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第四章 一節  Be influenced by truth ―変化する意志―

     1


「急げ! ちんたらしてんじゃねぇ馬鹿野郎共!」

 聞いたことのある男の叫び声で、私の意識は微かに覚醒する。

 この声……レーザン先生だ。

「先生! このままでは――」

「いいから黙って運べ! おまえはブロッカー持ってこい! 急げ!」

 目の前ではどこかの白い天井が蛍光灯と共にめまぐるしく動き、ガラガラと車輪の転がる音と共に身体ごと揺れている。

「くそ……何故だ……! 機器には異常がなかったはずだ。おい! 確かに管全部繋がっていたんだろうな!」

「はい! ちゃんと患者就寝前と早朝に確認しました!」

「じゃあなんでだ! 何故容体が急激に悪化しているんだ!」

 あれ、ゼクロスは? ゼクロスはどこに行ったの?

 もしかして、あれは夢だったの?

「――げぼぉっ!」

 口から熱いものが吐き出てくる。

 痛い。

 熱い。

 苦しい。

 誰か助けて。ゼクロスはどこにいったの?

「――っまずい! 麻酔が切れたか。おい、アイリス! 死ぬんじゃねぇぞ!」

 その怒鳴り声を最後に、再び私は意識を失った。


     2


 私は教会の近くの小さな病院で生まれた。

 少し遠くの町に憧れ、だけどそのときは、おとうさんとおかあさんと楽しく暮らしているのがいちばんの幸せだった。

 三年後、弟が生まれた。私の姉弟。うれしかった。私、おねえちゃんになるんだ。しっかりしないと、とがんばってお世話のお手伝いをした。おかあさんに迷惑かけないようにがんばった。

 そして、ピクニックで一度訪れたアルモス教会。あの日は春だった。赤い花がたくさん咲いていてとても綺麗だったのも、おとうさんが自慢げにその花のことについて詳しく話したのも、近くの丘で弟と走り回ったのも覚えている。

 これからも学校で友達を作っていって、家族とずっと一緒に過ごして、大人になって、恋人ができて、結婚して、新しい家庭を築くんだとずっと考えていた。

 だけど、それは叶わなかった。

 休日、家族みんなで町で買い物をしていた。他にもおじいちゃんやおばあちゃん、叔父さんや叔母さん、いとことみんなでパーティをするために、みんなで買い物した。めったに行かない、大きな町。見慣れないものがたくさんあって、わくわくした。

 だけど、ひとりのおかしな女性が、私の人生を奪った。街中の突然の事件だった。訳も分からないうちに、私の家族は私の目の前で切り裂かれた。今でも十分に理解している。そのおかしな人に殺されてしまったのだ。

 まだ意識があったおとうさんに逃げろと言われた私は家族を置いて逃げた。必死に逃げた。無我夢中で逃げ惑った。

 気がつけば雨が降っていた。三回咳をした私は風邪を引いたんだなと思って、病院に行こうとした。白い建物を目指してふらふらと歩いたけど、力尽きて、歩道の真ん中で倒れた。この時初めて他人だった人が駆け寄って、救急車を呼んできてくれたのを虚ろに覚えている。

 目を覚ますと病院にいた。私を見てくれた人は白髪のおじいさんだったけど、名前はもう憶えていない。

 しばらく診てくれたらしいけど、私の身体はただの風邪ではなかったようだ。祖父も祖母もいない、叔父も叔母もあの女性に殺されて、天涯孤独になった私をどうすればいいか医者は悩んでいたけど、そこで相談に乗ってくれたレーザン先生が私を引き取ってくれた。

 そこから毎日のお薬生活。どうやら私は珍しい病気にかかっているらしい。でも治るかわからない病気だと言っていた。だから治るように何回も手術をして、何錠もお薬を飲んだ。気の遠くなるような生活だった。いつ治るのか不安だったけど、明るいレーザン先生と看護師さんが唯一の救いだった。たまに会う他の患者さんと話すこともあった。

 私の病気が空気感染することが判明してから、私は一歩も病室から出られなくなった。感染力はその時はなかったらしいが、ある日を境に、看護師さんも、レーザン先生も、ガスマスクをつけるようになった。顔が分からなくなるのは怖かった。隔離されている、拒絶されているのが嫌だった。でも、それだけ必死なのは理解できていた。だから、まだ頑張れると思った。そんな先生を信頼していた。

 だけど、世間の話題になった、私が一番嫌っていたあの死神を、私の病気を治すために、尊敬していたレーザン先生が連れてくるとは夢にも思わなかった。絶望した。幻滅した。だけど、それだけ私の身体は限界なのだろう、やむを得ない上で、連れてきたのだろうと思い、もう一度、レーザン先生を信じてみることにした。

