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虹色L!VEON!!~偶像刷新~  作者: 二階堂彩夏(§A-MY)
Chapter1.センザイリョクを引き出すのはサクラ色の息吹
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Seal83 盤面を刷新する方法ー第2のヒントと自律分散型国家『エルミタージュ』

 ブロックチェーン技術を利用したバーチャル国家は、2010年代後半に創世された。

 約3億年前、大陸移動が起こる以前に、現在の大陸が巨大なひとつの塊であったとされる大陸の名を冠していた。

 それをベースとして2020年代に複数の企業が協賛で設立した自律分散型国家のプラットフォーム。

 たしか、名前はーー


「『エルミタージュ』」

 

 針中野が頭をのぞいたかのように、先回りして発言する。

 黄金はひとつ舌打ちした。

 針中野が楽しそうにほほ笑む。

 

『エルミタージュ』

 

 フランス語で隠れ家を意味し、その中では暗号資産としてThemis(テミス)が使用された。

 このThemisはステーブルコイン、つまり価格が上下しない暗号資産であった。

 あまたのバーチャルキャラクターは国家を創成し、国王を務め、そのキャラクターのファンはそこの国民になる。

 

 もちろん、国というからには、独自の法律、独自の行政サービスの提供も行われた。

 法律や行政サービスといえば仰々しく聞こえてしまうものの、実態は悪口は禁止や人の嫌なことはしないといったものや、国王自らの歌の披露や誕生日のお祝いといったものがあったぐらいである。

 

 また、当該国家は取引状況の確認などをすることができ、各企業の売買活動の効率化につながった。

 だからか、協賛以外の企業も自社の看板バーチャルキャラクターを誕生させ、国家を創成していた。


 このようなバーチャルキャラクターの隆盛には、アイドル声優の衰退が少なからず関係している。

 声の演技が優れていれば文句はない。

 顔やスタイルなどどうでも言い。

 歌が上手いキャラクターでなければ、音痴でも構わない。

 むしろ、キャラクター以外の雑音にならなければいい。

 

 というのはいまは昔の話だった。

 アイドル声優と呼ばれるビジネスの枠組みが最初に現れたのは、自衛隊が民営化され、そこに参入した芸能界が戦闘パイロットをアイドルに教育し、日本を守るといった内容の同名ライトノベルのアニメ化によるものだと言われている。

 

 それ以前に作中のキャラクターが主題歌を歌ったり、キャラクターソングがなかったわけではない。

 だが、アイドルアニメと明言され、その作中のアイドル同様に女性声優がダンスや歌のパフォーマンスを行うのは、そのときが初めてだった。

 今までになかったアニメの体験型ビジネスは反響が大きく、実際、当時ライブには多くのファンが駆け付けた。

 また、それは映像作品として販売され、売れに売れた。

 

 その後、声優本人によるイベントビジネスが一般化されていった。

 特に大きな転換期は、2010年代。

 アイドルアニメやゲームから派生したアイドルを生身の人間がパフォーマンスを行うライブがこれまでに比べて、すさまじいほどの経済効果をあげた。


 ここから、本格的に声優はマルチタレントと化し、歌にダンスに楽器と多種多様な能力が求められるようになった。

 いいことばかりではない。

 アイドル声優に関しては、苦言を呈されるケースが多々あった。

 主として言われたのがやはり声優としての演技力である。

 しかし、事務所のサンプルボイスなどを聞けばわかるが、いわゆるアニメ声や娼婦の声、無個性と揶揄される以外の声も出せる声優の方が大半だ。

 

 官公庁向けや企業向けのナレーションサンプルは、アニメーションのようなキャピキャピした演技ではなく、自然で落ち着いた別人のような演技であり、幅広いスキルを持ってるのがわかる。

 だが、その声をディレクションされることはほとんどない。

 そのような席は、いわゆる世間がまっとうな声優だと考える者にとっていかれる。

 

 届かない声はないのと同じだ。

 結果、そのようイメージだけがはびこってしまい、不本意な評価につながる者がでてきた。

 誰が悪いの話ではない。

 強いていうなら、登場人物全員悪かったのかもしれないし、全員悪くないのかもしれない。

 需要がなければ供給は生まれず、供給がなければ需要も生まれない。

 

 ただ、生身である以上避けて通れないのが老化と恋愛問題であった。

 時は彼女たちを踏みつけにし、残酷な足跡を残して去っていく。

 

