休日の朝
郷川はスマホの目覚ましの電子音で目を覚ました。それを止めるために枕横のスマホに手を伸ばすが、間違えてスヌーズにしてしまい、不機嫌になりながらそれを消す。画面の上に表示されている時計に目をやる。
(6:00か……)
平日に起きる時間だった。本来は今から急いで身支度をしなくてはならないのだが、今日は休みであった。どうやら間違えて目覚ましをかけてしまったようだ。
もう少し寝ようか。郷川は少し迷ったが、結局30分ぐらい布団の中で悩み出ることにした。
30分も悩んだのは、布団のぬるま湯のような心地よい温度によってまるで夢を見ているかのような意識だったからだ。しかし寝なかったのは、もう一眠りしようとしてもこれ以上寝てしまえば逆に疲れを癒すどころか逆に疲れてしまうということを郷川は知っていた。高校生の頃なんて休みとなれば一日中寝てもそんな疲労感はなかったのだが、やはり歳をとったのだろう。
ベッドから起き上がり、身支度を始める。
特に家にいてもやることはない。いや、部屋を綺麗にするなり色々あるのだろうが、それは必要なこととは思えなかった。床に散らばっている本も、書類もどこに何か置いてあるか把握してある。つまり整理してしまえば、また場所を把握するのに時間がかかって大変だ。
玄関のドアを開けると、そこには草臥れた灰色の街が広がる。人通りは少なく、目新しい建物は近くにできたコンビニエンスストアぐらいだ。他は建てられて数何年も経っているだろう住宅と、田舎特有の田んぼと道路だ。しかし郷川はこの街を気に入っていた。都会になってくると人通りが多くなってくるため、信号も多くなってくる。そのためよく信号に捕まってしまうのだが、ここなら信号も少なく、そして道路もグネグネとしたワインディングロードとなってくるため車で走って行くのはとても楽しい。ドライブが趣味な郷川にとっては絶好の街だ。
まあ、そんなことをしているから彼女なんてできないのだろうな、なんて郷川は少し嘲るように笑い、玄関のドアを閉めた。