忙しい秋は終わらず、倒産の危機だってよ
「まずいわねぇ」
珍しく唸りながら頭を抱える美緒。
しかも風呂で、そーゆーのは部屋で悩んでほしいよ。
まるで理由を聞いてほしいみたいじゃないか。
コッチをチラチラ見てるから聞いてほしいんだろうけども。
ここはあえて無視しとく。
「さて、可奈洗い終わったし湯船行こうぜ」
「えっ、うん。でも……」
「湯船、行こうぜ?」
「はい」
ニッコリと微笑みながら。
美緒の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「う、う〜ん。困ったなぁ」
必至か。
だがしかし、俺はそんなに甘くない。
「今日は疲れたなぁ。掃除して早く寝たい」
「まあ、文化祭の片付けだったからキツいのはしょうがないわよ」
「このままだと本当にまず」
「あー、腰痛いわー!」
わざと被せる。
美緒はすでに涙目。
「あ、あの和也く」
「さて、温まったし出ようかな」
「聞いてよ!」
泣き泣き言ってきた。
「だって美緒様わざとらしいんですもん」
「本当に危ないのよ!うちの会社が!」
スケールでけぇなもっと小さいことかと思ってた。
おやつがなくなったとか。
ありそうだからな。
「じゃあ部屋で待ってますんで、マッサージの時に詳しく教えてください。それじゃ」
俺はそう言って風呂を出た。
「うぅ、和也君が酷いよぉ」
「お母様。あれが和也です。悪魔です」
聞こえてるが無視。
マッサージで仕返しするからな。
「それで?会社がなんなんですか?」
「それが最近の売り上げが悪くてこのままだと倒産するのよ」
「はぁ、やっぱりおやつ……はぁっ!?倒産!?」
「えぇ、倒産」
それは本当に困るな。
俺も困る。
「うちの案の商品と似てるものを出してる企業があるのよ。スパイとしか考えられなくて」
「スパイ……ねぇ」
マンガの読みすぎだと言いたいがこの状況じゃ捨てがたい選択肢だしなぁ。
「それはスパイしかないですよお母様!いっ、いたたた!痛いよ和也!」
「うるせえよ俺は悪魔だぞ」
「ごめんなさいいぃ、冗談だからぁ!」
手の力を緩める。
可奈は瀕死状態。
「倒産したら俺って」
「そうね、クビにするほかなあんっ!ないわ」
話してる途中で喘がないでくれよ。
最近なかったのに。
「クビは困ります!俺が解決します!」
「ホント!?和也君ならそう言ってくれると信じてたわ!よろしくね!」
猛スピードで部屋に帰っていった。
ハメられた気がするんだが…………。
「おい可奈、お前も戻れ」
返事がない。ただの可奈のようだ。
諦めて隣で寝させることにした。
コイツ地味に重くて運ぶのめんどくさいから。
翌日
「まず、椎名さんはありえない」
「どうしてです?」
「私の秘書だからよ、信頼できるわ」
「わかりました、その人呼び出してください。会社に」
「えっ?今日は休みよ?」
「いいから」
「椎名さんを疑ってるの!?」
いきなりでかい声はやめてくれよ。
ビビったわ。
「十中八九その人ですね」
「理由は?その理由に筋が通ってなければ呼び出さないわよ」
マジな顔だな。
これが可奈の怖がってる美緒か。
「まずその人が貴方に一番近い存在だからです。どうせ会議とかめんどくさいから任せているんでしょう?」
「うっ」
図星なのかよ。
勘だったんだけどな。
「次、信頼できるからです」
「どういうこと?」
「美緒様はどうして彼女を秘書にしたのですか?」
「それは……仕事も頑張っているし、努力家だったからよ」
「既婚者ですか?」
「いいえ、未婚よ」
「なら、頑張る理由がありませんね。自分は女で結婚したら子育てをしなければいけない環境でそこまで頑張るはずがない。結婚は会社を潰してからするつもりだったのでしょう」
既婚で子供が大きいならまだ頑張る理由になるが、未婚でそれほど頑張るなんてことは賢い人ならしない。
「最後はフラグです」
「フラグ?」
「美緒様が信用できる。ありえないと言った時点でフラグは立ってます。足元を掬われるってのはそーゆーことですよ」
美緒は絶句した。
自分の一番信用できる秘書に裏切られている可能性が見えてきたから。
「さぁ、会社に呼び出してください。俺が1人で行ってきますから」
「……………わかったわ」
電話で呼び出した後、そのライバル社の名前を聞いた。
平野グループ。
社長は平野梟。
打倒泥棒梟。
捕食される側、鼠の反撃だ!




