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旅にはハプニングがつきもの

「弁当の準備が整いましたー」

美緒の部屋の扉を開けて中を見ると、

園木が正座させられていた。

深刻な雰囲気?

「あら須藤さん早かったんですね」

「え、えぇまあ、はい」

口調がなんかいつもと違うぞ。

怒ってる時はこうなるのか?

「でも、お母様!生きていくだと思って!」

生きていくため!?

そんな重い話してたの!?

「黙りなさい、ダメよ。それでも許せないわ」

許せない!?

生きていくためが許せないって何!!?

「あの〜これはどういった……」

「よく聞いてくれたわ須藤さん」

聞いちゃいけないことだったのか?

「実は………」

ゴクリ…。

唾を飲んだ。

「可奈が私のプリン食べちゃったのよ!」

……………は?

「だって、その時はお腹が空いていて!食べないと死んでしまうような事態だったんです!」

…………はぁ…。

「理由を聞いた俺が馬鹿でした」

「どうしてっ!?」

「どうしてもなにも、プリン程度で何をもめて……」

ハッ!

今更気づいたがこの家金持ちだから相当高いプリンだったのでは?

そうしたら程度とも言ってられなくなるな……。

「最後のプッチンプリンだったのよ!?」

そんな心配は無用だった。

「はぁ…買い出しの時にまた買ってきますから」

「えぇ〜、私は須藤さんが作ったプリンが食べたいなぁ♡」

それセリフは少し勘違いしそうなのでやめてもらいたい。

「ずるいですお母様!私も食べたいです!」

なんの争いですか?

「わかりました。俺が作ればいいんですね、作りますから今は仲直……」

「やったわよ可奈!」

「はい!お芝居成功ですねお母様!」

今の言葉には誰であろうと反応しただろう。

「お芝居だって?」

『あっ』

2人で声を揃えてももう遅い。

「2人とも一週間おやつ抜き!おやつは買ってきません!」

ありふれた罰ではあった。

子供にとっての話だが。

「須藤さん!それは一番してはいけないことなのよぉ!」

「そ、そうよスドー!おやつは食べなければダメなものなんだから!」

どういう理屈か知らんがそんなのは通らん。

その後もゴチャゴチャうるさかったので、

「一週間我慢したら特製プリン作りますよ」って言ったら黙った。

そして現在、上空。

もっと詳しく言うなら上空を飛んでいるヘリコプターの中。

「まさか生きてるうちにヘリに乗る日が来るとは」

言葉からはわかりにくいかもしれないがかなり興奮している。

毎日する興奮とは違う意味の興奮だ。

ウキウキワクワクの方だ。

「そうなの?でもこれからは珍しくなくなるわよ」

そうでしょうね。

だって自家用ですしね。

「それで今日はどこへ?」

「青森県の弘前公園よ。うちの土地なの」

うちの土地?

嘘だろ?どんだけ金あるんだよこの家。

弘前公園とは、現在行ってみたい桜の名所東北地方第一位。

ソメイヨシノや、シダレザクラ、ヤエザクラなど52種、約2600本が植えられている。

夜になれば弘前城天守と夜桜がライトに照らされこれもまた絶景なのである。

読者の皆様長々と申し訳ありません。

などと考えていると、ゴールが見えてきた。

「さあ、着くわよー」

わー、ヘリポートがあるー(棒)

まあ自分の家の土地だからいいのだろう。

無事到着。……1人以外は。

「おえぇ。…うぷっ」

ヘリで酔ったのかよこの園木アホは。

折角の提案台無しじゃないか?

そう思ったが言うのはやめておいた。

「うええぇ。ス、スドー見ない…で」

なぜ嘔吐はダメなのに、裸は大丈夫なのだろうか。

不思議な奴だ。世の中の女性の方々はこうならないようにしてください。

「へいへい、目は瞑っておくよ」

見てるとコッチまで吐きそうになるからな。

「もう、困った娘ね」

わざとらしく美緒が怒ってみせた。

「ごめんな、さい。お母さ…うぷ」

間に受けんなよ。

「冗談よ。少し休みましょう」

「いえ、大丈夫で…す」

少しフラフラしている。

「休もうぜ、園木」

優しく笑いかける。

「キモッ」

「酔っててもそこは的確にくるんだ!?」

汚物を見るような目で言われた。

さっきまで汚物を出してた奴に。

「本当に大丈夫です」

大丈夫なのかよ………。

「心配して損した」

「召使いなんだから、心配して当然よ」

「もう二度と心配しない」

別にキモイって言われたことにキレてるんじゃないぞ?

全然気にしてないから。本当に……。

「まあまあ、早く行きましょう」

「はぁーい!!」

「かしこまりました」

3人で歩きだした。

するとすぐにデカい看板が見えた。

『園木家御一行様』

特等席ですか!

恥ずい!

