表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/54

過去の受け入れ方と今の在り方

「おはよ、兄ちゃん」

「おー、おはよう裕太。もうちょっとで飯出来るからなー。」

いつも通りの朝。

きっと変化があるのは放課後からだろう。

などと考えながらスクランブルエッグを作る。

「はいよ、裕太。よく噛んで食えよ」

自分で言った後に、スクランブルエッグならそんなに噛まなくていいのでは?

と思ったが、ご飯もあるので大丈夫だろう。

「うん、いってらっしゃいお兄ちゃん」

「いってきます、学校頑張れよ」

これが俺の日常なのだ。

飯を食うのは昼だけ、これも家計維持のため。

うちは親がいない。

いないといっても仕事などではなく、5年前に死んでいる。

寿命や病気ならまだよかったのだが、殺されたのだ。

俺は小5で合宿、裕太は保育園に泊まる日だったので旅行へ行っていた。

そこで通り魔に襲われた。ホテルの駐車場だったため犯人はすぐ捕まったのだが、俺ら2人にとっては犯人などどうでもよかった。

俺は学校を4ヶ月休んだ。

裕太は精神科に通うほどだった。

今も少量ではあるが安定剤を服用している。

今は発作もなく、普通に生活を送っている。

まあ、こんなこともあってうちは貧乏なのだ。

そんなことを思い出していると学校に着いた。

まだ20分も早いのに校門が空いている。

教師ってのは大変だな。

少しだけ同情した。

学校というのは新入生が迷わないように、

1年棟が1回にある。

そんなことをしなくても迷わないのに……。

本当にありがたい仕組みだ。

ガラッ。

扉を開けると入学して3日なのに見慣れてしまった人物が……。

「ゲッ、園木……」

最悪だ。教師の方が100倍マシだった。

「なっ!スドー!?なんでアンタこんなに早いのよ!それに「ゲッ」って何よ!」

朝から大声を出すなよ、うるせぇな。

「そのままの意味だよ。それに、早いことに関してはただの予習だ」

「予習?アンタみたいな不良が?」

不良ってのは見た目で言ってるんだろうか。

「あぁ、わかった。高校の授業についていけるか不安になったんでしょ。あら?図星?」

何言ってんだコイツ。

あぁ、そっか俺はスピーチ断ったんだもんな。

「なによ、言い返せることもないの?」

「あ、あぁそうだな」

ま、なんでもいいか。

好きなように思えばいいさ。

カバンを下ろし、席についた…うるさい奴の隣に。

ガラッ

「おっ、2人とも予習か?偉いなー」

こんな最悪なことあってたまるか。

実際に目の前でおこっているわけだが…。

うるさい奴と教師とか嫌なコンビだな。

「あっ、おはようございます。山吹先生」

コイツは俺らの担任。山吹?そんな名前だったかもしれない。

「オハヨーゴザイマス」

「おう、2人ともおはよう。須藤はもうちょっと感情こめような」

「ウッス」

偉いと思ったなら話しかけないでくれ。

時間がもったいない。

「須藤は入試1位なのに努力家だなぁ。」

隣で園木が不思議そうな顔をしている。

「え?先生もう1回言ってもらえます?」

「ん?須藤は入試1位なのに努力家だなぁ」

沈黙。

「はぁぁーー!?こ、こんな不良が?」

「不良かどうかは知らんが、そうだぞ」

全く、余計なことばっかりベラベラと……。

「で、でも!入学式のスピーチって」

「あぁ、アイツは確か3位だ。須藤がやらないってきかなくてな」

「ありえない………」

力なく椅子に腰を落とす園木。

「うるせーな。人を見た目で判断すんな」

「アンタだってしてたでしょうが」

ものすごい目で睨まれる。

「俺のは間違ってなかっただろうが」

「なっ!アンタって本当に失礼ね!」

「悪かったな!失礼で!」

言い争いになってしまった。

それを見かねた山吹が止めに入るも、

『うるさい』で一蹴。

放課後、2人で職員室に呼ばれることになった。

その日の、1限から4限まで全く会話をしなかった。

そして昼休み

他人とは関わらない俺は席に1人。

一方横では、園木が友達に囲まれて………いなかった。

「お前取り巻き多いのに友達いないんだな」

ごく自然に話しかけた。

「そんなわけないでしょ、みんなお昼になるとどこか行っちゃうのよ」

「へー、それはまたなんで?」

「知らないわよ!私が知りたいぐらいだわ!」

なんか怒られた。

そして、園木の弁当が開いた瞬間、

理由がわかった。

「な、なぁそれ何?」

「何って、普通にお弁当じゃない」

いやいや、全く普通じゃねぇわ。

なんかおぞましい感じのオーラ出てるし。

「お前それ、友達にあげたりした?」

「えぇ、味見してほしくて」

確定だな。料理出来ないならしなきゃいいのに。

「か、買ったりしないのか?」

「だって1人で買いに行ったら、まるでボッチじゃない」

うん、現在進行形でボッチな。

「あっ!いいこと思いついたわ!」

嫌な予感、早めに逃げた方が……。

ガッ!

襟を掴まれ引っ張られる。

「買いに行くわよ!」

「おい!ちょっ、待て。くるし…自分で歩くからっ!」

襟から手が離れる。

「ゲホゲホ」

「さ、行くわよ」

この野郎、覚えとけ。

残り15分。購買へ急ぐ。

その後は、普通にパンを買って食い、5、6限を受けた。

隣の奴は熟睡だったが……。

そして今は、職員室。

「お前らなぁ、教師にむかってうるさいはないだろ」

「すいません、少しカッとなってしまって…」

「わ、私も……」

最初ってのはテキトーに謝れば終わるんだ。

「まあ、俺だからまだいいが他の先生にはするなよ?」

「はい、すいませんでした。失礼します」

「失礼します」

「おう、気をつけて帰れよ」

「はい」

終了だ。

約3分ってとこだな。

「アンタすごいわね」

「ん、あぁ慣れてる」

さて帰ろう。

「じゃあボディガードよろしく」

「へ?」

「あら?お母様から聞いてないの?」

「なにも」

「まあ、いいわ。歩きながら話しましょう」

そう言って俺らは玄関へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