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タイミング

21、タイミング


「……というわけで、ヨリを戻させるのは失敗したの」

「一勝一敗だね」

「いいじゃない、あの原始人が手を引いただけで」


 あたしは今、ハナの家の居間で経過報告をしているところ。

 左右にヒトちゃんと、ハナをはべらせ晩酌中。

 目の前には、ハイボールと売れ残りのクレープの具がおつまみがわりにおいてある。

「でもさあ、奥田もおかしなことするから振られるんだよ。あたしなんかにちょっかい出して、所長にも怒られて、婚約者に逃げられて、所内の、特に女性の目の敵にされて」

「散々だね」

「ザマみろだよ」

 ハナはキウイを刺したフォークをブンブンと振り回す。

「ハナさん相変わらず辛辣」

「おれは元婚約者さんが、何をしたのか気になるな」

「うーん爆弾かあ。なんだろう?全く検討つかないんだよね」

「花が何かしたのか、原始人が何かしたのか?ああっ、そもそも誰がターゲットかもわかんない!」

「そうだねえ」

 しばし、3人で考え込む。


「……」

「……」

「……」


 驚いてほしかったって言って、誰にとは言ってないんだよなあ。

「わかんない、もいいよ。飲も飲も」

 振り回すフォークの先のキウイが飛んでヒトちゃんにあたって落ちた。


 ごめんごめんと笑うハナに、キウイを投げつけるヒトちゃん。酔いも手伝って、いいかげんどうでもよくなったし。

 あとはいつも通りの馬鹿話で盛り上がり、3人で角瓶を一本開けると、お開きとなった。


 涼しい風の吹く川べりを歩いて家まで帰る。

 奥田がこうなったのは自業自得だとして、あたしが巻き込まれたのはどうしてだろう。

 人が付き合ったり、別れたり。ほんの少しのタイミングで全く違う結果になったりするんだ。

 あたしが今ここを歩いているのは、ハナと友達だからで、ハナと友達なのは高校が一緒だったからで、あの高校に行ったのは仲の悪い家族のおかげで……

 もし、あたしの父が暴君でなくて優しかったら。例えばあたしの母が病気じゃなくて元気だったら。あたしは15歳からひとり暮らしをすることはなかっただろう。そうなれば、高校は別のところに行ってただろうし。

 ハナと出会えてなかったら、暗い性格のままひとりで高校生活を送り、勉強も教えてもらえないから大学も行けてなかったかも。と考えると、大学に行けたのも、行政書士の資格が取れたのも、今の職場に就職できたのもすべてハナのおかげで……

 所長とか、奥田とか春日女史とか、ヒトちゃんもハナもだれ一人欠けても、あたしはこうやって、ほろ酔い加減で川べりを涼しいなあなんて歩くことはないんだ。

 一体どこから始まってあたしがここにいるのかなんてわからない。ハナも理由があるのかないのかわからないけど、親友で、晩酌仲間で。

 あたしにとってはラッキーだってこと。

 そして、今街灯に浮かび上がる人影。向こうからやってくるのは……クマどん!


に、逃げなくちゃ。これも何かのタイミング?!

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