた。一花は駆の首を片手で掴んだ途端、駆から意識がなくなりぐったりと倒れた。


「こいつがどうなっても知らないわよ? 友達なんでしょう?」

「お前ぇ……!」


 駆は一花に捕まれたまま意識を失っている。なにかしらの魔術で眠らされているのか。

「時刻は一九時。それじゃあね、転校生」


 そう言うと一花は影を展開し駆と共に消えていく。


「くそ!」


 まさかの事態だ。エンデュラスを消し今起こったことに悪態を吐く。だが突っ立っているだけじゃ駄目だ。


 すぐにスマホを取り電話を掛けていく。


「香織、聞いてくれ」

『聖治君?』


 向こうからは楽しそうな教室の声が聞こえてくる。香織も最初は何気なかったが雰囲気から状況は伝わったようだ。


『なにがあったの?』


 すぐに声が真剣になる。


「駆が一花にさらわれた。狙いは俺との対決だ。時刻は今日の一九時。場所は校庭。リンボと呼ばれる結界の中だ」


 声から香織が驚いているのが分かる。俺も慌てているが次第に落ち着いていき気を引き締める。


 駆がさらわれた。人質となった新たな友人を救うためには一花と決着をつけなくてはならない。


 力が入る。固い決意を胸に、彼女へ告げる。


「俺は、戦わなくちゃならない」


 悪魔召喚師、一花との対決。


 俺は、熱い思いを噛みしめていた。


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