異能封じの結界
モニカの接近に空気がさらに張り詰める。
「モニカ、止めろ。俺がやる」
そんな彼女を、俺は片手で制止した。
今度は全員の視線が俺に集中する。振り返るモニカの視線を受けて今度は結界に目を向ける。
「異能封じの結界。確かに厄介だが、俺は最強になるべく作られた存在だぜ?」
モニカ、心配すんな。なにも舐められっぱなしでいようなんて言わない。ただ、無理しなくていい。
俺が持つスパーダ、その光が黄色に輝く!
「柔いぜ、この檻じゃ」
それを逆手に持ち、床に突き刺した。
「翻せ、シンクロス」
瞬間、結界は剥がれ落ちるように浮かび消えていった。
「ほう」
この出来事に全員が驚いている。モニカは無言ながら瞠目しアメリアは大声で、賢条も意外そうに口を漏らした。
俺のスパーダは異能の無効化を持つ五色の光線すら受け切ったんだ、異能封じは通じない!
これで特戦の結界はなくなりモニカもアメリアも能力が使えるようになった。ようやく対等だが彼らからしたらそうじゃない。
「室長、下がってください。状況が変わりました、私たちで引き受けます」
牧野と呼ばれる二十代ほどの女性が前に出る。切れ長の瞳は美人だがその目は戦意を宿している。
「いや、待て牧野。彼は本当に対等な話し合いを望んでいるだけのようだ」
それを賢条は片手を上げて止めさせた。ニコニコした表情で糸目になっていた瞳が開き俺を見る。
「これは、本当にノックが正解だったかな」
この男がどういう人物なのか分からない。底の見えない人物というのを初めて見た気がした。
「ですが室長、彼らは無断で魔術儀式を行った組織のメンバーであり少年はその当事者ですよ。なにをするのか分かりません」
それはそうなんだよな。魔卿騎士団なんて日本からすれば危険組織に違いない。彼女の言うことは尤もだ。だが、意外にも賢条は柔軟だった。
「資料では僕も同じ考えだったが、こうして直に見てみて少し変わってね。もう少し話したい」
「しかし軽率です」
「牧野、状況を見るのもいいがまずは人を見ろ。彼は猛獣のように強いがいきなり襲い掛かってくるタイプじゃないようだよ」
言われ牧野が俺を見る。しばらく見つめ合うが牧野は下がり、再び賢条の後ろに控えた。
緊張状態だったのがそれで解消されていく。背後の兵士もモニカたちも手を出すことなくこの場は導火線がむき出しのまま沈静化していった。それを見て俺もシンクロスを消す。
「剣島聖治君、恥ずかしながら君のことを知ったのは最近でね。あまり調査が進んでいなかったんだ。正直さきほどの盗聴で知ったと言ってもいいくらいだ。君は未来でやってくる悪魔をかなり警戒している。それなら私たちは君の役に立てると思うよ」
賢条は再びニコニコの笑みを浮かべ言ってくる。ほんと、よく分からん人だ。
「分かった。俺だって人間を斬りたいわけじゃない」
「やはり君は素晴らしい。だが一つ条件を設けたい」
「条件?」
変なのじゃないだろうな、それか無理難題のような。
「タイムリープ能力、それの今後一切の禁止だ。時間操作による干渉、それによって過去が書き換えられるのは様々な観点から見ても危険だ。もちろん国防という立場からしてもね。これを特戦としては野放しには出来ないんだ。どうかな?」
タイムリープの禁止。言われて思うがこれは確かに危険な能力だ、悪用する方法なんていくらでもあるしやろうと思えば自分が総理大臣にだってなれるかもしれない。歴史を変えるほどの力だ、特戦が警戒するのも分かる。
「なるほど、理由は分かった。でもそれ、もう解決してるよ」
「というと?」
「実はなんだが」
消したばかりのシンクロスを取り出す。見た目に変化はないが、大きなものを失っていた。
「さきほどこいつらから襲われてね、その時もらった銃弾で一つ能力が封じられたんだ。ノックも知らないどっかの間抜けのせいでな」
「その件はもう謝っただろうが」
「うう~ノックも知らない間抜けです~」
「それで封じられた能力がタイムリープだと?」
「正直焦ってる」
そう、スパーダ狩りの銃弾で撃ち抜かれたのはよりにもよってタイムリープ能力だった。マジかよ!? なんでそんなことになるんだよ? ええ? 俺にとってこれは有用なだけでなく思い入れが強い。それをよりにもよってかよ!
「なあ、一応聞くが」
「壊すことを目的に作ったのに治す当てがあるとでも? ねえよ。あいにくそれは壊れたままだ」
「んだよもーう!」
「ふむ」




