表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第四章
37/50

 宿屋の外に出ると、早朝だと言うのに辺りは人で賑わっていた。隣ではエレアが手で日光を遮りながら辺りを見回している。


「今日も良い朝やねー」

「……廃人ってのは、こんな朝早くから行動するもんなのか?」

「睡眠時間削って夜通しやる人も居るけど、このゲームじゃ夜は良い事無いから基本は早寝早起きやで。ただ吸血鬼とかは夜の方が出やすいから、それ狙うなら夜やな」


 吸血鬼もいるとは、本当にファンタジーな世界だな。既にリザードマンやら恐竜やら見てるから、再認識した感じになるけど。これがアカリの言っていた夜限定の敵ってやつか。


「ちなみに吸血鬼を倒せば『吸血鬼』のセンスボックスが入手できるはずやで」

「エレア、タタりんにレクチャーしたいのは分かるけど、もうすぐ別れるんだからそんなドマイナーな事教えなくてもいいじゃん」


 そうリンゴが言ったのを皮切りに、皆が俺の方を見る。少々遅れたが、別れの時が来た。


「まずは私からだね。短い間だったけど、楽しかったよ。お金の無駄遣いはほどほどにね」

「……ああ、大丈夫だ。買うような武器も防具も無いしな」


 武器や防具は修理するのにもお金がかかる。値段は素材やどれだけ損傷してるかによるらしいが、俺は『無刀流』で武器を持てないし、魔法少女服で防御も十分足りている。それに布製の外套くらいなら安く済むはずだ。


「次は私から。約束は、次に出会ってお互い暇があったらになるようだ。それじゃ、また今度」

「その時はお互いに強くなってるからはかどりそうだな」


 約束というのは、竜の洞窟に向かう前に交わしたやつだろう。実は精神的に少しきついが、まあ許容範囲内だ。次に出会う時にはどんな敵でも狩れるように『拳』を鍛える必要があるな。……肝心の堅さの方は今の所レベルを上げる他無いけど。


「ワイからは、そやなあ……困ったら相談に乗ったるで。気軽にメッセージ送ってきな」

「ああ、そうさせてもらうよ」


 なんだかんだ言って、エレアは普段はふざけているが、いざとなったら頼れる兄貴分だ。困ったら遠慮無く頼らせてもらおう。


「最後は俺だな。俺達はcβでは初心者支援レギオンだったんだ。俺達はこれから金を貯めて、cβと同じようにレギオンを作るつもりだ。それでだが、俺が思うにタタリはまだまだ初心者だ。エレアも言っていたが、困ったら頼ってくれ。……俺からはそれだけだ、頑張れよ」

「ああ、そっちも頑張ってくれ」

「勿論だ。それじゃあ、また今度会ったらよろしくな」


 そう言ってギガントは人ごみの中へ消えていった。それにリンゴ、エレア、ウィンディが続く。きっとまた俺と同じような初心者を探すのだろう。

 気持ちを切り替えて、早速防具屋に言って外套の修理と、道具屋で回復POTの購入だ。このレギオンに加入できなかったら早々にギガント達にメッセージを送る事になるかもしれないし、準備は念入りにしておかないといけない。

 


「これの修理をお願いします」


 防具屋の店主にそう言って、穴だらけの外套を渡す。昨日はリンゴに任せていたから知らなかったが、防具屋の店主はスキンヘッドであごひげを蓄えた大男だった。


「新顔か。……これはうちの外套だな。ってことはどこぞの冒険者のおさがりか。これくらいズタボロだと新調した方が良いかもしれんが、どうする?」


 実はLv38の『格闘家』なんだが、さすがにこの外見からそれを連想するのは無理があるか。


「いえ、それの修理をお願いします。一応思い出の品なんで」


 これが無ければ沼地で全裸を晒していたからな。別にこれじゃなくてもいいが、つい先ほどリンゴから金の無駄遣いを注意された身としては、使い捨てるのは気が引ける。


「思い出の品か。悪かったな、野暮な事聞いちまって。そうだな、半壊だから……3000ゴールドだ」

「はい、3000ゴールドです」


 昨日お金を使い果たしていたから、晩にエレアから10000ゴールド貰わなければ足りていなかった。しかし、先に道具屋でリザードマンの素材を換金してからの方が良かったかもしれない。


「金は修理が終わったらでいい。このくらいなら30分くらいで終わるだろうから、道具屋でも行ってくるといい。駆け出し冒険者に防具と薬は必需品だからな」


 そう言って店主は後ろにいる女の人に外套を渡す。そして続いて俺の方を見る。


「嬢ちゃん、いつまでもそこに居られると邪魔だからよ、さっさと道具屋に行ってくれ。30分後だったら夜でも明日でもいいから来てくれればいいからよ。勿論、開店時間中に限るが」

「す、すみません!」


 そういえばカウンターの前にいるんだった。追い出される前に店の外に出る。

 さて、30分後だと道具屋に少し長居するか、他で時間をつぶすか、はたまたレギオンに加入した後で寄るか……試験中に服が破けたらがまずい事になるだろうし、道具屋に少し長居することにしよう。道具屋に寄るのは初めてだし、色々楽しめるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