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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第二章
22/50

「じゃあ、ワイらは行ってくるな。タタりんも遅れんよう早めに出ときや」

「ああ、そうするよ」


 エレア達は情報を集めるため、宿屋を出ていく。俺は待ち合わせ時刻の6時まで宿屋でのんびり寝る。とは言え、気持ちのいい布団に入りながら公式掲示板を見れば時間なんてあっと言う間わけだが。

 早速布団に潜り、俺の拳がトカゲ共に通用するかもどうか調べるために『トカゲ湿地帯の攻略情報まとめ板』を見る。ログアウトできなくなって以来、公式掲示板は最初の方は荒れこそすれ、今ではほとんどのプレイヤーが攻略情報を書き込み、早く帰れるよう努力している。

 トカゲ湿地帯の平均的な堅さは25、湿地帯奥地でも同じくらいだ。……俺の拳の堅さっていくらくらいだっけ。このままトカゲ湿地帯で戦うことができるか確認するためにもステータスを見る。無刀流と魔法少女(それと軽装備)のおかげで相変わらずの(PT募集板で確認する限りでは)異常なステータスだ。


 しかし、それでもVITは165。俺の拳の堅さはそのの1/10で16.5。トカゲ湿地帯の平均堅さには切り上げても届かないくらいやわらかい。これを補うためにも、防具屋では防御力ではなく、VITが上がる装備を買う予定だ。……85以上、VITを上げなければならないが。

 それか、魔法を使ったり『投擲』で物を投げたりしてもいいかもしれない。しかし、今の俺だと50kgくらいの物を投げてようやくダメージが通るくらいかもしれない。50kgで身近な物と言えば鎧ぐらいだが、鎧は高いし使い捨てできるようなものでもない。

 湿地帯までの道で適当な敵に小石を数百発ぶつければレベルも3とか4とかになるかもしれない。虎一体倒しただけで『拳』の方は4になったからな。STRが高いだけあって、レベルが2上がるだけでも威力、射程、切れ味、命中率は3倍だ。



「っと、もうこんな時間か」


 時刻は5時50分。いまから出れば少し早いぐらいにパン屋に着くはずだ。

 持っていく荷物も無い(道具袋に入っているから持ち歩く必要が無い)し、武器も無い(というか『無刀流』で持てない)からこのまま部屋を出るだけでいい。なんか悲しくなってきた。

 廊下へ出るとフレダさんと鉢合わせした。


「ああ、もう出るのかい」

「はい。お世話になりました」

「ああ、気を付けて行っておいで」


 フレダさんは笑顔で宿屋の外まで見送ってくれた。子供扱いされた気がしないでもない。

 辺りを見ればまだ武器屋や道具屋は開いていないようだ。酒場や宿屋は開いている。マップを見れば町のどこにパン屋があるかわかるので、マップを見ながらパン屋へ向かって歩き出す。朝だからか人の通りは少ないし丁度良かった。……いや、俺が遅いだけかな?ギガント達も4時に出る予定だったらしいし。



 宿屋からパン屋までは意外と近く、中央広場を通ってすぐの所にパン屋はあった。現在時刻は5時59分。あと1分で開店と言った所だ。

 店の前には人だかりができていて、今か今かと開店を待っているようだ。そして人だかりの一人が俺の姿を見て驚いた。


「パン屋の幻影少女が出たぞー!」


 その声に人だかりの誰もが反応して俺を見て、そして驚く。ああ、そういえば幻覚扱いされてたっけ。いつの間にか幻影になっている。幻影って……かっこいいな。『幻影のタタリ』とかどうだろう。是非流行らせたい。


「き、君は昨日の『格闘家』でステ振り間違った少女じゃないか!」


 人だかりの中から青髪で緑のローブを着た男が出てきた。そういえば昨日、パン屋で色々言われたな。大声で『格闘家』、ステ振り間違えたとかあまり言わないでほしいと思う。小声で「地雷……?」とか聞こえてきた。


「地雷少女だと!?」


 地雷少女ってなんだよ。……間違ってないけど。と思っても声に出さない。と言うかあがり症だから大勢の人に囲まれたら自然と声が小さくなる俺には声を出しても出さなくても変わらないと思う。


「そういえば君、名前はなんて言うんだい?ああ、PC名で、本名は言わなくていいよ」

「え、えと……TATARIです」

「……声が小さくてよく聞き取れないな。すまないがもう少し大きな声で言ってくれないか。……君たちも少し静かにしてくれ!」


 青髪の男がそう呼びかけると、辺りは静まりかえる。実は結構有名人だったりするのかな。そういえば俺もこいつの名前知らないな。


「TATARI、です。T・A・T・A・R・I、でタタリ……と読みます」

「タタリちゃんか。……タタリ?」

「は、はい?」


 青髪の男は顎に手を当て考え込む。……どこかおかしい所でもあったかな?

 そういえばオープンβからは日本語の名前でもいいんだよな。俺はそれを聞かなかったからcβに参加していたシン達と同じように、ローマ字でTATARIだ。登録できたからTATARIって人はcβにはいないはずだ。それで考え込んでいるんだろうか……。


「……男?」

「はい」


 今は魔法少女だが、これでも元は男だ。しかし何故性別を聞いてきたんだろう。そう考えていたら人だかりの中から「男の娘ですね、わかります」と聞こえてきた。男の娘――男だが、見た目は女の子にしか見えない容姿の者を指す言葉、のはず。今は体は少女、心は男だから性同一性障害の方が言葉の意味としては合ってるはずだ。……これ訂正しなかったら結構大変な事になるんじゃないか?そう――


「……ガチムチ魔法少女タタリ?」

 

 こんな感じで。

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