 毎日私を診査しにくる死神。その内レーザン先生よりも来る回数が多くなってきていた。毎日が嫌になってきていた。死にたくなった時だって少ないわけじゃない。

 だけど、突然の症状で死にかけたとき、手術後、感染を恐れて誰も入ってこなかった病室に、死神だけは変わらず毎日入ってきては診査をしていた。それも、ガスマスクを着けずに。

 一度訊いてみた。感染して病気になるのが怖くないのかと。

 だけど死神は言った。病気になっては治しようがないけど、それぐらいの覚悟がなければ医者とは言えない、と。どちらにしろ、直に感染が広まるからガスマスクとかつけたって意味ないだろと付け加えて。

 考え方に倫理や道徳はあまりない、まさに死神のような人だったが、他の人にはない、勇気とやさしさがあった。初日でガスマスクを外して挨拶をしたことに対して企みがあると疑ったけど、そんなものは一切なかった。

 表は冷酷な死神だけど、誰もいないときに、私の知らない裏で、支えてくれる、もう一つの顔があった。

 そして、気がついたら私は惚れていた。あんなに嫌っていた死神の虜になってしまった。

 冗談で笑いを与えてくれるレーザン先生でも、駄目なものは遠まわしで駄目だと言った。それか曖昧にした。でも、死神は本気で約束してくれて、それも、本当に約束を叶えてくれた。

 私はもう、死神に恋をしてしまっている。

 それは、とてつもない罪なのか。私にはわからない。

 だけど、私はその死神の毒に委ねても構わない。あのキスで私は心の中からそう誓った。


 ――あんな真実さえ知らなければ。


     3


 私は考え直す。

 そもそも『シュレイティアの意志』はトーマス・ライアンの死をきっかけに知ってしまった『真実』。だが、ライアンはそれだけを知らせるためにあんな凝ったメッセージを残したのか。

 確かに『意志』の重要性は『形』としては『赤い蜂』から皮肉にも痛いというほど教わった。

 だが、これを知った上でライアンは自殺したと言い切れると言えるのかと聞かれれば、答えは「NO」だ。彼は自殺した理由を伝えたいわけではないはずだ。原因だけではない、結果と過程の真実を訴えている。

 まだ何かある。『意志』に関わる何かが遺されているはずだ。

 そのとき、机の上に置いてあったスマフォのコールがクラシック音楽の流れる自室で鳴り響く。

 レーザン先生からか。やはり置手紙とメールだけでは納得いかなかったか。

「はい、もしもし」

『……ゼクロスさん、あんた本当にいい加減にしてくれ。それでも医者だろう』

 一瞬警戒したが、少し怒っているレーザン先生の次の一言で、少し安堵した。

『仕事だろうが何だろうが、あんたの身体は瀕死に近いんだ。絶対安静だってのに勝手に病院抜け出してよぉ、本当に死ぬぞ。……っ!』

「……? どうしました?」

 何か思いついたのか。それとも何か察したのか。違和感のある間ができていた。

『いや、なんでもない。とにかく、今家にいるなら、絶対に大人しくしていろ。自分で自分の身体を手術したり、自分で義手を繋げる技術があるから、一人でもなんとかなりそうな気はするが、無理だけはするな。なんかあったらすぐに病院に電話しろ。わかったな』

「わかりました。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

『まったくだよ。ったく、その上アイリスの容体も悪化して大変なことになってるんだ』

「……大丈夫なのですか?」

 昨日の出来事を思い出す。悪化したのは明らか私の所為だ。だが、人間として、社会人としてどうかとは思うが、敢えてこのことを報告するつもりはなかった。

『大丈夫も何も、マジでヤベェとでもいえば十分に分かるだろ。末期状態の延命措置も功を奏してないって感じだ。まぁ、なんとか俺が絶対に治すから、ゼクロスさんはゆっくり休んで体治せ』

 電話越しで、看護師らしい声が聞こえたのを最後に電話が切れた。

「……でも、このまま休んでいる時間はないんだよ」

 私は準備を始めた。

 幕はまだ閉じていない。


     4


『今年までにUNCを根絶しろ』

 ライアンの遺言書にはそう書いてあった。今日は十二月二十五日。絶望的に時間はなかった。だが、ワクチンは普及された。あとの感染者は再発したアイリスだけだろう。いや、ただの副作用かもしれないので、既に根絶しているかもしれない。病室に戻した際、念のため眠っていた彼女の血液を採収し、検査してみたが、感染体は生存していた。だが、以前のUNCとはうって変わり、感染力は驚くほど失っていた。ワクチンに対抗するために変異していたのだ。しかし空気感染もなく、身体に入れない限り感染することはないほど感染力は脆化していた。ただ、耐性能力レジスタント・アビリティは凄まじく、やはりどんな条件でも死滅することはなかった。繁殖力も条件を除けばほぼ分裂しないこともわかった。

