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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆プロローグ
4/50

 しばらくして心太郎が書き込み終わったのだろう、パソコンを手で触れて消した。俺も今度やり方教わってやってみたいな。


「じゃあ、会議を始めよう」


 ハム兄さんは肘を机に付けて、顎に下に手を重ね俯きながら言う。ハム兄さんの周りには黒いモヤが出てきて、厳しい、どこか不気味な雰囲気が醸し出されている。俺も黒いモヤ出してみたいな。


「崇」


 反対側の席に座っている心太郎が俺の名前を呼ぶ。真剣な表情に、俺はゴクリとのどを鳴らして次の言葉を待つ。心太郎は何かを感じ取ったのだろう、鼻で少し笑うと、高らかに宣言した。


「ではここに! 漆原崇をゲーム廃人に引きずり込むための会議の開会を宣言する!」

「何を宣言してるんだこの馬鹿は!」


 俺は何故か近くにあったハリセンを持って、机を乗り越えて心太郎の頭を叩いた。

 パーン、と良い音が鳴ったが、このソフトは痛覚にまで影響が出ないので問題は無い。それにしてもこのハリセン、手に馴染む。


「いやー、崇君のツッコミ冴えてるね」

「さすが私の従兄だね」


 ハム兄さんと茜はなごやかムードでそれを眺めている。未だ黒いモヤが出ているが、それを上書きするような温和な雰囲気だ。

 しかしそれと同時に、茜が名前を呼ばれていない事、仲良さげに計画について話していたことから茜も所謂ゲーム廃人だということに気付いた。一体いつからやっているのだろう、この従妹は。どうやら俺はこの3人にハメられたようだ。



「腕を上げたな、崇」


 心太郎は心太郎で何故かいい笑顔で俺を褒めてくる。なんの腕だよ。ツッコミか?ツッコミの腕か?


「嬉しくねーよ」


 そう言ってハリセンで心太郎の頭を叩いて自分の席に戻る。



「で、わざわざゲーム廃人とまで言うってことはセンスオブなんとかってそんなに面白いんですかね」

「当然だ。それとセンスオブマッドネスオンラインな」

「勿論だよー。そしてその略称はSaMoだよー」


 茜や心太郎がいちいち揚げ足を取ってくる。俺としてはニュアンスが伝わればそれでいいと思うんだが、俺も他人の揚げ足を取ったことが無いと言えるわけでもないから思うだけにしている。多分センスなんとかでも通じるんだろうな。チラリとハム兄さんの方を向いて、言葉には出さないものの本当に面白いか確認する。たまたま茜や心太郎に合っただけかもしれない。


「面白いよ!」


 すると笑顔で返される。嗚呼、3人が揃って面白いと言うのは珍しい、どんなゲームだろうか、少し期待してしまう。


「ハムにーさん、話が長くなるからこのゲームの面白さはひとまず置いておこう。崇君も早くSaMoやりたくてうずうずしてるだろうからね!」

「いや、少しは期待してるけど、茜や心太郎のレベルまで心躍ってねえよ」

「え、えー!? な、なんで!? 普通心躍るよ!」


 なんかびっくりされてる。自分の普通を他の人に押し付けるな。俺はまだゲーム廃人じゃありませんから。一般人ですから。


「まーまー、茜ちゃん、崇はまだ一般人だ。これから染め上げてやろうじゃないか」


 心太郎は心太郎でこわいことを言っている。俺は何色に染め上げられるんだよ。


「さっきから脱線してばかりだね、ごめんごめん。とりあえず、僕らは各自別々に行動するとしよう。崇君が一通りできるまではみんなで行動するけどね」

「賛成っす」

「賛成だよー」

「何が何だか分からないんですけど」


 賛成3、無効1で会議は終了した。



 10時、俺たち4人はゲームをプレイする。アカウントは既に作成済み、クライアントもインストールしていたので、すぐに始められた。後で話を聞いたんだが、実は9時55分にはプレイ可能だったらしい。


 PCプレイヤーキャラクター名はTAKASHI、TAKASI共に登録されていたので、仕方なくあだ名あるTATARUにした。後で聞いたことだが、本名で登録するのは実は危なかったらしい。TAKASHIさん、TAKASIさん、ご愁傷様です。


 容姿は自動的に読み取られ、画面には俺が映し出される。まるで鏡を見ているようだ。

 そして容姿は違和感が無い程度から半魚人のような顔にまで、好きに変えれるようだが、俺は失敗がこわいのでやめておいた。

 ただ身長を違和感が無いように少し高めにして、190cmくらいにした。俺の元の身長は187cm、3cm増である。


 次にステータスを30P割り振る。ステータスはSTRストレングスVITバイタリティTGHタフネスDEXデクステリティINTインテリジェンスMNDマインドLUKラックAGIアジリティの8種類あり、ステータスの最低値は1だ。各ステータスが何に効果があるかわからなかった俺は、とりあえずSTRに9、それ以外に3割り振った。

 これも後で聞いた話だが、これは間違った振り方らしい。最初の内はSTRに9P、VITに9P、TGHに9P、AGIに1振るのがテンプレだった。


 最後に、このゲームの目玉であるセンス選びだ。俺は迷ったが、あえてランダム選択を選ぶことにした。やっぱり5つという数が魅力的だ。確認画面で決定を押して、俺のゲームは始まった。


 俺はこの時気付くべきだったのだろう。

 俺のPC名は、TATAR"U"ではなく、TATAR"I"で決定された。初歩的なタイプミスである。

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