表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

柔雨

作者: 横山裕奈

タイトルは柔らかな雨、という意味の造語です。

 外は柔らかな雨が降っていた。柔らかすぎて、音が聞こえなかったほどに。

 一歩外に出て初めて、雨に気がついた。ふわふわしてる、なんてよく分からない感想を抱いた。

 同時に、自分が雨に濡れたことにも気がついた。ひんやりとしているのになぜか、ほわりと温かい。不思議だ。


 まともに雨に濡れたのは、とても久しぶりかもしれない。いつだって雨は、私を一方的に濡らす存在だった。

 恐怖さえ抱いていた。不意に降り注ぐ雨に怯え、私はいつでも閉じ籠るための傘を持っていた。

 傘はいわば、私を守る大切なものだった。


 この雨は、濡れると気持ちがいい。さしかけた傘を閉じて、そのまま歩く。

 気持ちはいいけれど、時折、ひどく痛い雨粒もあった。そんなとき私は一度立ち止まって、傘を出すか考える。

 だけどすぐに柔らかい雨が癒してくれて、私は再び歩き始める。


 雨が強くなった。ほんの少し外にいただけなのに。家にいた時間の方が長いのに。

 鋭い雨の量も増えた。それどころか、より鋭くなっている。痛い。辛い。哀しい。もう、傘を。

 手を伸ばす。私を守るものへ。


 だけどまた、柔らかい雨に包み込まれて傘をしまう。傷ついても傷ついても、柔らかな雨は絶えず降り注ぐ。

 鋭い雨を避ける手段はないけれど、癒してくれる雨はある。

 私にはもう、傘はいらないかもしれない。そんなものなくても、私は大丈夫。


 私は手に持っていた傘を、投げ棄てた。


 傘を手放すと、なぜか急に弱くなった気がした。私を守るものはもうない。

 怖くなって、清々しくて、戻りたくて、気持ちよくて、取り返したくて、前を見ていたくて。

 もうぐちゃぐちゃで、けれどもこんなに楽しい。


 楽しいね。

 声の方を見れば、私の隣には、私の大事な人がいた。異性じゃなく、ただ大事な人が。私によく似た彼女に笑いかける。

 うん、楽しいね。


 雨はまだ止まない。止むことはない。でも別に、構いはしない。

この小説は、「彼女」への感謝というテーマもあります。

当然この雨は雨じゃない。分かりづらいかもしれないですが、考えていただければ。


「彼女」は私に似ています。似てるなんておこがましいかもしれないけど、そう思ってしまうんです。

顔じゃなく、考え方などが。詳しくは割愛。

読んでくださった方、ありがとうございます。せっかく読んでくださったのに、1人のことをだらだら喋っててごめんなさい!


でも、「彼女」へ。ありがとう。とても、大事な人です。友達とは言いません、軽い気がするので。

ありがとう。一番大事な人です。きっと、これからも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「彼女」がいつまでも変わらぬ愛情で主人公の成長を見守っているように感じました。一体彼女とは?、と謎めいていましたが、ひょっとしたら、主人公、自分のことなのかもしれませんね。自分と向き合って…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