長い1日から見い出す存在価値
警察の突入の後、テロリストは身柄を確保され事件の幕は閉じた。
しかし、デパートの同じフロアにいた客達は安心などしていなかった。
原因は自分達を助けた救世主、須藤和也の被弾。
1人の客の通報ですぐさま救急車が駆けつけ搬送された。
今は手術中。
「……お母様」
「なぁに?可奈」
可奈は動揺を隠しきることが出来ていなかった。
美緒が出来ていたかというとそういうわけでもなく、顔が引き攣っていた。
「和也助かりますよね?お父様みたいなことにならないですよね?」
「……あ、あったり前じゃない!和也くんよ!?こんなことに負けるような子じゃないでしょう!手術も成功して、すぐに元気になるわ!」
「そう……ですね」
それ以降2人は言葉を交わさなかった。
しかし考えていたことは同じ。
『父のようなことにはなりませんように』
2人とも父が嫌いだったわけではない。
むしろ好きだった。
が、過去の事はどうやっても取り返せない。
美緒の夫、可奈の父は病死だった。
彼の名は園木啓助。園木グループ前社長。
絶対に成功すると言われていた手術に医師が失敗し、この世を去った。
なので事故死とも言える最期だった。
2人が父のことを思い出していると扉が開いた。
「和也は!?大丈夫なんですよね!?」
医師は首を振った。
振った方向は……縦。
「なんとか一命を取り留めましたが、撃たれた場所が心臓に近く危険な状態です」
まだ、普通の病室に運ばれはしないらしい。
しかし可奈は隣にいることを決め、行動に移した。
「もしもし、山吹先生」
『おぉ、園木。和也は大丈夫だったのか!?』
「はい、大丈夫です。それに伴ってなんですが」
『よかった。おう、どうした?』
「和也が完治するまで欠席します」
『はっ!?いつ治るかわからないんだろ!?テストだってあるし!』
「テストみたいな人を勝手に評価する紙切れより、キチンと見てくれる和也の方が大事です」
『それはそうだが……しかし!ブツッ』
可奈は無理矢理切った。
そして、壁越しに和也に言った。
「私がずっと隣で見ててあげるから、目を覚ましたらちゃんと私を見てよね」
可奈の中で和也の存在の大きさは家族に等しく……いや、それ以上になっていたかもしれない。




