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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆プロローグ
2/50

 7月20日。夏休み初日である。

 目を覚ましたら目の前にすっごい笑顔の心太郎の顔があった。

 このまま顔を上げたら大変なおとこどうしできすをする事になるので払いのけて起き上がる。


「おーっす、祟る、いやー、良いゲーム日和だな!」

「ゲーム日和ってなんだよ……」

「今日は午前中晴れ、午後から雨だ!雨じゃあ家でゲームするっきゃないもんな!」

「ああ、そう、テンション高いな、朝から」


 心太郎は何故か朝早くから俺の部屋にいる。時刻は午前6時。目が覚めたら目の前には心太郎の顔という最悪の朝だ。

 心太郎が女の子だったら俺も小説とかの主人公なのにな、現実は甘くない。


「よし、じゃあ行こう、さあ行こう、行こう」

「少しは待てよ……サービス開始何時だよ……」

「朝10時だ! あと4時間しかないんだぞ!」

「あと4時間もあるんじゃねーか……」


 さすがに4時間はかなり早い時間だ。夏休みの初日なんだからせめてもう2時間ほど寝かせてほしい。


「お、これまだやってんのか」


 部屋の隅に置いてあるカードゲームに心太郎が気付く。

 今回と同じようにロクに説明もされず、やれと言われてやったものだ。しかし今でもたまにやるので、準備しやすいように置いてある。

 最後にやったのは、先週の土曜日に近くのゲームショップで行われた大会だったか。惜しくも準優勝だったが、十分楽しめた。

 心太郎は手に取り、懐かしそうに眺める。


「説明書も渡さずにやらせたのに、一か月で俺より強くなるとか笑えなかったな」

「心太郎は6連勝した辺りでカードばらまくからな」

「今回も何の説明もせずにやらせてボコボコにしてやろうか?」

「それはもう勘弁願いたいね。家にどれだけ説明書の無いゲームがたまってることやら」

「こっちは逆に説明書がたまってるぜ」


 今日まで心太郎に貰ったゲーム達は今も説明書無しに押入れの中に眠っている。とはいえ、どれも近くで大会があれば取り出してやりに行く程度には続けている。

 心太郎の家にはさぞかし大量の使い道の無い説明書がたまってることだろう。説明書の本棚とかあったら笑えるな。


「それはそうと、行くなら飯食ってからな」

「俺もこっちで食うわ。何も食ってきてないんだ」

「お前の分があったらな」


 まあ、居るからにはあるんだろうが。



 あくびをしながら心太郎とリビングに行き、一緒に姉の漆原うるしばら あんずが作った朝食を食べる。予想通り、心太郎の分も作ってあった。

 後から起きてきた親が「崇が朝早くから起きるなんて槍でも降るんじゃないか」と茶化してきた。


「崇君どこかいくのー?」


 従妹の篠原しのはら あかねがパジャマ姿でリビングに現れる。

 姉と同じ黒髪ロングなのにどうしてこうも可愛く見えるのか。おそらくは身長140cmくらいだからだろう。心太郎よりもさらに低い。杏姉さんは190cmあるとかないとか。

 こんなナリで中三である。小学生に間違われそうだと思うが、実際中学生はこんなもんだと言う。

 

「ところてんおはよー」

「おう、茜ちゃんおはよう」


 ニコリと笑って心太郎は茜に挨拶する。


「おい心太、醤油取ってくれ」

「俺を心太と言っていいのは茜ちゃんだけだゴルァ!」


 そう言っても取ってくれる心太郎は良い奴だと思う。しかし「心太」が茜専用ねえ……。


「……姉さん」


 ニヤリと笑って姉を見る。姉も笑顔で返す。俺の思いは通じたようだ。


「心太、塩を寄こせ」

「ハイッ!」


 元気良く塩を取る心太郎。それにニヤニヤと笑いながら問いかける。


「あれあれ? 茜だけじゃなかったのかな?」

「……女性限定だ」


 俺と姉さんは勝ってもいないのに勝ち誇った笑いを浮かべて食事を続ける。

 食事を食べ終わったので、歯を磨いてから部屋に戻りカバンを取りに行く。用意は夜の内に済ましてある。後はこれを担いで行くだけだ。

 窓の外を見ると、茜と心太郎が手を振って待っていた。


「って茜!? お前もやるのか!?」


 窓から顔を出しながら、近所迷惑にならないように声を抑えて言う。


「あったぼうよー」


 従妹から返ってきたのは肯定の返事。……頭が痛い。これから行くのは男の家だし、他の面子も男だ。まあ幼馴染だし、信頼しているのかもしれないが。


「実は先に茜ちゃんを誘ったんだが、祟るも一緒じゃないと嫌だと言うんでな」

「俺が後かよ、最初から茜目当てですかこのヤロー」

「安心しろ! 俺は祟るも誘っただろ!」

「というか崇君がいないとこの計画成り立ちませんし」

「茜ちゃん、シーッ!」


 計画って何の事だろう。どうせ聞いても教えてくれないんだろうし、さっさとハム兄さん家に行こう。そんなことを思いながら、3人でハム兄さん家への道を歩く。


 この時は、まだ、あんな事になるだなんて思ってもいなかった。

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