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虹色L!VEON!!~偶像刷新~  作者: 二階堂彩夏(§A-MY)
Chapter1.センザイリョクを引き出すのはサクラ色の息吹
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Seal65 うさぎの仮面

『Pieuvre』のバックヤードで、ましろはあくびの口をてのひらでおさえた。

 連日の夜更かしで寝不足気味だった。

 貝塚橙子について調べていたからだ。

 

 彼女のことを訊いてから、紫歩は明らかにその話を避けていた。

 黄金にも訊いてみたが、困ったような笑みを返すのみで、何も証言が得られない。

 たしかに死者の介在している会話は少なからず気の滅入るものであるが、それとはなんとなく違うような気がした。

 結局、彼女と紫歩との間になにか大きなことがあったらしいことは間違いなかったが、ついに核心に迫ることができなかった。


 そうなってくると、ましろ自身で調べるしかない。

 一番手っ取り早いのはういに訊くことなのだが、それは最終手段だった。

 彼女には昔から世話になっていたが、この件に関しては、もう少しましろ自身だけで頑張りたかった。

 漠然と姉の事故と何か関係しているような気がしたからだ。


 けれども、依然として手掛かりは得られない。

 そりゃそうだ。

 携帯自体は大学デビューにあたりスマートフォンに買い替えた。

 が、ましろにはインターネットを活用する基本的能力がなかった。

 

 そのため、唯一の手掛かりとなるのは数年前に発刊した雑誌のみであった。

 しかし、VOTが掲載されているページを見ても、インタビューページは橙子の出身が福岡だとか漫画家であるだとかあたりさわりのないことしか書いていない。

 写真のページも、橙子は他のメンバーと同じように笑っているのみである。

 紙面越しだが、その表情にうそはないように思えた。

 代わりに知るつもりはなかったが、どうしてもとあるメンバーだけがつかさと隣り合っている写真がないことに気付いた。

 NGでもだしているのか、と疑いたくなってしまう。


 紫歩のおびえ方からして、初めはいじめかなにかだとましろは思っていた。

 しかし、すぐにその考えは棄てた。

 根拠はなかったが、それだと黄金が困ったような表情をしない気がしたからだ。


 おそらく彼女の性格からして、口頭かなにかでましろを迎撃してくる。

 そして、正攻法でぶつかれば、まず負ける。

 それは十分に理解していた。

 けれども彼女はそうしなかった。


(あれはなんだか余計なことを言わないように、って感じがしてたんだよね)


 そして、手掛かりではあるものの、殺した発言をした千歳には聞けるわけがなかった。

 もっとも、千歳の言葉も謎だった。

 貝塚橙子ではなく、今池燈を殺したという発言の意図についてまったくわからない。

 貝塚橙子も今池燈も同一人物なのでは、と思ってしまう。

 次から次へと謎が生じる。

 ましろはため息をついた。


(橙子さんっていったい何者なんだろうね)


 手元にあるうさぎの仮面に問いかけても、答えてくれそうにない。

 と、ましろがうさぎを相手に悶々と思考を巡らせていると、足音共にローズ系の甘い匂いが漂ってくる。

 振り返ろうとすると、それより前に目のあたりが背後から指で覆われた。


「だーれだ」

 

 聞きなれた声だった。


「忍海さんですか」

「ぴんぽんぴんぽーん、大正解!」

 

 視界が解放され、振り返ると既に狐面を装着した忍海が腰の後ろ辺りで手を組んで立っていた。


「怖い顔だね」

「私、いま怖い顔してましたか」

「うん。そのうさぎの仮面みたいに」

 

 忍海がましろの手許の仮面を指さす。

 いわゆるアニメチックなかわいらしさとは無縁で、和風の墨と赤い絵の具で柄が描かれたものである。

 しかも、くりぬかれた目の周囲に隈取りが付されており、怖さが倍増している。

 自分はそんな顔をしていたのか、と思い知らされる。


「考え事をしてたんです」

「考え事?」

「はい」

 

 応えて、ましろの頭にある提案が芽生えた。


「忍海さん」

「ん?どったの、ましろん?」

 

 やわらかい視線で、忍海がましろを見た。何故か動揺した。


「……すみません。言おうとしてたこと忘れちゃいました」

「ふぅん、そっか。思い出したら、また教えてね。なんかそう言われると気になるから」

 

 ましろは心の中でホッと息を漏らした。

 千歳の言っていることが本当であれば、ましろ自身が輝赤の妹であることを忍海は知っていることになる。

 だから、同じVOTのメンバーである橙子のことを忍海に訊くのはそこまでおかしくはない。

 おかしくはないのだが、その余計な一言だけで、なんだか忍海が黄金とのつながりを嗅ぎあててくるような気がしたからやめておいた。

 

「んー、ましろん、なんかアタシの顔についてる?」

「ついてないですよ。何でですか?」

「いや、やけに熱心に見つめてたから」

「そうでしたか?」

「そうだよ。……へんなの」

 

 忍海が首を傾げた。

 傾げたかと思うと、ポン、と手を打った。


「あー、そっか、たしかにへんにもなるよね。そいえば、今日はましろんのデビューの日じゃん」

「えっ?」

 

 勝手に納得した忍海にましろは戸惑う。


「アタシも緊張したなー、初めての時は。懐かしいなー。たしか五年もたってないんだっけ」

「初めて? 忍海さんはいったいなんの話をしてるんですか?」

「ましろんが今日から舞台に上がれる話だけど」

「えっ?」

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