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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第三章
32/50

――『竜の洞窟』 入口


 洞窟に入って少し進むと、ひらけた空間に出た。『竜の洞窟』、竜と名の付くだけあって、そこには確かに竜が居た。と言っても――西洋のドラゴンのように翼の生えたようなものでもなく、中国の龍のように四肢の生えた空飛ぶ蛇といった存在でもなく、大昔に居たとされる、所謂恐竜と呼ばれる竜が、だが。……なんだか少し騙された気分になる。

 視界の隅に身を隠せるほどの大きさの岩があったので、足音をたてないように移動して岩陰からこっそりと恐竜の様子を覗き見る。大小様々な恐竜が見えるが、入口の方では小型の恐竜が多いみたいだ。遠くに見える恐竜も近くにいる恐竜と同じ大きさに見える。


 実際の恐竜の鳴き声は聞いたことは無いが、近くにいる恐竜の声はドラムを叩いたような鳴き声だった。遠くからはかすかに笛を吹いてるような音が聞こえるが、その方向に見えるのは恐竜だ。他にはエレキギターを響かせたような音や、鈴を鳴らしているような音も聞こえる。……恐竜の鳴き声に楽器を当ててるのか?


 いつまでも岩陰に隠れていたら、ここに来た目的を果たせそうもないので、勇気を出して近くにいた恐竜目がけて昼食の時に料理したらできた失敗作を投げつける。

 失敗作が体に当たった恐竜は、首を上に伸ばしてキョロキョロと辺りを探した仕草を見せたかと思えば、今度はトントンッと何かを叩いたような鳴き声を上げ始めた。するとどこからともなく、同じような見た目の恐竜が集まり、5匹ほどの集団になって同じように首を伸ばして辺りを探し始める。……これ、もしかしなくともやばい展開だよな。急いで岩陰から出て洞窟を出ようとした時、


 ザリッ


 っと足音をたててしまう。おそるおそる振り向くと、恐竜達がこっちを見ていた。先手必勝とばかりに地面に落ちている小石を恐竜の集団に投げ、逃げるが勝ちと言わんばかりに出口に向かってダッシュ――しようとしたら転んだ。頭の中ではハムとウィンディが「『ダッシュ』のセンスが無いとそういった行動の成功率は大きく下がる」とか言っている。上半身の魔法少女服は弾け飛んでいる。後ろからは恐竜が迫っている。やばい。色んな意味で。



 起き上がって自分に『ヒール』をかけ、転ばないように今度は歩いて出口を目指すが、歩いていれば当然追い付かれる。足止めのために『衝撃』を迫ってくる恐竜にぶつけるが、恐竜は怯んだ様子も見せず、勢いを緩めずに追ってくる。足を止めて後ろを振り返る。


「こうなったら……やってやるよ!『剛拳』!」


 先頭の恐竜が走る勢いそのままに体当たりを仕掛けてきたが、それを横にかわして頭に『強打』をぶち込む。が、何十体ものトカゲを屠ったその拳は、恐竜相手にはあっさりと弾かれる事となった。


「え……?」


 一瞬呆けるが、よく考えたら当然だ。恐竜とは言え竜に違いは無い。その鱗はトカゲとは比べ物にならないほど堅い。……リザードソルジャー相手に楽勝していたことで慢心していた。目の前にいる恐竜は、リザードソルジャーとは蟻と象並に違う存在だと思い知らされた。


「おいおい、無理ゲーすぎるだろ……」


 『剛拳』で強化した拳が弾かれる。ということは残った攻撃手段は『クリアブレット』による魔法攻撃だが、零距離でもないと発射から命中にタイムラグがある。それに魔法は効くかどうかわからない。なんせ相手は実際に居たとしても竜だ。古代の神秘とかで魔法に対する抵抗力があっても不思議じゃない。


「せい!」


 恐竜の噛みつき攻撃をしゃがんで避けて、顎と体に一発ずつ『強打』をぶち込む。が、どちらも手応えが無く、恐竜は平然とまた噛みついてきた。だがこの距離なら攻撃も勢いがつかないのでなんとか避けられる。

 その噛みつきを股下をくぐるように避けて、背中に『強打』をぶち込む。すると、今度は効いたようで、恐竜が叫び声を上げて怯む。


「やった!」


 これがギガント達がグリフォン相手に感じたという手応えラッキークリティカルってやつだろうか。思わず恐竜が怯んだ事にガッツポーズして歓声を上げる。しかし、喜んだ直後、視界の隅から別の恐竜が俺に向かって体当たりしてきた。世界がスローモーションになった気がして、避けようとするが動けない。どう動いても当たる気がする。……これも当然だ。恐竜は俺が相手に1体だけじゃなく――あと4体もいるのだから。


「ぐ……」


 恐竜の体当たりで入口のすぐ近くまで飛ばされる。……怯んだ結果に喜ばず、集中を切らさないでいれば避けれていたかもしれなかったな。十全にあったHPはその一撃で1割にも満たないほどに減らされ、服も下着も全部はじけ飛んでいる。痛みも強く、頭を叩かれたくらいに痛い。しかし入口の方に飛ばされたのは不幸中の幸いだ。HPはかろうじて残っているから、急いで自分に『ヒール』をかければなんとか洞窟から出れるだろう。そう考えていると――


「があああ!?」


 突然、痛みが体中を駆け巡り、その痛みに耐えきれず、地面に倒れ込む。



 俺の頭は混乱していた。なぜこんなにも強い痛みが?今までの攻撃はせいぜい頬をつねられるとか、皮膚を軽く引っ掻いたぐらいの痛みだったはずだ。そしてどうして今頃になって?恐竜の体当たりの分の痛みは感じたはずだ。まさか服が痛みをためこんでいて、破けた事でためこんでいた痛みが俺に流れ込んできたのか?

 それにしてもこんな痛みは今まで味わったことが無い。タンスの角に小指をぶつける。みぞおちにボディーブローを食らう。股間をバットでホームラン。俺の人生ベストスリーを一気に味わってもまだ足りないと思える、まさしく想像を絶する痛みだ。


「ひ……ひ……る」


 回復して状況を立て直そうとするも、痛みで声を出すのも辛い。『ヒール』は魔法だから、頭で思い浮かべただけじゃなく、スキル名を声に出さないと使えない。腕も痛みからだろうか、動かなくて道具袋から回復POTも取り出せない。


「ひ……『ヒール』」


 無理やりにでも声をひねりだして回復したが、できたのはHPの3割。痛みも治まり、上下の下着がなんとか再生したが、動転した気は治まらない。今の俺の脳内はたった3文字の言葉で埋め尽くされている。「やばい」。外套で体を巻き、両腕を使って匍匐前進のように急いで洞窟しようとした所で俺の頭に影ができる。


「あ」


 顔を上げて見れば、いつの間にか目の前に恐竜が回り込んでいた。その恐竜は口で俺の頭を持ち上げると、そのまま頭から俺を丸のみした。

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