 若さに委ねていただけの者はとって変わられる。

 美人指数は激減していき、ただのおばさんになっていく。

 実際、アイドルコンテンツやそれに類似するものの中には、声優のライブパフォーマンスが前提とされ、オーディションの段階で何歳以下というケースもあった。

 

 そして、恋愛問題。

 声優はあくまでも人間であり、職業である以上各々の人生がある。

 だから、本来日常生活と仕事は切り離さなければならない。

 だが、アイドルじみた売り方をしていたせいか、キャラクターと同一視しているケースが散見された。

 

 それにともない、ひどいところだと何歳まで恋愛禁止という暗黙のルールがある事務所も出現した。

 だからか、アイドル性を売りにしている声優が結婚した際には大いに盛り上がりを見せた。

 インターネットニュースサイトやマスコミがこぞって書き立てた。

 大半は、ネタとし遊んでいるにすぎなかったが、なかには本当に裏切られたような錯覚を受けたものもいた。

 

 それは過去に発生している傷害事件やステージ乱入事件からもうかがえる。

 これらに閉口していたのはファンだけでない。

 事務所関係者もである。

 この問題を解決することができる救世主が、バーチャルキャラクターの存在だった。

 本人が表舞台にでないため、容姿は関係なく、なおかつ、演者の安全性も確保できる。

 だが、思惑はうまくいかない。

 

 本職の声優が、『アニメのキャラクターと会話ができる』というコンセプトの元始めた企画は成功したとはお世辞にも言えず、VRデバイスを用いた本来の意味をもったVRアイドルについてもそこまで浸透しなかった。

 代わりに声優が本職ではない、過去に別の媒体で活動していたトークがうまい者が台頭してきた。

 当該者は、イラストレーターが用意したその容姿で人を惹きつけ、その容姿に負けず劣らないトーク力や企画力で盛り上げ、さらにはスーパーチャットを行った者の名前を読み上げたりと、少々失礼な言い方になってしまうが、オタクを転がすのに長けていた。

 

 過去の失敗例と大きく違うのは、キャラクター自体はあるにはあるが、そのキャラクターの設定は早々と放棄している点であった。

 結果、バーチャル的な要素は小指の先程度で中の人の性格や日常が全面に押し出され、本来の意味から逸脱してしまった。

 バーチャルキャラクターに対してもさまざまな反応があった。

 

 中の人間に依存するというキャラクターの私物化。

 絵の皮を被った自己顕示欲の塊。

 二次元のなりそこない共。

 絵畜〇。

 

 といったような辛辣な意見があった一方で、かわいい、救われた、結婚したい、神、てぇてぇなどという正の方向の意見も多くあった。

 その正の感情を持った者たちが支えた結果、オタクたちのなかでバーチャルキャラクターは流行した。

 このバーチャルキャラクター事業は、新規会社の設立等で表にはなっていないだけでシードマネーの投資を含めると、多種多様な企業が参入することとなった。

 

 企業が参入する以上金銭は切っても切れない関係である。

 当初は、動画投稿サイトをメインとして活動していたが、手数料が痛いのと、当該サイトに生殺与奪を握られているのがあまり好ましくなかった。

 このままではまずい、という意見から発展して作られたのが、『エルミタージュ』だった。

 

 お上に目を付けられる前に、先行者利益を得、撤退する。

 それが商売の鉄則である。

 『エルミタージュ』で国王たるバーチャルキャラクターはこれまで以上に熱心に活動を重ね、国民は税金という形で当該バーチャル国家に納税を行った。

 国王たちでアイドルグループを作り、バーチャルキャラクターアイドルユニットを作り、本来のVR技術を活用し、バーチャル空間で活動することもしていた。

 

 わざわざ、ライブ会場に行く必要がなくなったのである。

 

 外部からみれば、おかしい、えぐい商売といった意見もあったが、需要と供給が一致しており、法律に抵触していない以上なんの問題もない。

 それらの国民であった者にしてみれば、好きでお金を出している以上大きなお世話である。

 ただ、一般人にまで届いてはおらず、局所的な流行であった。

 

 バーチャルキャラクターを用いたコマーシャルが流されていても、「へぇー」といった程度で、すぐに忘れる。

 要するに自分に関わりがないことに興味がないのだ。

 どうでもいいと言い換えてもいいのかもしれない。

 

 だが、善良な一般人が一番性質が悪い。

 それは裏を返せば、ひとたび自分に関わってくると大きい声を出すということだ。

 如実に表れたのが『パステル』の登場だった。


「注目は凋落のはじまりですの」

 

 針中野の言葉に黄金のみぞおちがゾクリ、と冷えた。


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