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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第四章
42/50

「どうしたんだ? レギオンに加入できるくらいだし、それぐらい持ってるよな?」


 オーレは続けて、当然と言ったように言い放つ。ここでようやく、俺の思考が再稼働する。


「えっと、実は今朝初めて道具屋に寄ったばかりで、入団費くらいしか払えないんです。っていうか入団費とか、集金とか今初めて聞いて……」

「……まあいいや、とりあえず入団費を払ってくれればいいぞ。今日の集金分は明日、合わせて100000ゴールド払ってくれればいいぞ」


 ……俺、騙されてるのかな。いきなり金を求められたぞ。いや、ひょっとしたらこのゲームではこれが普通で、俺が無知なだけなのかもしれない。

 そんな事を考えつつ、オーレ相手にトレード画面を開こうとした所で、金髪で眼鏡をかけた女の人がオーレに声をかけた。


「団長、初心者にいきなり100kケーはキツイですよ。現にわたわたして固まっています。集金は慣れてから、一回転職した辺りでって言ってるじゃないですか」


 いきなり求められたのはこれまた、オーレが端折った結果みたいだった。……集金は実際に、後日あるようだが。確か、kケーはネット用語で1000、だったか。


「でもオーレは急いでレギオンレベルを上げたいんだぞ。集金できる内から集金しないと上級なんて夢のまた夢だぞ」

「しかし、低レベルの内から搾取しては育つ前に潰れますし、信用も無くなります。もっと待つべきです」

「むー。……とりあえず、今はマホージンの言う事に従っとくぞ。……新入り、転職したら1mエム払うんだぞ」

「は、はい……?」


 mエムはkの1000倍だから100万か。……現状払える気がしない。転職するまでにそれほどまでに貯めることができるのかも知れないが、さっきから端折ってばかりの人の事だ、これも端折ってるのかもしれない。できればそうであってくれ。


「1mは取りすぎです。200k辺りが妥当だと思います」

「えー。でも、それじゃいつまで経っても上級入りなんてできないぞ。それに――」


 200kってことは20万か。それでも高いと思うが、明日ジョナサンに貰った金で払えるかどうか考えよう。しかもあれはトカゲ湿地帯ひとつまえ動物の森ふたつまえで得た素材が砂の大海原こんごの収入は大きいだろうから、あくまでも目安として。

 マホージンは話しているオーレを無視して、俺に声をかけてきた。


「どうも。タタリさん、ですね。私はマホージンと言います。M・A・H・O・J・I・Nで、マホージンと読みます。団長がすみませんでした。今丁度、レギオンを拡張するために必要な元手の話をしていたんです。それであの馬鹿――いえ、団長が勝手に突っ走ってしまったゆえの事でしたので、どうかお気になさらず……」

「え、あ、はい、大丈夫です」


 ……団長以外はまともなレギオンなのだろうか。そう思って居ると、不意に後ろから足音がする。振り返ると、タタルが俺と同じくらいの背の少年を連れてこっちに歩いてきていた。


「ん? まだ行ってなかったのか」


 オーレはタタルの後ろに少年がいる事に気付くと、元気そうに左手を振って近寄って行く。……おいまさか。


「君も合格おめでとう! 転職したら200kよろしくね!」

「えっ」


 少年は俺がしたのと同じように驚いて声を出す。

 タタルは笑顔で少年に接するオーレに気付かれないように――いや、オーレが気付かないだけかもしれないが、背後に回り込み、オーレの頭を右手でゴンと叩いた。



「おいおい、オーレさんよ、一体お前は新人に何を言ってるのかなー? まさかとは思うが、タタリにも似たようなことやったんじゃないだろうな?」

「い、いや、そんなわけないぞ! タタリにも普通に接したぞ!」


 おい嘘を吐くなよ。そう言おうと前に出ようとしたが、マホージンに手で遮られ、代わりにマホージンが前に出る。


「副団長、嘘です。タタリさんには入団費として10000ゴールド、今日の集金分として50000ゴールドを要求していました」

「マ、マホージンの裏切り者!」


 嘘吐きに裏切り者呼ばわりされるとは。仮に俺が言っていたらどうなっただろうか。……追放は流石にタタルが居るし、無いよな……?

 やりそうではあるが。


「そうか。マホージン、よく教えてくれた。……おいオーレ、お前には何回言ったらわかってくれるんだ? 焦る気持ちは分からないでもないが、もう少し落ち着いて行動してくれ」

「で、でも! 早く皆をログアウトさせるためには、早くお金を集めて、早く上級レギオンにして、早く元の【ORERA】に戻して、早く、早く……!」


 オーレは言葉を詰まらせながら、早く早くと呟くばかりでいる。一体何が彼女をこうまで追いつめているのか。精神科医でも無ければ、超能力に目覚めてもいない俺には何が何であるかはさっぱりわからない。


「いいから落ち着けって。そんなに急いで行動したら成るものも成らなくなる」

「でも、でも……」


 しまいにはオーレは泣き出し、そんなオーレをマホージンは手を引いて5人ほどになった集団に連れ帰って行った。……泣きたいのはこっちなんだけどな。


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