俺まで変な目で……。

いや、男性陣からは敵視されてる気がする。

「少し時間がかかってしまいましたね」

誤魔化すために話しかけたのだが、逆効果。

男性たちの怒りはMAXになったらしい。

みんながやけ酒している。

「あら?もう12時?う〜ん、お昼って感じじゃないわよねぇ?」

「ですね。俺の後ろに吐いてた奴もいますし」

「なっ!スドーうるさい!」

背中を思いっきり叩かれる。

「痛ッ!だって事実でブッ!!?」

振り向いた瞬間に顔に一撃。

拳……ではなく大きめの石。

いい護身術だ、よくできました。

そのまま地面に倒れる。

K.O!

「ごめんなさいお母様、大きな須藤にもつが増えてしまって。どうせならここに置いていきましょう」

「残念ながらGゴキブリ並の生命力なもんで」

鼻が痛い。鼻は涙腺が一番緩むんだよな。

「あら、そう。じゃあ行きましょうか」

鬼畜か、この野郎。

すぐそこだから問題ないけどさ。

なかなかスペースがある3人で座っても余るくらいに。

「綺麗ですね!お母様!」

やはりはしゃいでる。

こんなことはなかったんだろう。

「あっ、でもお母様の方がお綺麗ですよ?」

どこのバカップルだよ。

まあ、それでもいいんだろう。

今日くらいは、親と楽しむことを望んでいいんだろう。

俺はもう望むことすら許されない。

それが許されているコイツが少し羨ましい。

ほんの少しだがな。

「ねえ、可奈。少し話があるのだけれど」

少し重たい口調。

「?なんですか?お母様」

俺がいていい雰囲気じゃないな。

ゆっくり立ち上がって歩き出す。

「須藤さん?何処へ行くのかしら」

行く前に美緒に聞かれた。

「いえ、少し他の桜が見たくなっただけです」

背を向けながら答えた。

「そう……。ありがとう」

その言葉に返事など要らなかった。

「?」

一方園木は全くわかっていなかった。

しかし、俺は気にせず奥へ。

「可奈……、ごめんなさい。私、あの人が死んでから仕事ばかりでアナタの事、全然考えてあげられなくて。この前須藤さんに言われちゃってね。「少しは考えてあげて下さい」ってね」

