バイト高校生の日常
ダルイ。今日は高校の入学式。眠いしダルイ。深夜バイトのおかげで死ぬほどきつい。こんなにきつい入学式がくるとは……。
「ーーー。ーー。ーーー。新入生退場」
やっと終わった。帰ったら新しいバイト探さなきゃな。
教室に入った瞬間、ザワつき始める。
何に期待してるんだか。バカバカしい。
さっさと席につけばいいものを……。
そう思いながら自分の席についた。
ガラッ。
「席つけー。名簿の確認するぞー」
うるさかった教室が静まり返った。
ナイス。よくやったぞ担任。
「じゃあ名前呼んだら返事しろよー。伊坂」
「はい」
「宇野ー。遠藤ー。神田ー。」
次々と呼ばれていく。しかし名字だけでいいのだろうか……。人それぞれってとこか。
そんな事を考えていると名前が呼ばれた。
「須藤ー」
全く違う事を考えていたので反応できなかった。
「ん?須藤和也ー?」
「あ、はい」
「どうした、具合でも悪いのか?」
「いえ、少し考え事をしていて……スミマセン」
「ほーう、新しい出会いでも考えていたのか?」
チッ。心の中で舌打ちした。
教師はすぐからかってくるからめんどくせぇんだ。
「いえ、全く興味ないんで」
「お、おう。そうか……続きやるぞー」
俺が待ってるのは新しい、いいバイトだ。
心の中で呟いた。
それとほぼ同時に隣から話しかけられた。
「ねぇねぇキミ、須藤和也君っていうんでしょ?私、園木可奈。隣同士よろしくね」
オーラからして金持ちだな。顔や身長、そしてスリーサイズも素晴らしいだろう。
だが、俺は友情だの色恋などにうつつを抜かしている場合ではない。
突き放すのが最善か………。
「あぁ、そう。2度と俺に話しかけないでくれる?」
「なっ!?」
「俺、別に友達とかいらないから」
顔を赤くして怒っている。超笑える。
「あっそ!」
わぁお、クレイジー。
ま、これで3年間は関わってこないだろう。
周りの男子からすごい視線を送られているような気もするが、気にしないでおこう。
その後、適当に自己紹介などを終わらせ、
荷物をもらって下校する。
普通に下校していた、その時!
掲示板に貼ってあった1枚の紙に俺の全てが
引き寄せられた。
「召使いの簡単バイトで月収30万!?」
30万だと?しかもバイトで?仕事ならありえる金額だが、ここにはハッキリとバイトと書いてある。単純計算で1日1万はもらえる。
よし、やろう!これこそ俺の待っていた出会い。
「えっと、電話番号をメモして……。連絡先は園木グループっと」
よっしゃぁぁぁ!!きた!神降臨!
叫びたい。
ゆっくり深呼吸をする。落ち着け俺。
「あ、早速裕太に知らせなきゃ!」
最高のバイトを見つけた俺は全速力で帰った。
バタンッ!
「ただいま裕太!新しいバイト見つけたぞ!」
「声がデカいよ!こんな狭い部屋なんだから、叫ばなくても聞こえるよ!」
小5にして冷静で頭のいい、たった1人の家族でたった1人の弟だ。
「す、すまん。嬉しくてつい……」
「それで?今回はどんなバイトなの?危ないのじゃなきゃいいんだけど?」
さすが裕太、落ち着いてるな。
でももうちょっと興奮してほしかった。
「今回のは、24時間の召使いバイトで月収30万だ!」
「さ、30万!?」
ktkr
これだよ俺が求めてた反応は!
「そうなるだろ!?」
「う、うん!すごいね!!」
2人で喜び、騒いでいると……ガチャッ
「うるせぇぞガキ共!ここにいるのはお前らだけじゃねぇんだ!理解して行動しろ!」
隣の瀬波さん。頑固親父みたいなキャラかな
「あぁ、すいません瀬波さん。今後気をつけますんで」
ペコペコと頭を下げ謝罪する。
「フンッ、これだからガキは」
「自分のガハハって笑い声が迷惑なのを知らないんだな」
ボソボソと蚊の鳴くような声で言ったのだが
「あ?なんか言ったか?」
地獄耳なんだろうか、聞こえていたらしい。
さっさと衰えろ。
「いえ、何も」
にっこり笑って返す。
「ならいいが。いいか?次はないぞ」
バタンッ!
その言葉を残して帰っていった。
「いやぁ、裕太ごめんなぁ。兄ちゃんちょっとはしゃぎすぎた」
「いや、俺もだから。兄ちゃんにばっかり謝らせてごめん」
いい弟だ。
「大丈夫、それが年上の役目だ」
「ありがと、兄ちゃん」
「おう。飯、何食べたい?」
もう6時半になってしまった。
「ハンバーグ!」
「だめぇ、昨日も食っただろ」
「えー、でも俺ハンバーグなら毎日でもいける気がするよ!」
「そーゆー問題じゃないっ」
軽くデコピンする。
「イテッ、いいじゃんかぁ」
少し涙目になっていた。
「あー、わかったわかった」
「やったー!!」
「でも、豆腐ハンバーグな」
「兄ちゃんの作るのは何でも美味いから大丈夫!」
嬉しいこと言ってくれるぜ。
「おう!すぐ作るからなー」
「はぁーい」
肉は高いからな……ごめん、裕太。
ーーーー15分後。
「いっただっきまぁーす!」
「よく噛んで食えよー」
豆腐ハンバーグと野菜炒めを作った。
「んっ、豆腐なのに肉と同じくらい美味い」
「そりゃあよかった」
「もぉー、うもいお(ちょー、うまいよ)」
「口の中のものを呑み込んでから話しなさい」
少し噛んで呑み込んでから、裕太が口を開いた。
「さすが兄ちゃん!今度料理教えて!」
「あいよ、今度暇があったらな」
「むぁーい(はぁーい)」
さっき言ったばっかりなんだが……。
まあみのがしてやろう。
「よしっ、食い終わったらそこに置いといてくれ。後で洗うから」
「うん……。兄ちゃん本当に食べなくて大丈夫?」
「あぁ、兄ちゃんは大丈夫だから。遠慮せずに食え」
「………わかった」
「じゃあちょっと電話してくるな」
ガチャッ。
外へ出て、軽やかな手つきでボタンをタップ!
『プルルルル、プルルルル、ガチャ。
はいもしもし園木です』
「あっ、もしもしこんばんは。須藤といいます、アルバイト募集を見てお電話させて頂いたのですが…」
『あっホントですか!?じゃあ明日の夜9時に神鳴公園の噴水前に来てください』
「はい、わかりました」
『では、失礼しますー。ガチャ』
ん?あれ?
最後のって普通は俺の台詞だよな。
しかも、なにもなかったぞ?
あ!明日面接か!イキナリなんだな。
少し考えておこう。
そしてその日は洗い物をして、早めに寝ることにした。




