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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第一章
7/50

「ただいまー。『拳』と『軽装備』買ってきたぞー、使えー」


 そうこうしている内にシンが帰ってきた。ウィンディはまだ俺の頭をなでている。子ども扱いされてるようで恥ずかしいからいい加減離れてほしい。


「うお!? タタリがハゲの筋肉巨人に変身してる!?」

「おい、それはギガントだ、タタリは俺だ、俺」


 あろうことかギガントと間違えられた。ハゲの筋肉巨人が一体どうして魔法少女に見えるだろう。俺とアカリ以外にもこの場に女性は2人いるだろ。アカリとキャーキャー言ってるリンゴと、変身以降俺の頭をずっとなでているウィンディだが。


 エレアは「認めねえ! こんな筋肉達磨が魔法少女だなんて俺は認めねえぞ!」とノっている。ギガントのPTも結構面白そうだ。

 俺に気付いたシンは、子供に笑いかけるようににっこり笑いながら腰を屈めて俺に話しかける。

 おい、アカリも似たような背だろ、おい。


「いやー、すまんすまん。ほら、これが『拳』センスボックスと『軽装備』センスボックスだ」


 ウィンディの手を払いのけ、トレード画面で決定を押して箱を貰う。なんかけっこうズッシリくるな。アイテム欄を見れば、5kgとか書かれている。なにこのおもさこわい。思わずうんざりした気分になるくらい重い。


「センスボックスって意外と重いんだな……」


 思っていたはずが、いつの間にか声に出ていた。それぐらい重く、2つ合わせて10kgだ。SaMoではSTRが多いほど重いものを持てるようで、『無刀流』でSTRが5倍になっているから50kgくらい持てそうだが、重いものは重い。何時までも持っているわけにはいかないので、さっさと使って楽になろう。


 使い方は簡単で、この箱を自分の胸に押し当てる。するとズブズブ沈むように、俺の体に箱が入ってくる。最後まで入ったことを確認して、次の箱を入れる。

 このなんとも言えない異物感がクセになるプレイヤーもいるらしいが、そうはなりたくない。最後まで入ったのを確認して、センス画面を開く。『拳』と『軽装備』が追加されている。成功のようだ。



 その後、ギガント達とはフレンド申請を送りあった後別れた。

 フレンド申請というのは、ようは「友達になってください」というもので、申請に承諾してもらいフレンドになれば、ショートカットから個人チャット(1対1で話すチャット。テルチャット、テルとも言う)で話したり、ログイン情報を確認できる。

 別れの際にはウィンディが名残惜しそうにしていた。どうやら俺が気に入ったらしい。


「これでようやくスタート地点か。じゃあ、さっさとゴブリン狩るぞ」

「おう。ところでみんな、みんなのセンス構成って何なんだ?」

「ああ、俺は『大剣』、『軽装備』、『スタミナ』だな。『軽装備』にAGIボーナスが追加されたようで、意外と合うみたいだぜ、この組み合わせ」

「私は『双剣』と『重装備』と『スタミナ』かなー。重装備だから、タンクになれるよー」

「僕は『杖』、『重装備』、『マナ』だね。でも、シン君みたいに後で『軽装備』に切り替えるつもりでつ。なんたって、重装備にマイナスAGI補正がかかっちゃったからね」


 まだ分かりきってないのに説明を求めるのは、早すぎたようだ。

 ハムとアカリとシンは『軽装備』か『重装備』かで色々話し合ってる。そういえば、俺は『軽装備』なんだよな……。



 適当に辺りを散策していると、モンスターが近づいてきた。ゴブリンが5匹。1人1匹ずつ対応しても1匹余るので、アカリとハムが2人で3体のゴブリンと戦う事になった。

 俺とシンは1匹ずつゴブリンと戦う。


「くっ」


 いきなりゴブリンが飛びかかってきて、ゴブリンの持つ短剣が頬をかする。痛みは感じないが、HPが1/10くらい減った。単純に考えて後9回ほど当たれば俺がやられる。

 俺は反撃とばかりにゴブリンを殴る。……ゴブリンのHPが極僅かに減った。おそらく1/50くらいだろう。

 つまり、このまま殴り合ったら俺がやられる、というわけだ。


「無理ゲーなんだけど!?」


 思わずそう叫ぶ。するとシンから声が聞こえた。シンはもうゴブリンを倒し終えたようで、今はハムの方のゴブリンと戦っている。


「お前仮にも魔法少女だろ! 魔法使って戦え!」


 すっかり忘れてた。そう、この身は魔法少女、魔法が使えないはずが無い。

 しかしステッキ無しでも魔法は使えるのだろうか。俺の知ってる魔法少女は杖を振って魔法を使っているので、いまいち使える気がしない。

 だが、使えないと俺が耐久的に死ぬ。いざとなればシン達が助けてくれるかもしれないが、そうなったら俺は「1人じゃ雑魚ゴブリンともまともに戦えないやつ」になり、足手まといに成り下がってしまうだろう。そうなることは避けたい。

 スキル画面を開けば[TATARI]の横に[魔法少女]というタブがあった。そのタブから魔法少女のスキルを見る。この間に俺は3回ほどゴブリンに斬りかかられる。操作中くらい待ってくださいゴブリンさん。


「ええいままよ! 『クリアブレット』!」


 ゴブリンに向かって両手をつき出し、スキルを発動させる。

 すると右の手のひらから青い光が出る。光は1秒ほどその場でとどまった後、ゴブリンに向かって飛びだした。左手を出す必要は無かったようだ。

 ゴブリンはもう一度俺に斬りかかろうとしていたようで、顔面で『クリアブレッド』を受け止め、ゴブリンのHPが一気に半分以下になる。

 勝てる!そう思った俺にゴブリンは斬りかかる。本日5度目の斬りかかりだ。

 魔法という遠距離攻撃手段ができた俺には、わざわざ近付く必要などなかったので、後ろに跳んでかわす。が、失敗したのか地面に頭を打ち付ける。今のでHPが残り1割です。


「ぐおおおお」


 地面をのたうちまわりつつ、ゴブリンから離れる。痛みは無いが、驚きのあまり気が動転する。


「タタリ君、『バックステップ』のセンスが無いと、そういったことの成功率は著しく下がりまつよ」


 ハムが両手を口の横に当てて言う。どうやら向こうの戦闘は終わったようで、俺とゴブリンの戦闘を観戦しているようだ。

 シンは腹を抱えて笑っている。この野郎、昼飯食べる前にボコってやろう。


「『クリアブレット』!」


 右手をゴブリンに向け、魔法を放つ。またも俺に斬りかかろうと向かってきたゴブリンに当たり、残りのHPを削られたゴブリンは地面に倒れる。初めてのモンスターとの戦闘は、俺の勝ちで終わった。

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