 悪化してしまったのは私の所為だが、再発した正確な原因は今のところわからない。やはり特例は異なるのか。

 だが、ライアンの言うことが正しければ、『シュレイティアの意志』と『UNC』は関係しているということだ。だとすれば、やはり生き残った弱体化したUNCが棲みついているアイリスが鍵となるか。

 いや、それについてはいくら仮説を立てたところでどうにもならないだろう。

 素材もないのに考えたところで仕方ない。行動して情報を得よう。


 この膨大な情報社会では、いくら探してもきりがない。そもそも『意志』の詳細がある情報など世界に流れているはずがない。政府の極秘情報並に知られていない『理論』などきいたことがないが。まさかとは思うが、『意志』と政府は関係するのか。可能性はあるだろう。

「……あ、そうだ」

 そういえばリノバンスのUNC研究室に私の置いてある物を回収していなかった。きっと他の研究員は片付けきっているだろう。

 私はハンドルを切り、Uターンした。


 研究室はいくつもあるが、私たちの利用していたUNC研究室はリノバンス第五病棟地下一階にある。第一室メインラボ第二室オフィスルーム、開発準備室(OORDD)の三つに分かれている。

 薬と自製ギプスでなんとか保っているものの、骨折した右足はやはり痛む。私は痛みに堪えながら階段を一歩一歩降りる。レーザン先生に見つかったら殺されそうな勢いで憤慨しそうだと片隅で思いながら私は歩を進める。

「……?」

 研究室の扉の窓から明かりが確認できる。誰かいるのか。レーザン先生だったらまずいなと思いながらゆっくりとドアを開け、隙間を作っては垣間見た。

(……クラウスさん……?)

 研究室にはジャドソン・クラウスが背を向けて何かの作業をしていた。立ちながら何かを行っているのですぐ終わる作業なのだろう。それか、急いでいるか。

 フランソアや香霧の荷物はなかった。すでに回収し、持ち帰ったのだろう。荷物が残っているのはレーザン先生と私とジャドソンの三人だけか。

 ジャドソンなら説得すれば大丈夫だろうと思い、扉を開けようとした。

「……!」

 ジャドソンのいる席の傍には見たことのある分厚い本が置いてあった。「不確定性原理 運命の秩序」。私の机の中に入れてあったはずのライアンの遺品だった。

「――なるほど、シュレイティアはこれを遂げるために……っ」

「……!?」

 シュレイティア? 確かにその名が聞こえた。

 ジャドソンも『意志』に触れてしまったのだろうか。いや、もう既に……。

「まさか――が本当に――なら……ライアンを――て正解だったのかもしれない」

 確信した。耳を凝らしても途切れ途切れでしか聞こえなかったが、数少ないキーワードでも繋がれば答えが出る。

「随分と独り言が大きいですね、クラウスさん」

 私は扉を開け、その音にジャドソンはすぐさま振り返る。私にしてはあまりにも考えのない登場だったと思う。冷静のない判断だった。

 しかし何より、親しく接してくれたライアンを殺したのは許せなかった。それだけは引くわけにもいかない。

「……聞いていたか。いや、知っていたか」

 しかし、予想外にジャドソンは簡単に白状した。誤魔化すかとは思ったが、見抜かれていると察知したのだろう。普段の人を見抜く行為が今となってこのような形で手間を省かせるとは思いもしなかったが。

「ええ、トーマスが死んでしまった原因も、『シュレイティア』のこともね」

 その言葉で観念したのか、ジャドソンは柔らかい表情でふっと笑った。推理小説の好きな私としてはこの展開はあまりにも拍子抜けだった。できるならば探偵や刑事のようにもう少し行動して、見つけて、考えることを実際にしたかったのだが、現実は案外滑稽に終わったりするんだなと改めて思う。

「クラウスさん、どうしてこんなことを……?」

 お約束の言葉のように、私はとりあえず、ジャドソンに打ち明けさせる。見る限りは、この人に危害はない。

「……『エリシアの殺人鬼』を知っているかい、ゼクロスさん」

 ミステリー小説のタイトル。当然、読んだことがあった。

 突然の切り出しに少し困惑しながらも「ええ、まぁ」と冷静を装った。

「その小説の重要人物のひとり『エリシア』のモデルとなったエリシア・クロロティカというウミウシは、幼生のときに藻類を食し、葉緑体を自身の身体に取り込み、体全体にまで行き渡れば口を閉鎖し、生涯を光合成のみで過ごす奇妙で美しい生命だ」

