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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
第1.5部
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もういい。救いなんて、求める方が間違ってた

「……そっか」


 千歌の悲しそうな声。目線は下がり、滑稽な自分にわずかに口元をつり上げる。


「そうだよね。さすがに虫が良すぎたか」


 目を瞑る。勇気を出した告白は、しかしふられる結果に終わってしまった。


「悲しいね。本当に……」


 お互い大事に思っているのに、戦って倒さないと目的は達成されない。それは、どれだけ残酷で悲しいことだろう。


 千歌は目を開け、駆を見つめる。


「駆君は、大切な人を失うことを恐れている。その覚悟が出来ていない。そしてそれはみんなも同じだと思っている。だけどね、それは違うよ」


 悲哀の雰囲気が彼女を中心にしてこの場を覆う。


「私たちはもう、君を失っているんだよ」


 かつての仲間と戦うこと、それを駆は厭うた。

 彼女も、違うはずがなかった。


「君がいなくなってしまった悲しみをみんなが経験した。その苦しみにあって、辛さを受けた。みんな苦しんだの」


 悲しい。


「どうして? どうして生き返ったの? なんで今更出てきたの? 生き返るならなんで死んだの?」


 悲しい。


「悲しかったのに、すごく悲しかったのに!」


 悲しい。


「それを乗り越えて、もう、君のような人が出ないように、世界を変えようって決意したのに!」


 それでも、ここに立っているのは。


「君が、それを教えてくれたのに! それを!」


 こんな悲しい世界を、変えたかったから。


「どうして君に否定されなちゃいけないの!?」


 そう叫ぶ千歌の瞳は、濡れていた。


「どうして……!」


 そこにいるのは世界を背負って立つ革命者ではない。


 十七歳の、高校生だ。なにも変わらない、人間の女の子だ。

 千歌は目を押さえ涙を拭う。


「分かってる。駆君は、優しいもんね……」


 それで熱は引いていった。顔を上げ、言われた言葉を思い出す。


「その情熱は、自分が守りたかったものすら燃やし尽くすことになる、か。嫌々融合されたフェニックスが私に向けた、呪詛めいた負け惜しみだったけど、本当に呪いになったわね」


 目的のためなら仲間であろうとも犠牲にする。それを選択できる彼女の情熱は、確かにある種呪いのようなものだろう。


 だけど、それでも止まらない。それでも燃え続ける。自分の思い描く世界を実現するまでは、この歩みを止めたりしない。


「もういい。救いなんて、求める方が間違ってた。私にそんなものは過ぎた褒美だし、そんなものが欲しかったわけじゃない」


 今の彼女は灰だ。静かだけれど、それにはまだ熱が残っている。


 加えてそれは不死鳥の灰だ。


 終わりではない。むしろ逆。


 ここから。


 これから始まるのだ。


 愛すらも、燃料に変える戦いが。


「始めましょう。すべて灰にするわ、理想のために」


 千歌の背後に炎の翼が生える。足は床から離れ両手の平にも炎が現れる。


「来るぞ!」

「分かってるズラ!」


 駆も身構える。


 これが、最後の戦いだ。


 魔王戦、殺戮王と不死王の戦いが始まった。


「簡単に終わらないでね」


 千歌が片手を向ける。燃えさかる炎は温度を急激に上げ熱線として放出する。


 すぐさま反射のマントで防ぐ。屈折した熱線が玉座の間を焼き切った。千歌の背後にある深紅のカーテンが真ん中からどさりと床に落ちる。

 それでも千歌の攻撃は止まらない。


「ファイザ!」


 ファイの高等呪文であるザ系の発動。彼女の頭上に浮かぶ巨大な球体は小さな太陽のようだ。それを駆たちの場所へ放り投げる。


「ッ!」


 爆風と共に炎が駆たちを襲う。吹き飛ばされそうになる体を足に力を込めて耐える。


「ぐうう!」

「ぬああ!」


 熱い。


 マント越しに伝わる威力となにより熱に表情が歪む。掴むマントの裾が熱せられた鉄板のように熱い。皮膚が焼け痛みに手を放しそうになる。それを負けじと握りしめた。


 ファイザの爆発が終わった時、立っているのを駆だけだった。ヲーとポクは壁際まで下がっておりヲーは片膝を付きポクはうつ伏せに倒れている。


「これ、くらいッ」

「マスター、ごめんヅラ~」

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