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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第四章
40/50

――『砂の大海原』 オアシス


 『砂の大海原』はトカゲ湿地帯と同じように、アガレスから馬車で30分ほどで着く所にあるダンジョンだ。砂の大海原の入口――オアシスでは、トカゲ湿地帯や動物の森とは違い、入口にモンスターが出ない。

 いや、出ることは出るんだが、それらは全て砂の中や大きな湖の中に出る。それを引っ張り出さない限りモンスターは現れず、オアシスは初心者でも気軽に来れるスポットらしい。……馬車代は高く、歩きで来ようにも道中にゴブリン等のモンスターは出るが。

 アガレスを出て20分程走った頃、防具屋から外套を貰うのを忘れていた事に気付き、戻ろうか戻らないかで何分か迷った結果、『砂の大海原』に着いたのは試験5分前だった。


「何処だ……何処にいるんだ……?」


 そして今俺は試験官を探して辺りを見回している。早く探し当てて入団試験を受けないと、最悪遅刻で試験は無しに、とぼとぼアガレスまで帰らないといけなくなるかもしれない。

 レギオンの名前を声に出して探し出そう、そう思って息を吸い込んだと同時に怒鳴り声が聞こえてきて、驚いてむせた。



「ふっざけんなよ! ふっざけんなふざけんなふざけんな! 俺が何のためにここまで来たと思ってんだよ!」

「すみません。うちには合わなかったという事で、今回は諦めてもらうという事で……」


 怒鳴り声の発生源は湖のすぐそばだった。そこでは現在進行形で背中に大きな斧を背負った戦士風の赤髪の男と、大鎚を持った戦士風の茶髪の女が、いかにも魔術師と言ったような白髪の男に怒鳴られていた。赤髪の男は謝罪の言葉と共に頭を何度も下げている。


「俺は死にたくないからレギオンに保護してもらおうと思ってきたんだよ! それがなんだよ! 入団試験とか言っておいて、俺が低レベルだからって見下してんのか!?」

「むー。低レベルだからって見下してなんかないぞ。うちはまだ下級レギオンだから空きが無いんだぞ。だから使えない奴をレギオンに入れる余裕なんて無いだけなんだぞ」


 茶髪の女はハムと似たように、語尾が少しおかしい気がする。が、多分一種のRPロールプレイというやつだろう……俺も語尾に何か付けようかな。いや、口数を減らしてクール系を装うのもいいかな。

 白髪の男が言う保護というのは、文字通り守ってもらう事だろう。見るからに魔術師だし、きっと打たれ弱いんだと思う。


「だからって開口一番『死んでこい』ってどういうことだよ! 捨て駒扱いか? 保護してもらいに来たのに殺されるなんて詐欺だろ!」

「オーレ達はメンバーを募集しているけど、何もしない役立たずは募集してないぞ。そもそもの間違いはお前が勝手に解釈した結果で――」


 ……まあ、いきなり「死んでこい」なんて言われたらな。

 赤髪の男は怒鳴られている間も謝り続け、ついには文句を言おうとしていた茶髪の女の頭を後ろから鷲掴わしづかみして無理やり頭を下げさせた。


「本当にすみません。……おい、オーレも謝れ」

「ぐぬぬ……申し訳、ある……無い、けれど、今回は諦めて――」

「あー、cβで有名だったからって期待した俺が馬鹿だったよ! あの有名なオーレも掲示板に書いてあった通りに『鍛冶屋』になってるみてーだしよ! じゃあな! もう来ねえよ!」


 魔術師の男は茶髪の女の謝罪を途中で遮って、文句を言いながら足早に馬車の方に去って行った。そんな男の後姿を見送っていると、またしても怒鳴り声が聞こえてきた。振り返ってみると、今度は赤髪の男が茶髪の女に怒鳴っていた。あ、叩いた。


「入団希望者にいきなり死ねと言うやつがどこにいるんだよ!」

「せ、生産職の頭を叩く戦士もいないと思うぞ!」

「……もういい、オーレはマホージンのとこに行ってろ、入団試験は俺がやっとくから」

「うー……。わかったぞ……」


 そう言って茶髪の女は少し離れた所にいる集団に混ざっていった。……もしかして、これから入団試験を受けるのってあれだろうか。何だか急に入りたくなくなってきた……。



 兎にも角にも、まずは確認だ。もしかしたら俺が受けるレギオンではないかもしれない。受けるレギオンだった時は、覚悟を決めよう。


「あの、オレラの試験官ですか……?」

「いや……俺はオーレラの試験官代理だが……いや、すまん。造語だから、初心者には読み間違われるな。で、入団希望か?」


 合っていた。これに俺が「いいえ」と答えたらどうなるんだろうか。いや、わざわざここまで来たんだ。受けるしかない。これで一人で帰ったらギガント達に合わせる顔が無いと思う。


「……はい」


 肯定の返事をする。もう後戻りはできない。ここを逃したら次はいつ他のレギオンに入れるか分からないから、間違ってはいないはずだ。死ぬのは嫌だが、別の意味、露出的な意味でも覚悟を決めなければいけない我が身を呪う。

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