 ジャドソンは語り掛けるように、そしてサンプルの復元された臓器を見つめる。

「だが、雌雄体のエリシアは交接して産卵を済ませた後、突如の病で死に至る。それはエリシアの染色体の中の『プロウイルス』の仕業なんだよ。そのウイルスは藻類の染色体からタンパク質コード遺伝子を移転させるという離れ業を侵したレトロウイルスなんだが、用済みになれば牙を剥き、たちまちに宿主を殺してしまう。この内在性ウイルスは当然次の世帯にも遺伝している。いや、既に寄生している」

 彼は何を伝えたいのだろう。そして、彼が作業していたであろう場所には一冊のノートとラボに置かれているはずの走査型ナノサーチ顕微鏡があった。何かを調べていたのか。

「だが、これを私は寄生とは呼ばない。これは進化のための共生だ。我々生命はウイルスの存在によって進化し続けてきたんだ。昔の進化論はもう古い。突然変異、共生発生、異種交配、エピジェネティクス、そして自然選択の相互作用。現在も未来へ向けて進化というプロジェクトが進んでいる。それがどういう方向に進むのかは、知能ある私たちの意志にかかっている」

 いつものジャドソンじゃない。何かに取り憑かれたようだと思ってしまうほどだ。彼に何があった。いや、目が覚めたのか。

「……何かを知ってしまったようですね」

 ジャドソンは目を細めて小皺を作る。

「あぁ、とても口では語り切れないほどの真実をね……まったく、目から鱗というのはまさにこのことを言うだろうなぁゼクロスさん」

「……『シュレイティアの意志』ですか」

 それを聞いた途端、ジャドソンは笑った。いつも聞く笑い声。だが、なぜか不気味に感じられた。

「そうだよゼクロスさん。どうやら私は彼の虜になってしまったようだ」

「……」

「トーマス・ライアンは知りすぎた。いや、その事実を正しく受け入れていなかった。誤った情報は正しい情報よりも早く伝染する。この真実はまだ公表されるべきではない。間違った情報など論外だ」

「だから殺したのですか、トーマスを」

 自殺に見えたトーマスの死。証拠など一切見つからなかったが、あれはおそらく……。

「そうだ。だが、私ももうじき死ぬだろう。『意志』を知り、関係ない君に話してしまったからな。この概念は、『意志』は知れ渡ってはならない事実だ。だが、革新にも似た変異は確実に起きる。いつの日かすべての人類が知ることになるだろう。この世に一つ言い残すなら、人類はもう一度考え直さなければならな――」

 その時、ジャドソンの口から大量の血が吐き出される。鍋一杯に溜まった水のように、大きく開いた口から溢れ出てくる。

「――っ、クラウスさん!」

「がふっ、うごぁ……が、ぁ……っ」

 ジャドソンは膝をつき、自分の吐いた血だまりに倒れる。左右の目が出鱈目に動いている。

「クラウスさん! しっかりしてください! クラウスさんっ!」

 この突発性は、いや、人工兵器ナノマシン機能プログラムか。

「誰も呼ぶな……私はもう死んでも構わない。すべてを知ることができ……ぁが、ぁぁぁああああぁああぁあ!」

 真っ赤な頭部と首に無数の血管が張る。ぷじゅう、と顔面から破裂するように皮膚を突き破り、血が噴き出す。

「クラウスさん! ――くそっ!」

 脳から侵蝕して情報を消す気か。

 確かナノマシンの機能をOFFにできる電波式携帯装置を念のために研究室に置いてあったはずだ。急いで自分の席の引き出しからその機械を探る。運よくすぐにそれは見つかった。

「……っ? 起動しないっ」

 こんな時に故障か? いや違う。誰かが壊したのか。まさかこの時のために?

 私は振り返る。だが、そこにあったのはジャドソンの凄惨な姿ではなく、ただの内臓と大量の血が蒸発するように消滅していく様であった。その速さは次第に遅くなり、そして止まった。

「……クラウスさん……」

 時間制のナノマシンだったのだろう。タイムアップでその分解機能を停止したのか。そこにあったのはもはや見ただけでは人か動物かですら判別できない少量の血液と肉片だけだった。

「……畜生っ!」

 ドン! とデスクを強く叩く。血が出る程強く歯を食いしばる。

 誰が指揮を執っている。誰の意志で行われている。

「……まさかこれも『意志』の思惑か……」

 いや、馬鹿馬鹿しい、流石にそれは考えられない。

 まずは、この血肉を何とかしなければ。下手すれば私が犯人扱いされる。

 ジャドソンの知った事実はなんだったのか。おそらく、あの電子顕微鏡の中と遺されたノートを見ればわかるだろう。だが、知ってしまったその時、誰かが殺しにくる。「シュレイティアの意志」の従者の誰かが。

 おそらくだが、院内の誰かである可能性が高い。仮にそれ以外だとしても、この『意志』を知るものは少ない。必ず誰かに絞られる。

 絶対に見つけてやる……変異が起きる前に!


