弟とショタコン雇い主
玄関で靴を履き替え、校門を出る。
「それで?バイトの仕事内容だったか?」
「えぇ、まずは…今日からアナタが自分の家にいれる時間は2時間よ」
2時間か…夕飯を作って洗濯物をするだけだから楽だろう。
「へぇ〜、それで?次は?」
「親に説明とかしなくていいの?」
「ん、あぁ、親はいない。…死んだ」
「えっ?」
まぁ一般人として普通の反応だわな。
「なんかごめん。暗い話になっちゃって」
「いや、もう受け入れたことだ。それにしてもお前にしては素直すぎないか?キモチワルイぞ」
わりとガチめに。
「なぁっ!アンタまだ私のこと全然知らないでしょうが!私だって真面目な話ぐらいするわよ!!」
「あーぁ、シリアスな雰囲気がぶち壊しだよ」
「壊したのアンタでしょうが!」
「こわいこわい。気の強い雇い主様だな」
「アンタって本当に失礼よね」
「お前より頭はいいがな」
軽く嘲笑すると、ムッとした表情で睨んできた。
感情が顔に出やすいやつなんだな。
「まあまあ、そう怒るなよ。あっ、ほら着いたぞここだ」
「あらもう着いた…の……ってボロ!」
素直でよろしい。
「そりゃあ、親なしで2人だからな。生活もギリギリなんだよ」
「あ、あぁそうね」
無理しすぎだろ。
「ただいま裕太!」
「おかえり、兄ちゃ……」
「お、お邪魔します…」
「えぇ〜〜!?」
驚きすぎだろ、声デカイとまた瀬波さんに怒られるぞ、俺が。
「兄ちゃんが…同級…いや、女の人を……」
なんか震えてないか?
「僕の人生山あり谷ありだったけど楽しかった」
「いやいや、なんだよそれ」
「え?だって明日は天変地異が…」
「起こらねーよ!失礼だな!」
被せて否定する。
すると横から言葉の毒がとんできた。
「まあ、アンタが言えることじゃないけどね」
おっしやる通りで…。
「2人はどこで出会ったの?初デートは?そ、そのチューは?」
恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。
「チ、チューなんかしてません!」
「いや、待て。否定するところがおかしいだろ」
「えっ?あ、そうね。取り乱したわ」
今までは取り乱していなかったらしい。
「裕太よく聞け、この人は前言ったバイトの雇い主、園木可奈だ」
「よろしくね、裕太くん」
ニコッと笑い!裕太に話しかける。
んー、営業スマイル的な?
まあ、そんなことはどうでもいい。
「へ〜、そうだったんだ。兄をよろしくお願いします、可奈お姉さん!」
「おっ、お姉さん…」
相当良かったんだな。
「もう1回!」
「?、お姉さん?」
「もう1回!!」
「お姉さん…目が怖い」
指摘された時にはもはや園木の目は
ショタコンのソレだった。
「はいはい、裕太が困ってるから…。
でな、裕太。バイトの関係で今日からは放課後2時間しか家に居れないんだ。本当にごめん」
「何言ってんの兄ちゃん。今更、だよ。今までだってほとんどいなかったじゃん」
「それは…そうなんだが、今回のはっ」
「大丈夫。兄ちゃんは僕のために頑張ってくれてるんだもん。僕だって少しぐらい我慢しなきゃ!」
「裕太……」
「それに、2人の時間を多くしてあげたいしさ」
今まで黙っていた園木もここだけは口を開いた。
『それは、いらない!』
ワーイ、息ピッタリ(棒)
何回目だよ…。
「あははっ!さ、早くご飯作ってよ。仕事、行くんでしょ」
優しくていい弟もったな俺。
「おう!すぐ作るからな!」
ーーー10分後
作っている間になにか話してたみたいだったが、料理の音で聞こえなかった。
特に重要なことでもないだろう。
「ほら、出来たぞ。よく噛んでな」
「うん!ありがとう!仕事頑張って」
「おう!じゃあ行くぞ」
食うき満々の園木に言った。
「アンタのはアンタの家でアンタのために作ってやるよ」
「そんな誰かの名言みたいに言わなくてもわかってるわよ!」
その誰かの名前…コイツ覚えてないだろうな。
「あっ、そうだ。裕太、朝飯は朝作りに来るから心配すんな。あと、早めに寝ろよ」
「わかってるよ、心配なのは兄ちゃんだよ」
弟に心配される兄の画。
「それじゃあ裕太くん、またね」
「バイバイ、可奈お姉さん」
手を振って別れていた。
さて、仕事に集中しなきゃな。
「で、ここからどのくらいだ?」
「3分」
「…………えっ?」
「3分だって。ほら、うち見えるじゃない」
本当だ、今まで気づかなかった…。
近いなら2時間以上いても大丈夫なのでは?
と思ったが、仕事だからしょうがない。
「はい、着いた」
早いな。
そして、デカいな!
何回見ても叫べそうだ。
「さぁ、今日からは思いっきりコキ使ってやるから覚悟しなさい!」
「おう!上等だ!!」
召使いバイト初日。
初日からあんな試練があるとは
思ってなかったーーーー。




