第二話
ピピピピッ!ピピピピッ!
目覚まし時計の音が俺の部屋に響き渡る。目覚まし時計をセットした覚えはない。
ピピピピッ!ピピピピッ!
起きろと言わんばかりの爆音でなり続ける。
俺は目覚まし時計に腹が立った。目覚まし時計から単三電池2本を抜き、右手に目覚まし時計、左手に単三電池を持ち投げるモーションに入った。そのまま目覚まし時計を投げず、単三電池を放り投げた。目覚まし時計は壊れると嫌だったので代わりに単三電池ね。
『んんー』
俺はベッドの上で体を伸ばす。朝起きたらまずこれをするのが日課だ。いや、本能でやっているのかもしれないが...
流石に桜は自分の部屋に行ったらしく俺の部屋には居なかった。関節技のせいで体が少し痛むがあまり支障は無さそうだ。カーテンを開け部屋中を朝の日差しでいっぱいにする。
『朝の日差しは気持ちいいなぁ』
また伸び、スマホの時計をふと見るとまだ午前6時半である。中学校の時なら遅刻ギリギリもしくは遅刻確定時間まで爆睡していたと言うのに...目覚まし時計め、仕事しやがって!
『おーい、お兄ちゃん!起きてる?』
階段の下で涼が叫んでいる。涼は俺の実の妹で今は中学3年生。つまり年子である。周りからの評価は絶大。面倒見がいいからついつい甘えてしまう。
『起きてるぞ!今降りる』
『朝ご飯用意するね』
『はーい』
ドサッ!
下にいる涼にそう言い、俺はベッドから降りた瞬間にすっ転んだ。足元を見てみると先程投げた単三電池を踏んで転んだのだ。
『誰だよこんな所に単三電池置いたの』
俺である。それに置いたでは無く、正しくは投げただ。
『さっきの単三電池か、俺の朝を2度も邪魔するとはいい度胸だな』
※相手は単三電池。
『単三電池覚悟しろ!』
俺は窓を開け単三電池を外に投げた。これでもう邪魔されない。一件落着。さて、そろそろ下に降りないと。ご飯の支度をしてくれている涼をこれ以上待たせる訳にはいかないからな。部屋を出て階段を降りリビングに向かった。
『遅かったね、何してたの?』
『なんでもないさ、少し面倒事に巻き込まれてな』
『へぇそうなんだ』
巻き込まれたのではなく自分が引き起こした問題である。時に人間は物事を自分の都合のいいように解釈しだすのだ。
『そう言えば今日お母さん帰って来ないってよ』
『うん』
『私も今日は帰り遅いから』
『うん』
『ねぇ?聞いてる?』
『うん』
俺はテレビを見ながら朝ご飯を食べている。そんな中話しかけ続ける涼に俺は適当に返事を返していた。だって面倒だったし...
『いい加減にしてよ!』
『はぁ?何がだよ!』
涼はどこか気に触ったらしく俺に怒鳴ってきた。俺も反射的に怒鳴り返した。
『もう知らない!私もう学校行くから』
涼はムッとした顔でリビングを後にした。怒らせるつもりは無かったが怒らせてしまった。後でちゃんと謝ろう。
俺も朝ご飯食べて学校行かないと!
『行ってきます』
『行ってらっしゃい』
『ふんっ!』
挨拶を返しただけなのにこの態度。さっきのが相当頭に来ているみたいだった。手を振って涼を見送っり、俺も準備しようと部屋に戻ろうとした時
『ひゃんっ!』
外から涼の叫びが聞こえた。慌てて玄関を出てみるとそこには尻もちをついた涼がいた。玄関で転ぶなんて子供じゃあるまいし。俺は心の中で笑ってしまった。実際に笑ってしまうと怒っている涼をさらに怒らせてしまうかもしれないからしなかった。
『ど、どうした?』
俺は涼に慌てて駆け寄った。
『これが落ちてて...踏んで転んだだけだから大丈夫』
『そ、それは...』
俺は涼の持ってた物を見て背中中に嫌な汗を大量にかいてしまった。
『単三電池...だよね?』
『あはは...そ、そうだ...』
『何でこんな所に...』
それは俺が窓から投げたからです。朝から邪魔ばっかりする単三電池に腹が立ってついつい窓から投げた単三電池がまさか、さらなる追撃を仕掛けてくるなんて...単三電池恐ろしい...
『こんな所に単三電池を置くなんて変な悪戯好きがいるもんだね』
『あはは...そうだね...』
悪戯ではないんです!事故なんです!犯人は俺なんです!
しかしそんなことは言えるわけもなく誤魔化すばかり...
『まいいや、学校遅れると行けないしもう行くね』
『行ってらっしゃい』
『行ってきます』
今度は笑顔で挨拶を返してくれた。さっきの事は単三電池のおかげで忘れたのかもしれない。ありがとう単三電池。
『やっべ俺も学校行かなきゃ』
スマホの時計を見ると7時半を超えていた。急いで制服に着替えネクタイをしてバックを持ち学校に行く準備を終わらせた。
『電気よし!水周りよし!ガスよし!』
家には誰もいないので最後に出た人がやる約束になっている。けどやるのはいつも俺である。最後に出るのはいつも俺だから。
『鍵よし!』
家の鍵をかけ徒歩で高校に向かう。移動がめんどくさかったので家から1番近くの高校を受験して受かった。徒歩なんと10分で着いてしまう。近くて便利!何とかって言うやつだ。便利と言うか楽と言うか...
『行ってきます』
誰もいない家にそう言い学校に向かった。
高校生活の幕開けなのだ!楽しい楽しい刺激的な毎日が俺を待っている!高校生活謳歌するぞ!
そう今の僕はこんな甘い考えでいたのだった。