     4


 今日にして二回目の手術をされるのは初めてだ。

 やっと治療という苦行の終わらない地獄から解放されたと思ったら、また手術。それも、集中治療。そして今回は結構大がかりな手術だという。

 もう嫌だった。こんなにも苦しい思いをするなんて。それに、手術は一番怖い。失敗したらもう終わり。麻酔で眠ってしまったときが最期になるかもしれない。目の前の天井が最期の景色になるのかもしれない。いっそのこと、逃げ出したかった。逃げたい、でもどこに?

 わかっていた。逃げ場なんてものはない。どこにもないんだ。

「それでは、麻酔しますねー」

 味気ない男の声と共にぷすりと注射を打たれる。

 銀色の鉄扉てっぴを潜り抜けた先には病院独特の締め付けられるような重苦しさと強い薬品の匂い。廃退したような空気と無機質な雰囲気。何度も見ている光景だが、やっぱり慣れない。不安になる。

「すぐに眠くなりますからねー」

 その言葉は意識が消えるという意味に変換される。段々眠くなっていく。

「……?」

 でも、意識はなくならなかった。

「よし、アイリスは眠ったか」

 レーザン先生は私を一瞥しては、「集合」といい、他の医者たち数人を連れ、部屋を後にした。この部屋に残ったのは麻酔で眠ったであろう私一人。おそらく最後の打ち合わせだろう。

「……」

 こんなことになるのは初めてかもしれない。意識がある分、恐怖は増していった。

 逃げたい。逃げたい。逃げたい!

 ここで死ぬかもしれない。レーザン先生は頼れる。この十年間で確かに信頼できる人だと思っている。だけど、怖かった。予想外だってある。どんな人にも失敗はある。その失敗が今日かもしれない。その気持ちが強く増していった。

 治ったはずの病気がまた出てきたのは誰もが想定外だった。そしてまた死にそうな苦痛を味わった。そして、話を聞くに今までの中で最も難しい手術だという。それに、ここにはゼクロスがいない。

 ……ゼクロスは?

 ゼクロスは今、どこで何をしているの。もしかして、あのあとまた入院でここにいるのかもしれない。

 そう思ったとき、急に彼に会いたくなってきた。

 だんだんと私の精神状態は普通じゃなくなっているだろう。このあと訪れる手術の恐怖、彼に会いたいという欲求。

 駄目だ、ここにいたら殺される。目に映るものすべてが私を殺すための道具に見えてくる。解体して、分解して、バラバラにするための道具にしか見えなくなる。ここで殺されるぐらいなら、もう一度あの人に会ってから死んだほうがましだ。

 ――逃げよう!

 私は顔にあてがわれた小さな酸素マスクを外し、体中に繋ぎとめられた献血パックの管を無理矢理引き抜いては体を動かし、ガタン、とベッドから転げ落ちた。1mほどの高さからの転落。受け止めた右半身が鈍痛でじわりと身体をさいなむ。幸い声は出なかった。だけど、足が不自由で立つことはできなかった。這うしかない。弱弱しい細い腕を力いっぱい動かして体を運ぶしかない。

 落ちた衝撃でどこから入ってきたのかわからなくなった。多分、あの扉から入ってきたはずだ。

「――をすることだ。全力を尽くせ! 以上!」

「――ッ」

 打ち合わせが終わったようだ。まずい、見つかったら殺される。

 そのとき、慌てて体を動かそうとして、ガラス棚に強くぶつかってしまった。偶然にも棚の重心は崩れ、並べてあった薬品瓶や何かの器具、束ねてあった細かい字の資料が上からバラバラと降ってくる。そして、ガラス棚が傾き、

「――ぁ」


 このとき、私は何を見たのか。

 時間がゆっくりと動いているかのように思える程、一瞬の私は落ち着いていた。

 上から降ってくる資料の文字が読める程、時は静止しているように感じる。そこに書かれているのは治療内容、献体ドナー提供リストなど、まるで患者わたしが知ってはいけないようなことばかりだった。

