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防具屋まで後数mという所で、ギガント達が談笑しながら防具屋から出てきた。パッと見だだけでも装備は朝と違い、黒い外套を身に纏っている。外套の隙間からは、ギガントとリンゴは肌がほとんど露出しない重鎧を着ていて、騎士のような兜を被っている。エレアとウィンディは木製の肩当てと胸当てをつけていて、白い羽根の付いた帽子を被っている。
「遅れてごめん」
「おう、タタりんか。早かったな」
「いや、遅かったんじゃないか?みんな、新しい防具を装備してるように見えるんだけど」
「いやいや、早かったぞ。武器屋を見る前に来たんだからな」
「そうそう、ワイらは先に装備整えて、タタりんに装備の説明とかしたかってん。まあええわ、武器はギガントとワイに任せて、リンゴとウィンディはタタりんの防具見繕っといてな」
そう言ってギガントとエレアは防具屋の隣の武器屋に入っていった。
俺はウィンディとリンゴに連れられ防具屋に入る。
◆
店内にはところ狭しと防具が並んでいた。近くにあった鎧を見る。見た目的にも重そうな鉄の鎧だ。名札を見ると鋼鉄の重鎧と書かれていた。ああ、これがシンの言ってた砕くのにVIT3000必要な鋼鉄か。値札を見ると千五百万と書かれていた。無理。買えん。
「さて、防具を買う前にチュートリアルといこう。まず、防具は頭、首、背中、上半身上、上半身下、右肩、左肩、右腕、左腕、右手、左手、右指、左指、下半身上、下半身下、腰、膝、靴の18種類ある。頭に装備できるのは今リンゴが被っているような兜や、帽子がある。首にはネックレスやお守り。背中には外套や背嚢だな」
「そんなにあるのか……。ところで、背嚢って何だ?」
「背嚢というのは、まあリュックサックだな。背負うことで道具袋をより広く使う事ができる。不思議に思うかもしれないが、リュックサックに入れた物を道具袋から取り出すこともできる。まあゲームだからと割り切ってほしい。他にも、武器を背負ったりもできる。当然、背嚢は壊れると道具が落ちてしまうし、武器は鞘が壊れたら落ちる」
ウィンディは普段の無口さでは考えられないほどに饒舌になって、俺に説明してくれる。昨日は後ろから抱き着かれたり、胸を揉まれたりと色々されたが、実はただ面倒見がいい性格というだけなのかもしれない。
「さて、チュートリアルを続けよう。上半身や下半身の上下だが、上には鎧か服、下には服しか装備できない。服の重ね着、服だけ、鎧だけ、服と鎧の組み合わせ、何も装備しないの5つだな。ところでタタり
ん、その服はどういった装備なんだ?見た所上半身、下半身共に服だけのようだが。装備画面を開いて確認してみてくれ」
「わかった」
言われるままにメニュー画面を開き、装備画面を開く。ログアウトできなくなる前は直接装備画面を開くこともできたが、今はできるかどうか試してない。
装備画面を見ると、色んな部位に魔法少女服と書かれていた。これって一つ一つ違う物なんだな。
「上半身と下半身の下、それと両肩、両腕、両手、膝、靴が魔法少女服みたいだな。あとセット効果で……防御力+VIT×0.5って書いてあるな」
「ほう、VITを防御力にか。それはすごいな、ついでに防御力についても説明しておこう。防御力とは、まあ早い話、相手の攻撃力からダメージを減らすものだ。基本的には堅さの1/10が防御力として計算される。しかし人間の堅さは皮と同等、VIT100でようやく防御力1上がるというものだ。したがって、防御力は最初から堅さがある程度ある装備で上げるのが基本だ。だからVITの半分が防御力に加算されるというのは、非常に強い。次は個別に見てくれ、防具の堅さや重さが見れるはずだ」
開いている装備画面から上半身下の魔法少女服の名前を指で触れる。すると、魔法少女服と書かれたアイテム画面が出てくる。画面には装備の見た目、重さ、耐久、堅さ、防御力、特殊効果、コメント(多分生産職のコメントを書く欄だろう)が書かれてある。他の魔法少女服も同じようにしてアイテム画面を開いていく。
「……全部重さ0、耐久0、堅さ0、防御力0だ」
「一部の装備にはそういった事もあるだろうな。次は特殊効果だ。」
ウィンディは動じることなく淡々と説明を続ける。こういった事は本当にあるんだろう。それにしても、セット効果を除けば装備してないのと変わらないステータスってことは、完全にセット効果目的で装備するものなんだろうな。
「えっと、この装備は壊れない。この装備は盗まれない。この装備は呪われない。……それと、現在HP量に応じて……服が、破損する」
「……レア度が高い装備にそういった特殊効果が付いてるのは良くある事だ。最後のは置いておくとして、一つ一つ説明しよう」
さすがのウィンディもこれには動じたようで、苦笑いになる。服が破損するって、どこの青年向けアニメだよ。