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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第三章
35/50

「え?」


 声が漏れ出て、ようやく止まっていた時が動き出す。しかしその時を動かした口は開いたまま塞がらない。

 俺を、PTから、外す?なんで?どうして?まさか一緒に帰らなかったから?テルした時口が悪かったからか?外す理由は俺が気付かないものも含めればきりがないだろう。


「勘違いしないでもらいたいが、これはお前の事を思っての事だ」

「俺の……ため?」

「そうだ。タタリ、お前は強い。おそらく次のダンジョンでも問題無くやっていけるはずだ。……俺達は湿地帯でレベル上げてから、だな」


 ギガントは隣に立っているエレアやウィンディに目配せしながら話を続ける。


「じゃあ俺もみんなに合わせて――」


 立ち上がって言おうとすると、ギガントはそれを手で制する。しぶしぶ座りなおすが、俺の気はまだ晴れない。


「お前、人見知りだろ?」

「な、なんで知ってるんだよ!」

「何、カマをかけただけだ。これだけ離れたくないと駄々をこねていたからな、もしやと思って言ってみた」


 してやられたようだ。否定していればよかったんだろうけど、はっきりと否定できそうもなく、どもる自分の姿が脳裏に浮かぶ。しかも駄々をこねたと思われてる。まあ、これも間違っちゃいないんだが。


「だからだ。俺達もいつまでも一緒に狩れるわけじゃない。現にレベルに差もでき始めている」

「でも、俺、初心者だし……。まだ全然ゲームの事も分かってないし……」

「何、大丈夫だ。どんどん話しかけていけばいいさ。どこかのレギオンに参加するのもいいと思うぞ」


 レギオンに参加する、か。そういえばシンやアカリも別々のレギオンに参加してるんだったな。ハムみたいに作るのは――ダメだな。ギガントと、あとはコットンくらいしか知り合いがいない。どれくらいの人数がいれば作れるかも調べてないし、なにより金が無い。


「とりあえず、今日は休むぞ。……明日の朝、宿屋から出たらさよならだ」

「……わかった」


 短い返事をして、布団に潜る。潜らなくてもいいのは知っているが、今は潜りたい気分だ。すぐに気持ち良くなってくるが、気が晴れない。



 時計を見る。午後7時か。布団から出ると、丁度エレアが部屋に入ってきた所だった。


「ああ、丁度良く布団から抜け出しとったんか。せっかく剥ぎ取ろ思て内心楽しみにしてたのに。まあええわ、晩飯やから下行くで」


 そういえば晩飯の事忘れてたな。別に食べなくても能力が下がるだけだが、その時どういう事になるのかわからないから食べれるときは食べておくことにしよう。……それに、明日からはギガント達とも別れて、また一人に戻るんだから。

 ベッドから出て、エレアに続くようにして部屋を出る。


「エレア、幾つか質問していいか?」

「ん? 最後やし色々頼ってくれてええで。なんなら抱き着いてくれても」

「いや、それは遠慮しておくよ。ところで、回避系のセンスって買った方がいいと思うか?」


 買わなくていいならそれに越したことはない。死に戻りしたからか、金も思ったより集まってないし。


「ええと思うで。タタりんの場合やと、武器も盾も持てへんから『ガード』や『受け流し』取っても効果薄いやろし。それやったら『バックステップ』取った方がええで」

「ん? 『ダッシュ』はダメなのか?」

「何言ってんのん、『ダッシュ』は移動系やで。……もしかして、転んだん?」

「うっ」


 予想外の返答に声が詰まる。それをエレアは肯定と捉えたらしい。間違っては無いんだけどさ。


「ひょっとしたらタタりん、全動作の成功率が10%減るって言う隠しセンス、『ドジ』のセンスとかついてるんちゃう?」

「そんなのがあるのか!?」

「いや、噂や。物欲センサーとかそんなん。聞いたことくらいあるやろ」


 物欲センサーといえば欲しいものを察知して中々出ないようにするっていうやつか。自動販売機にたまについてるルーレットとか、当たったためしがない。


「他に買った方がいいセンスとかあるか?」

「そやなあ……オープンβからセンス20個までしか取れんくなったからなあ」

「制限あるのか!?」

「いやまあ、cβみたいに無制限やったら能力上昇系と属性攻撃・抵抗系全部取ればそれなりやったからな。それと、一度取得したセンスは外せへんから、よく考えて選ばなあかんで。多分やけど、コレで金取る予定やったんやと思うで。センス数アップとか、センス外しとか」


 いつまでも無料で開放しておくわけにもいかないだろうから仕方ないかもしれないが、この制限は正直キツいと思う。エレアが知ってるんだから公式ページかどこか見れば分かるんだろうけど。こんなことなら少しくらい公式ページ見とけばよかった――って、朝は時間無かったんだっけ。


「さてさて、お姫様ー、食堂に着きましたでー」

「お姫様じゃねえよ」


 王子様――とも言い難いけど。しいて言うなら……平民?



「おお、やっと来たか」

「タタりん遅いよー!」


 食堂では既にギガント達が食事を始めていた。空いてる席には俺とエレアの分の料理が置かれている。まだほかほかと湯気を出しているから、さっき運ばれたばかりだろう。


「遅れてごめん。結構沈でてさ……」

「大丈夫大丈夫! タタりんならすぐに他の人とも仲良くできるよ! それに強いし、ひょっとしたら引っ張りだこかも知れないよ!」


 引っ張りだこ……ではないと思う。パン屋の前で地雷って広まっただろうし、席について料理を食べる。今日もパンとスープとサラダだ。どれも俺が作ったハンバーガーと比べるまでも無く格段に美味しい。それにしてもサラダに負ける俺のハンバーガーってどうなんだろう……。


 食事を終えると、真っ先に部屋に戻るって布団に潜る。風呂は昼に入ったからと断った。

 これから、明日の朝までは掲示板で情報収集だ。集める情報は3つ。『砂の大海原』の情報と、レギオンのメンバー募集があるかどうか、最後に、今掲示板でどんな風に言われてるか、だ。

 特にレギオンの事は非常に気になる。今の俺は恐竜には惨敗だったが、リザードソルジャーは一発で倒せるほどに強くなっているんだ。

 もしかしたらリンゴの言う通り引っ張りだこになったり、レギオンのエースやホープになったりして……。そんな事を考え、少しわくわくしながら掲示板を開く。

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