 ――目を逸らすな。既に知った事実を思い出せ。

 誰かが耳元で囁くような錯覚を起こしたと同時に、私の意識は遠のいた。一番信頼している医師の叫び声と共に。


     5


「……はは、僕も馬鹿だね」

 私は電子顕微鏡をのぞいた後、呆気にとられたが、次第におかしく思い始め、笑いが止まらなかった。

 理由は明確だ。あまりにもシンプルな解答しんじつがこの顕微鏡の中にあったからだ。

 もしこれが本当に『意志』ならば、随分と馬鹿げたものだ。確か『意志』はひとつだけではないと聞いた。だとすれば、他にもこのようなものが存在するということか。

 くだらない、馬鹿げている。だが、言い換えればおぞましい、狂っている。こんなことが実際に起きていいはずがない。だが、そのノートにびっしりと書いてある化合物の式は美しいものだった。だが、どうかしている。まるで奇怪な絵画でも閲覧しているかのようだ。

「……ライアンの言いたいことはこのことだったのか……」

 そのときのライアンは私と同じことを考えていただろう。幸い、『赤い蜂』やジャドソンのように精神がおかしくはならなかったが、それを「間違った捉え方」としてジャドソンに殺された。ライアンに死の種をいつ与えたのかはわからないが、この二カ月弱の間に『意志』を知ったのは間違いないだろう。

「……」

 今は血肉と化したジャドソンを処理し、ここから出ることが先決だ。レーザン先生の席に多くの書類が置いてある辺り、まだここで独自の研究を続けているのだろう。何をしているのかは想像もつかないが。

「……」

 想像もつかない。それが好奇心の原動力になった。その好奇心は行動に映る。

 電脳界ではデータの機密度シークレットレベルが高いほど、データに保存されず、書類などの物質に記される。それか政府の扱うような最高機密特別情報(TSSI)の量が膨大な場合、最高機密トップ・シークレットのデータバンクに保管される。二極に分かれているのだ。

 このような研究の場合だとデスク上のパソコンやメモリーではなく、書類に記されていることが多いだろう。私は失礼ながらレーザン先生の電子ロック付きのデスクに手掛ける。

「……まぁ、普通はそうだろうな」

 電脳族がいくら電気電子を操ろうとも、その特性故、電脳界の電子ロックはかなり厳重だ。そのため、近年は電脳ハッカーなどの被害は一度も出ていないという、この間のニュースで報道していたことを片隅で思い出していたとき、

「……え?」

 ガチャリ、と開いた。何のことかわからなかったが、引き出しを引いてみる。

 電子ロックされた引き出しが何の抵抗もなく開いた。原因はわからないが、とりあえず中に入っていた資料を漁る。どれも医療データの機密情報だ。おそらく私は犯罪に手を染めているだろうが、似たようなことは過去に数えきれないほどしてきた。あまり気にはしていないのもどうかとは思うが、手を付けた以上、引き下がるわけにはいかない。今行っているUNC解決後の研究内容がどのようなものか、私はデータを探す。

「これは……?」

 資料の入っていたレーザン先生の研究記録か。共有データを持つパソコンやカルテとは別に、個人的に記録してあったのか。

 私は好奇心でそのノートのページを一枚ずつめくった。大まかに文字を読み通すが、ちょっとした知識の確認と患者メモが混ざったような内容だった。教科書のような説明も書かれているので、メモとしては少し無駄なことが書いてある気がする。何故わざわざこのようなノートを作ったのか。字もいつもみているものより汚いので、彼なりの殴り書きだろうが、それでも普通に読めた。


〔R・Lノート〕

 #303 I・C

 ――筋傷害シグナルにより、骨格筋特異的幹細胞である筋衛星細胞(muscle satellite cells)が活性化され、分裂、増殖し、やがてお互いに融合して筋繊維を再生する。デュシェンヌ型筋ジストロフィー、通称DMDなどの重篤な遺伝性筋疾患に対して筋・幹細胞を移植する再生医療を試した。効果が期待されたが、筋芽細胞移植では効率が低かった。その細胞があまり移動しないことや免疫抑制が不十分であったこと、そして移植直後に細胞が死んでしまったことが原因だろう。


 #407 H・O

 ――のように、筋再生は様々な細胞間の相互作用によって完了する。特にマクロファージと間質の線維芽細胞様の間葉系細胞が重要な細胞である。その上、マクロファージは壊死組織の除去のほかに、筋衛星細胞の活性化やアポトーシスの抑制、筋分化の促進等の機能があるので、これらの特性から大いに組織の再生が期待できる。マクロファージの再生基盤は後日実験で確証を立てるとしよう。


