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第四章(二)

 飛竜から降り立つと、老婆はすでにそこで待っていて、レオアリス達の姿を眺め、深い皺に笑みを刻んだ。

 曲った腰を更に折るようにして、頭を下げる。


「子供等が、喜んでおったよ」

「あいつらは、何だったんだ?」

「あの子達は、あの村の葡萄の若木での。いつも丁寧に心を傾けて世話をしてくれる村人達を、大層好いておる」

「……葡萄……?」


 眉を顰めて老婆の顔を見返したものの、子供達のころころと似通った姿を思い出し、レオアリスは思わず吹き出した。


 房に連なった葡萄の粒が子供の形を取ったら、確かにあんな感じになるかもしれない。


「そりゃまた、頑張ったもんだ」


 蔦を這わせて家を覆い、子供の姿を取って助けを呼びに行く。


 中々どうして、下手な剣士などより、ずっと役に立つではないか?


「子供等から、お礼が届いておるよ。ほら」


 老婆が指差した先の草の上に、幾つかの葡萄の房と、口を皮で覆った甕が一つ、置かれていた。

 クライフが甕の蓋を持ち上げて覗き込み、嬉しそうな声を上げる。


「うおー、こりゃ、ヤンサールの葡萄酒じゃねぇか。すっげぇ上物っすよ」


 少し生意気そうなところのある彼等の姿をもう一度思い返して、レオアリスは口元を緩めた。

 酒は残念ながら飲めないが、葡萄の房を付けるあたり、気が利くのか小生意気なのか。


「……有難くいただいとこう。――貴方は」


 眼を向けた時、既にそこに老婆の姿は無かった。


 さわりと柔らかく枝葉が擦れる音に眼を上げると、年経た古い大樹が、白み始めた空を背負い、風にゆっくりと身を揺らしていた。




 

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