「スドーが?」

「えぇ、私にはこの程度のことしか出来ないけれど……アナタを愛している。これだけは忘れないで」

「いいえ、お母様。この程度のことではありません。家族・・でお花見です」

少し涙目で園木が言った。

「スドーが……。アイツ馬鹿ですね。私はそんなこと頼んでないっての……。ほんと、優しい馬鹿」

涙がこぼれた。

「私、今日お母様に誘われてすごく嬉しかったです。だから……仕事の合間でいいから、またどこか連れて行って下さい!」

涙をこらえ必至に笑顔で言った。

「えぇ、もちろんよ。また行きましょう3人で!」

2人で抱き合った。

「それにしてもスドーって空気が読める奴だったんですね」

「読んでくれたのよ。彼きっといい夫になるわよ?」

美緒がニヤリと笑う。

園木はその言葉に頬を赤らめた。

「だ、だからなんですかお母様!?スドーの将来なんか私には関係ありません!」

「本当にそうかしら?」

そこに一周した俺が帰ってきたのだが、まあこの一周というのは嘘で近くの木で盗み聞きしてたのだ。

途中で会話が聞こえなくなったので終わったんだよ思って、帰ってきた。

「あれ?もめごとですか?芝居じゃないですよね」

「なっなんでアンタ帰ってくるのよ!空気読めバカー!!」

ポーチが思いっきり顔面に当たった。

「おぶぅっ!?」

またもいきなりで地面に倒れてしまった。

「アンタ……不憫だな」

見かねた観光客の1人が手を差し伸べてくれた。

「お気遣い感謝します」

「いえいえ、頑張ってください」

「………………はい」

頑張って。というのは普通こんな使い方はしないだろうな。

「痛えなぁ、何度も何度も」

「空気読めないアンタが悪いのよ!」

「空気読むってなんだよ!なんかお前顔赤いし!」

「はぁ!?あ、赤くなんかないわよ!」

それを見ていた美緒は呆れていた。

「先は長そうね」

まだギャーギャーと言い争っている。

「2人とも、お昼にするわよ」

美緒のその言葉で静まった。

特別な能力でもあるような一言だ。

弁当の蓋を開ける。

「まぁっ、おいしそう!さすがは須藤さん!」

「えっ、はい。どうも」

自分の端末で「空気を読む」について調べていた俺には、不意打ちのようなものだった。

ちなみにこのバイトでは端末の代金は払ってもらえることになっている。

課金は例外だが。

「ダメですお母様、毒が入っているかも!」

「そんなもん入れねーよ!!」

なにが気に食わなかったのか適当なことを言い出した。

「一応は冷めても美味しく食べられるものにしましたが、嫌なものがありましたらこの蓋にお乗せください」

俺が言った瞬間。

驚異の速度で野菜が蓋の上に並んだ。

「……………」

「……………」

「……………」

しばし沈黙。

「ミッションコンプリートですね、お母様」

「ええ、よくやったわ可奈」

その言葉のために開いた2人の口にピーマンをねじ込んだ。

「むぅっ!?」

「んぐっ!?」

驚いた顔の2人にニッコリと微笑み俺が一言。

「野菜嫌いなのはよーくわかりました。1回ずつねじ込まれるのと自分で食べるのどっちがいいですか?」

野菜嫌いが通るのは小学校までだ。

「は、はい!須藤さん。私は食べないという選択肢を希望しまっ!?」

ふざけたことを言い出したので人参を(ry

「美緒様?俺が出した選択肢は2つです」

狂気に満ちた(?)笑顔だった。

少なくとも2人にはそう見えただろう。

「むぁい……。自分で食べま…ん?この人参甘い」

「うちにも子供いますから」

「あっ、裕太も野菜嫌いなんだ!」

「違う。野菜嫌いだったんだ」

色々な調理法をつかって克服させた。

2年以上かかったが……。

「やっぱり料理だけはすごいわね。

お母様、私にも野菜を…ってない!?」

「美味しかったぁ」

「私も食べたかった」

少し涙目になっていた。

「いい?可奈、この世は強食弱肉よ!」

「逆ですよ!」

一応つっこんでおいた。

「え?強弱肉食?」

「弱肉強食!強いものが弱いものの肉を食べるって意味ですよ!ふざけてるんですか?」

「あー、そっちだったのね」

ため息をグッとこらえる。

「園木、今度野菜料理作ってやるから」

「本当っ!?ありがとうスドー!」

こんなことで礼を言われてもなぁ。

複雑な気持ちになる俺と笑顔で喜ぶ園木、そしてそれをニヤニヤ見つめる美緒。

他人から見たら変な3人だった。

その後は色々な場所へ行き、たくさんの桜を見た。

色々な気持ちを胸にーーーー。

そして、6時半。

現在は2度目の上空。

なんか忘れてるんだが……。

「あぁ〜〜〜〜!!」

おもわず叫んでしまった。

「ど、どうしたの?」

「いや、その冷蔵庫の中身が」

「もしかして……」

「なくなりました」

軽く言った俺に対して2人は青ざめていた。

「スドーの野菜料理が………」

「須藤さん以外の人が作った料理なんか無理」

や、病んでる?

「そんなショックを受けなくても……それに、買ってくればいくらでも…」

俺は自分の財布を見て絶句した。

1470円

「お金がないの?材料費くらいだすわよ。それに食べるのはほとんど私達なんだし」

「す、すいません」

ヘリの運転手さんに頼むと、すぐにOKしてくれた。

ボーナスでるんだろうな。

2時間後、家の近くにあるスーパーに着いた。

園木は吐いていたので、美緒と中へ。

できるだけ安いものを選んだのだが、買いだめとなればやはり相応の額にはなる。

早急に済ませ、外に出る。

「おーい、園木待たせ……ん?」

チンピラに絡まれていた。

「嬢ちゃんキレーだねー。俺らと遊ばない?」

「あ、あのっ。私は……」

などというお決まりの会話をしていた。

「美緒様、先にヘリに戻っていて下さい」

「へっ?」

それだけ言って現場にむかった。

まあ、すぐそこなんだが…, 。

「よお、チンピラ君達。お元気?」

「あ?何だお前」

「悪いねー、コイツ俺の連れなんだわ」

肩に手を乗せる。

「ス、スドー!?」

「何だお前って聞いたんだよ。なめってと」

ゴスッ

鈍い音。

「そうかそうか。でも雑魚に興味はないなぁ」

的確にみぞおちに入れた。

「なっ!てめぇらやれ!」

一斉に殴りかかってきた。

「問題だ、ゴミって束ねると何になると思う?」

「あ?」

「不正解。正解はゴミでした」

きっちりとみぞおちに入れて、K.O。

「ひっ!わかった。その女に手は出さない」

「その女に?違うな、俺が求めるのはそれじゃない。お前らのリーダーは誰だ?一番上は」

「鮫川祥希さんだが……」

「あー、鮫ちんか」

確か中学の時に瞬殺した。

「じゃあ、言っとけ。この街でふざけたことしたらその首狩るぞって」

「ひっ、ひぃぃー!」

逃げていった。

「さて、掃除終わり」

パチパチパチ。

拍手が送られた。

「すごいわ須藤さん、強いのね」

「いえ、誇れるものじゃないですし」

「全然怖くなかったけど……あ、ありがとう」

「泣きそうだったくせに」

「そんなわけないでしょ!」

「へいへい。じゃあ早く帰りましょうか」

「そうね」

すぐさまヘリに乗り、帰宅した。

家に着いた直後、園木はトイレへ走った。

そして、夕飯を作り、風呂を手伝い、洗濯をし、掃除もし、その他諸々を全てこなしてベッドに横になった。

寝る前に一言叫んだ。

「だぁぁぁ!!このバイトキッツ!」

バイト残り日数361日。

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