 #215 K・U

 ――以上のような、『侵攻する壊死』が起きている場合、肝再生がこの患者の治療に適しているだろう。損傷具合によってパターンは異なる。

 単純な細胞更新(simple duplication)は肝臓の傷害において残存している成熟幹細胞が肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor)などの作用により少数回分裂することで失われた肝細胞容量(hepatocyte mass)を代償的に補填するという再生様式。前回これで試してみたが効果は薄かった。予想以上に傷が酷かったのだろう。

 これは細胞更新が機能できないほどの肝傷害の程度が強い場合、即ち、分化した成熟肝細胞がほとんど存在しないほど破壊されてしまった場合だ。この状況に陥った場合に生じる肝再生を全身再生に利用してみる。これは肝臓の場合、肝小葉門脈域を中心に偽胆管の増生が生じる。この偽胆管を構成する細胞の一部は肝細胞と胆管細胞の両方への分化能を有することが判明。ただ、このような肝幹細胞の増殖と分化に基づいて成熟肝細胞の大規模な更新が生じるとする考え方は血液学領域では常識であるが、肝臓領域では最近になって認知されるようになったコンセプトなので、果たして受け入れてもらえるかが問題だ。何しろ患者がご年配である上に医学歴がある。説得には時間がかかりそうだ。


 #509 M・M

 ――前回は血液再生の用法で治療を行ったが、また病にかかり、また私の元に訪れてきた。前回と損傷が少々異なる。従来は投薬、運動指導、バイバス術などが用いられてきたが、最近では細胞移植、遺伝子治療に徐々にシフトしてきている時代だ。私もそろそろ新しい、効果的な治療を開発したいと思ったので個人的にはちょうどいい時期に来てくれた。

 現在の治療法とは別の方法でやってみよう。体外で細胞の数を増幅させる、性質を変えるなどの操作を加えた後、体内に戻す方法を患者にしてみる。また、癌に影響を与えない血管再生に関しては、転写技術を用いた局所的な血管再生技術が今後必要だろう。


 #412 A・N

 ――次は線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor)を利用した再生治療。細胞外シグナルのひとつで、ヒトで二十種以上の遺伝子にコードされ蛋白質ファミリーをなす。その作用は細胞増殖だけでなく、上皮系、神経系、血球系、間葉系細胞にも作用し、細胞分化、移動、細胞死抑制など多様。個体レベルでの機能は、初期発生、期間形成、恒常性維持、代謝、組織修復、再生、腫瘍形成など多岐にわたるので、全体の症状を引き起こすこの患者なら効果はあるだろう。

 ――嚢胞、出血性ショック、免疫・臓器不全、パラノイア、全身感染症。相変わらず次々と厄介な病状が発生する。ATP活性化、シトクロム増加へとDNA遺伝子を変換。他にも変異を促す遺伝子の操作を試みたが――


「――!?」

 目を疑った。さりげなく読んでいたので危うく読み飛ばすところだった。よく見れば部屋番号とイニシャルがアイリスだ。

 なんだこれは。遺伝子操作? レーザン先生の分野から考えれば畑違いのはずだ。UNCのことであるのは分かるとして、それがどうしてアイリスの欄に書いてあるのか。いや、アイリスの欄で記入が最後になっているのか。

 私は読み進める。


――遺伝子操作ジーン・マッピングだけではUNCの能力は最大限に引き出されない。それもそのはず、一種の蠕形ワームになるまで、UNCはプリオン病に変異する前にあらゆる耐性をもち、時に遺伝子を強化して研究施設内での複製を行わなくなる時もあれば、DNAを再構築して新種を発生させたり複数の病原体を生み出したりする非常に厄介なバクテリアだ。心が折れてもおかしくない。

 だが、逆にこのあらゆる耐性と繁殖力、変異性という適応力を利用してみればどうだろうか。応用すれば再生医療もかなり進むはずだ。

 調べていくうちに、擬態微生物であるUNCは遺伝子を自らの力で容易に変えることができる能力により、生命だけでなく、様々な因子に変えることができると判明した。試験管内イン・ヴィトロ結合バインディングの確認により、骨形成因子(BPM)、血管内非増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、Wnt-β-cateninシグナル、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、上皮増殖因子(EGF)、株化メラノーマ増殖抑制因子(OSM)などの再生誘導因子に変換することが可能となった。

 だが、感染経路も感染力も変異次第で凄まじいものになるので注意が必要だ。人畜感染、空気感染、水質感染、どんな環境でも、容易に感染する。フィルターや化学的処理されたものでも無効に等しい。それによって失敗も多いだろう。モルモット等、被験体の数を増やさなければ。

 UNCは素晴らしいものだ。操作次第で薬にも毒にもなる、最高の生体材料バイオマテリアルだ。新鮮な発想がなければ、科学から活気が失われてしまう。UNCはこの人類社会に活気を取り戻す第一歩となるだろう。医療技術も画期的に進み、そう遠くない未来、病に苦しむことも、死ぬことに恐れることもない世界に変わるだろう。


「……」

 この先もつらつらと日にちに伴い、UNCの実験や効果についてのことが書いてあった。どうやら哺乳類実験では失敗も多数みられるようだ。しかし、それでも生き延びている個体もいるので、完全な失敗ではなさそうだ。私はノートを閉じ、元の場所に置き、何事もなかったように片付けた。

「レーザン先生……」

 あの人は毒を薬にする研究を、私たちに秘密で進めていたのか。

「……いや、待て」

 思わず独り言をつぶやいてしまった。だが、何か違和感がある。

 これまでに見てきたUNC感染者は二つに分かれる。優性遺伝プリポテンス劣性遺伝レセシブ。だが劣性遺伝のUNCに感染していたアイリスは例外的な症状を突発的に発症してきた。そのような意味では第Ⅰ期の異常な性癖の症状を迎えず、第Ⅱ期の症状になっていたことに関しては私も例外的だとはいえるが、それでもアイリスほどではない。

 亡きジャドソンの言っていたエリシア・クロロティカとプロウイルス。動物の身体に葉緑体を取り入れ、光合成を可能にし、タンパク質コードに異常のないように支え、だが、産卵後、もう用はないと言わんばかりに宿主を病で殺すウイルス。このことは攻撃的共生と呼ぶが、バクテリアのUNCは生かしては殺し、また生かすという訳も分からない行為を繰り返しているというのか。

「……!」

 まさかとは思うが、UNCは……いや、もしかすると――


「誰かいるのか?」

 レーザン先生の声だった。

「……っ!」

 間一髪だった。見つからないように、奥の香霧のデスクに隠れている。廊下の足音を聞き逃していたら確実に見つかっていた。

「……いるわけねぇか。誰だよ電気つけっぱなしにした奴」

 コツ、コツ、と足音が近付いてくる。命を狙われているわけでもないのに咄嗟に隠れてしまったのは間違った判断かもしれないが、見つかればこっぴどく怒られそうだ。これ以上レーザン先生の寿命を縮めるわけにはいかない。

「……なんだこれ。血か……?」

 ジャドソンの肉片に気がついたか。だが、その不安そうでもない声調はおそらく人間のものではないと考えているからだろう。

「……まぁいいか。あとで処理するとして……おーあったあった」

 そう言っては何かを持ち出し、鼻歌まじりで電気を消しては部屋から出ていった。

「……」

 暗くなった研究室の奥から私は出てくる。酸化したのか、明かりがないためか、血の色は黒ずんでいるように見えた。

 幸い、すぐにでも戻ってくるのだろうか、レーザン先生は鍵をかけなかった。血肉をすぐに処理しなかったのもそのためだろう。

 考えるのは後にしようと思った私はすぐに研究室を辞した。

 私の仮説が正しければ、真実はもう目の前にある。問題は、それの解決方法が見つからないということだ。

 あと一週間もない。事態は深刻だが、驚くほど落ち着いていた。


     6


 どのような物語にも必ずといっていいほど「転」がある。物語だけではない、この人生にも、この世界にも幾度と「転」がある。それは、想定外の出来事、平衡の崩壊、青天の霹靂などの言葉へと転換できる。「転」の規模が小さいほど、常に起きていたりする。自然も、人の心も、ほんの些細なことですぐに転換する。やがてそれは、大きな「転機」となる。それが来るはずの運命を変えることも可となる。

 変わるということ。それはときに受け入れたくないこともあるだろう。特に、自分の意志に反した時、不意に起きたときにその拒絶感は高まる。拒絶以前に、理解できずに思考停止に陥るケースもあるのだ。

「……すまない、少しよくわからなかったんだが、もう一度言ってくれるか」

 集中治療室から出てきたアイリスが安定してきたとの連絡を、担当看護師の落合からメールで受けたのは手術から二日後の十二月二十七日。まだ怪我の完治をしていない私は支度をし、彼女のいる病院へと向かった。

 だが、手術で変わり果てた姿に私は言葉が出なかった。装置や点滴、薬でなんとか首の皮一枚で繋がっている。そうとしか例えられない、あられもない痩せこけた姿になっていた。衰弱しきっているが、まだその瞳の輝きは完全には失っていない。

 しかし、変わったのは身体だけではない。

「……ごめんなさい」

 にこり、と酸素マスク越しで儚げにもやさしく笑った。

 そしてアイリスは言う。

「私、死にたいの」


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